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白い折り紙は人気がない。
やまほど折り紙が入っていた段ボールの箱には、もうほとんど残っておらず端が折れたり、皺が寄ったみず簿らしい白い紙が何枚か残っていた。

「ねえ、前原君。折り紙で鶴作れる?」

佐々木優翔(ささきゆうと)は段ボールから数枚、白い折り紙を捨てられた子猫を拾い上げるような気持ちで手に掴むと昨日転校してきたばかりの前原真生(まえはらまお)に声をかけた。

「うん、作れるよ」

休み時間、活発なクラスメイトは校庭に出てボール遊びに夢中になる。
教室に残るのは読書が好きな子、眠い子、ぼんやりとしたい子だ。

転校してきたばかりの真生は慣れない環境に戸惑っている様子だった。表情がかたい。机の上に腕を出してぎゅっと握りこぶしを作っている。
目の前に折り紙を置くと少しだけ拳のちからがゆるんだ。
その様子を見て優翔は内心ほっとした。
彼がもし、折り紙が苦手だった場合、飛行機を作って飛ばす作戦を考えていたが、優翔は折り紙が苦手で上手く作れる自信がなかった。

「ラッキー!実は僕のおばあちゃんが入院しちゃってさ。千羽鶴作りたいんだけど、鶴ってどう折るか忘れちゃって。一回、折り方見れば思い出すと思うんだよね。見せてくれると助かる」

優翔のつとめて明るい声で早口にならないように気をつけて事情を打ち明けた。

「そうなんだ。分かった。折り鶴作るよ。早くおばあちゃん退院するといいね。」


鶴のくちばしが綺麗に折れている。怜悧な牙のようにするどくて、優翔は見惚れた。
真生は大柄で優翔より背が高くて顔がだいたい出来上がっている、実年齢よりも老けて見える小学生男子だった。
一方、優翔は女の子に時々間違われる、性別が定まっていない天使のような美しい男の子だ。透明でまっしろな肌をしている。
目に虫が飛び込んできたのがトラウマで度が入っていないだて眼鏡をかけている。眼鏡効果でクールな印象を与えるが口を開いて話すと笑みがこぼれるので、優翔は人懐っこい子供として周囲から認識されていた。
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