36 / 67
35 ジュラン⑦
しおりを挟む
***
「よう、サイル!最近、ルイの姿を見てねぇがお前知ってるか?」
見知らぬ男達から時間をそう置かずに何度も声を掛けられる。
今度は誰だよ、と振り替えると武器を所持しどう見ても一般的な生活を送っている者ではない。
ユイがルイと名乗っていた時の知り合いだろう、と俺は判断して適当に声をかけられても流していた。
「……さぁね、喧嘩別れしてそれっきりさ」
素っ気ない声で俺は答えた。変に興味を持たれると厄介だ。こちらが必要とする情報は既にある。
協力者はいらない。
俺はこの辺を好き勝手に荒らしている我蛇一味を根絶やしにする為、ランジュに成り代わっている。
そいつらが生きている限り、ユイの悪夢は現実のままだ。脅威は抹殺しないといけない。俺とランジュにとってもその一味は不快な影であり、それがこの世に存在している限り安心出来ない。ユイのあじを知る男がいることを許せない。憎い、嫉妬で胸が苦しくなる。
今頃はランジュは俺になっているが、今日は剣の稽古がある。その為、朝から仮病を使い床に伏している。部屋に籠って散々ユイを可愛がっていることだろう。
早く終わせて城に帰る、と心のなかで強く誓った。
「つめてぇやつだな。ルイは家族が欲しい寂しい奴なのによ」
さっさと目的地に向かおうとするが、男が吐き捨てた台詞が引っ掛かった。
こいつは確かジャンと言ったか、ルイに先輩風を吹かせていた男だ。
ランジュが事前にこの街で接触した人間の名前と特徴を話してくれてるし、朧気に分かった。
「……家族が欲しい?家庭的なやつだとは見えなかったけど」
「あー、家族つーか、兄弟?溺れているお前を助けただろ。今度は弟を助けられたって喜んでたし……あいつの父親は子供に暴力を振るうクソ野郎で、兄弟達も母親が死んでから荒れて仲が悪かったらしい。溺れ死んだ弟とは仲が良かったって話をしてたからよ、…その弟の名前貰ったんだから、ルイと仲良くしてやれ」
兄弟、…そうか、と少し納得した。ぽやぽや状態であるが簡単に思い込ませられたと思ったが、ユイが仲が良い兄弟を望んでいたとしたら容易く受け入れてしまうだろう。
「分かったよ。見掛けたら仲直りする」
「そうしてやれ」
俺の言葉を聞くとジャンは満足そうな笑みを浮かべると肩をぽん、と叩いて通り過ぎて行った。
この街を改めて見回す。魔物を避けの機能を所々に張り巡らされており、ギルドが構えている。ここに身を隠すのは賢明……いや、ユイはここしか安全な場所を思い付かなかったのだろう。
「よう、サイル!最近、ルイの姿を見てねぇがお前知ってるか?」
見知らぬ男達から時間をそう置かずに何度も声を掛けられる。
今度は誰だよ、と振り替えると武器を所持しどう見ても一般的な生活を送っている者ではない。
ユイがルイと名乗っていた時の知り合いだろう、と俺は判断して適当に声をかけられても流していた。
「……さぁね、喧嘩別れしてそれっきりさ」
素っ気ない声で俺は答えた。変に興味を持たれると厄介だ。こちらが必要とする情報は既にある。
協力者はいらない。
俺はこの辺を好き勝手に荒らしている我蛇一味を根絶やしにする為、ランジュに成り代わっている。
そいつらが生きている限り、ユイの悪夢は現実のままだ。脅威は抹殺しないといけない。俺とランジュにとってもその一味は不快な影であり、それがこの世に存在している限り安心出来ない。ユイのあじを知る男がいることを許せない。憎い、嫉妬で胸が苦しくなる。
今頃はランジュは俺になっているが、今日は剣の稽古がある。その為、朝から仮病を使い床に伏している。部屋に籠って散々ユイを可愛がっていることだろう。
早く終わせて城に帰る、と心のなかで強く誓った。
「つめてぇやつだな。ルイは家族が欲しい寂しい奴なのによ」
さっさと目的地に向かおうとするが、男が吐き捨てた台詞が引っ掛かった。
こいつは確かジャンと言ったか、ルイに先輩風を吹かせていた男だ。
ランジュが事前にこの街で接触した人間の名前と特徴を話してくれてるし、朧気に分かった。
「……家族が欲しい?家庭的なやつだとは見えなかったけど」
「あー、家族つーか、兄弟?溺れているお前を助けただろ。今度は弟を助けられたって喜んでたし……あいつの父親は子供に暴力を振るうクソ野郎で、兄弟達も母親が死んでから荒れて仲が悪かったらしい。溺れ死んだ弟とは仲が良かったって話をしてたからよ、…その弟の名前貰ったんだから、ルイと仲良くしてやれ」
兄弟、…そうか、と少し納得した。ぽやぽや状態であるが簡単に思い込ませられたと思ったが、ユイが仲が良い兄弟を望んでいたとしたら容易く受け入れてしまうだろう。
「分かったよ。見掛けたら仲直りする」
「そうしてやれ」
俺の言葉を聞くとジャンは満足そうな笑みを浮かべると肩をぽん、と叩いて通り過ぎて行った。
この街を改めて見回す。魔物を避けの機能を所々に張り巡らされており、ギルドが構えている。ここに身を隠すのは賢明……いや、ユイはここしか安全な場所を思い付かなかったのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる