3人play。

遊虎りん

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47 悪夢⑨

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「……なんで、瑠威は男の姿をしている?」

ユイは今まで我蛇が女だというまで、瑠威を男だと思っていた。服装も言葉使いも男の物を使っていたからだ。
その意味とはなんだろう、と気になった。
男も女も同じ人間である。なのにユイが生まれ育った村は女は男の下に置かれていた。
死んだら埋葬されずに魔物の餌にされる。
外の世界は、女も笑ってはいるが何処と無く男が優位である。

「俺は玩具にされていない今の俺を守るため。女であることを、忘れたいからだ」

瑠威の瞳は暗い。口数が少なく一人でひっそりと息を潜めている。気配を消していた。
しかし、狩りの後は男達が瑠威の細い肩を抱いて何処かへ消えていた。

「……玩具」

ユイは眉を潜めた。嫌だ、とそれは生理的に嫌悪する。玩具の意味を知らないが反射的に拒絶した。

「……逃げた方がいい。ここは居心地が良い場所ではない。女は喰われるだけだ」

不吉な言葉を残すと瑠威は立ち上り部屋を出ていった。胸の中に黒い靄がたまって苦しくなる。嫌な予感がする。
村から出て魔物に喰われずに済んだ、と安堵したが結局自分は女だからという理由で喰われるのかと怖くなる。
ユイは布団へと潜り込んだ。自分を抱いて目を閉ざした。

(我蛇は、私を喰ったりしない…父より兄より、ずっと私に寄り添ってくれた。玩具になんかしない、大丈夫……)

一度芽生えた不安は拭っても拭っても消えなかった。我蛇を信じたかった。
初潮をむかえユイの胸は膨らみ始めた。
幼く性別が曖昧な未熟な身体が花開く。乙女へと成長する。それはユイにとって嬉しいことではなかった。

**

いつもなら、狩りの後は先に寝ていろと部屋に一人きりにされる。魔物相手の戦いの後、高ぶった男達は獰猛な獣のようで一緒に居るのが怖かった。だから、一人にされると安心した。

「……ユイ、来い」

我蛇に呼ばれ強引に抱き寄せられる。太い頑丈な腕を腰に回された。手強い魔物との激闘の末、殺した後でいまだに興奮状態だ。いつもと雰囲気が違う。ユイは身の危険を感じた。

「いやだ!」

ユイを見下ろす我蛇の目が怖い。初めて見る顔をしている。咄嗟に手を振り払って我蛇から逃げようとするが後ろから使気がユイをとらえる。
身動きが取れない。

大丈夫。我蛇は、私をもの扱いしない。喰ったりしない…乱暴だけど頭を撫でてくれるし、可愛がってくれている。

大丈夫…大丈夫、…我蛇は私を玩具にしない。

緊張で鼓動が早くなる。嫌な予感を何度も振り払おうとする。

しかし、我蛇はユイを女、としてみていた。

「ユイは俺の雌穴だ。すべてを差し出して俺の渇きを癒せ」

首筋を強く吸われた。そして、噛まれる。痛みに顔を歪めた。使気に足を大きく開かれ、下肢が露になる。股間に我蛇が顔を埋めて舐めた。
恐怖でユイの顔が歪む。

押さえつけられ無理矢理奪われる。

まだ少女から脱していない、淡く恋へと少しずつ育まれていた我蛇への想いが我蛇によって残酷に踏みにじられた。

裏切られた、それが辛い。
慰み物にされるのが、惨めで初めて自分を哀れだとユイは涙を流して泣いた。

これは悪夢だ、現実ではない。記憶を書き換えよう。すべて、つらいことすべてを。


ユイ、逃げることは悪いことじゃない。

僕が…僕達が君の流した涙をすべてなめてあげる。

だから、もう一度会おう。今度は僕達の名前を呼んでよ。……愛しい、…君を待っている。

ユイは悪夢から目覚めた。意識が浮上する直前に男の子の声が聞こえたような気がする。
けれど、その声もおぼろ気になり、泡のように消えてしまった。

この世界の何処かで誰かが自分を待ってくれている、という安心感だけがユイの心に残ったのだった。
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