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中学編。
きっかけ 3
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「……湊ちゃん、どうしたの大丈夫?…寝不足っぽいけど目の下に隈出来てるし」
湊斗先生に理解できなかった解き方を分かりやすく教えて貰った通りに数学の数式を解く。あーそっか、へぇと一々相槌を打ちながら説明をきく。解き方を理解するとハリスはお喋りな口を閉ざして机に向かう。問題を解く間は静かだ。
漸くただ一つしかない答えを導いてハリスは美しい湖のような蒼い瞳を新しい嬉しい事を発見した無邪気な子供のようにキラキラと輝かす。
頭を悩ませ苦労して出した答えが、湊斗の導き出した数字と同じか知りたくて、何度か湊斗を呼ぶが返事がない。
頬杖をついてぼんやりとハリスを見つめる湊斗の視線に気がついた。
遅蒔きながら俺の完璧に整った美しい顔に見惚れてるのかしらん、とハリスは期待するがどうやらそうではないらしい。
湊斗の口元が歪んでいる。
それの表情はどう見ても惚れ惚れとハリスの美しさに心を奪われている人間の表情ではなかった。
舌を出し涎を垂らしながら尻尾を追いかける駄犬を『ははは、馬鹿だなぁ』と笑いながら見る飼い主のような、
(最初が駄目だった。やな奴の登場の出方だし。かんとくー、もう1回やり直させて)
思い出すと恥ずかしい。やり直せるなら、格好よく登場するのに。ヘアメイクとか、台詞も。
やり直しが出来なのが人生ってやつ、だと有名な人が言ってたような。本当にそうだ。
小学生を卒業して中学生になって約1ヶ月くらいで急成長している。
主に内面が、湊斗のお陰で自分が卑怯な嫌な奴だと、気付くことが出来て少しマシになれたと思う。
そのうち、体の方も前から数えた方が早いちんまりとした背もにょきにょきと育ち、軽く180㎝は越えるであろう。父方も母方の血筋も高身長な巨人族だ。
(……俺の唯一絶対の武器通用しないのって、湊斗だけなんだよな。こいつを振り向かせるの難しい…けど、いつか)
机の下でハリスは拳を作りぎゅっと握り締める。
心の中で5月に入ってから何度目かの『俺に全然興味ない湊斗を振り向かせる』決意を改めてすると取り合えず気が済んだ。それよりも、湊斗の目の下に隈が出来ているのが気になる。正しくは湊斗の目元に隈が以前からあるのに気が付いてはいたが話題に出すことはしなかった。
何となく心の深い部分にまだ触れることを躊躇われたからだ。
「大丈夫。昨日、ちょっと夜更ししちゃったから…本が面白くて」
ぼんやりとした瞳が、ハリスを認識する。湊斗と目が合った瞬間胸がどきん、と大きく脈打つ。動揺は表に出てないはずだ、たぶん。顔が赤くなっていない事を神に願う。今は役に入り込んでいないから、何にも感じていない演技なんて出来ない。
(……っ、やばい。目があっただけでどきん、とか。やっぱり俺…湊斗に惚れちゃたんだ)
やっぱり、が最近口癖のようになっている。
湊斗と接する度に自分が面白いほどに反応する。
同性のクラスメイトに恋しちゃったんだと確信する。そのピンク色の恋脳を今はまだ本人がいる前で活発化させるつもりはなかった。
(まだ、何も準備できてない)
獲物を撃ち取れない狩りには出掛けない主義だ。
人を警戒する野性のバンビのような湊斗をゆっくりと時間をかけて手で餌付けして安心させてから愛の銃弾で甘く脳と身体を痺れさせ『好きかも』と気持ちを傾かせてから仕留める。
信頼関係とか云々を築いて時間をかけて告白する。
まだ、13才。先は長いし、焦って迫ってどん引きされ湊斗がこちらを見向きもしなくなったら終わりだ。本当だ!初恋って実らないもんなんだね、なんていくらハリスでも笑えない。
ハリスの周りでは同性同士の恋愛は珍しくない。
しかし、それはハリスの周りだけの話で、世の中は同性愛を受け入れているとは言いがたい。
愛があれば問題ないさ!と同性同士だとそうシンプルに物事がすすまない。
まだ、出会ったばかり。湊斗と友達になる事がハリスの第1の『今やること』だ。
「本って、いつも読んでるメルヘン的な本?」
何となく湊斗の鞄に視線を向ける。黒い学生鞄にはカバーの装飾が手厚い本が入っているのを知っているからだ。
「うん。何度読んでも面白い。名作」
「同じやつ読んでて飽きないの?」
「僕は飽きる、って事はあまりないから。気に入ったらそれ一つあればいい。同じ題材の、モチーフにした作品とか確かに興味がある。だけど、僕が求めているものがあるとは限らないし、結末が知っている話を何度も楽しんだ方が安心するから」
「へえ、…ちなみに湊ちゃんは童話のなかで好きなのってなに?」
可愛いね、の言葉をごくんと一回飲み込んだ。それは同性に言われても異性に言われても、嬉しくない言葉だ。
からかっている、馬鹿にしている、自分を下に見ている等。誤解される可能性がある。慎重に言うタインミングをうかがわなくては。
「シンデレラかな。虐められっ子に夢と希望を与える。姉達ザマァ要素もあっていい気味になるし。王子に見初められ、お姫様になるって憧れる。身分違いの恋は物語の王道で……」
湊斗はまだシンデレラについて語りたそうだったが授業開始のベルが鳴り中断する。残念ながら湊斗とハリスの席は離れていた。少しの間借りている。ありがとう、とお礼を言ってハリスは自分の席に戻った。
(お姫様……俺の湊斗姫)
何処か影がある湊斗。最初のアプローチは大失敗だったが、話しかけるきっかけを探していたのはあった。入学式の時の挨拶をしている姿が、とても凛々しく目を奪われていた。
(絶対、湊斗の王子様になってやる)
窓の方に視線を向ける湊斗の横顔を遠くの席から見つめる。顎の線が細く、黒く短い長さで形がよい貝のような白い耳が見える。
睫毛は長く上向き、二重で切れ長で涼しげな目元。和風美人な分類だ。
ちらりと入学式の時、湊斗の父親を見たことがある。湊斗の父親も相当な美人さんで腰の線が細く背は170㎝を少し越す程度だった。湊斗も成長してもそのくらいだろう。
「……湊ちゃん、どうしたの大丈夫?…寝不足っぽいけど目の下に隈出来てるし」
湊斗先生に理解できなかった解き方を分かりやすく教えて貰った通りに数学の数式を解く。あーそっか、へぇと一々相槌を打ちながら説明をきく。解き方を理解するとハリスはお喋りな口を閉ざして机に向かう。問題を解く間は静かだ。
漸くただ一つしかない答えを導いてハリスは美しい湖のような蒼い瞳を新しい嬉しい事を発見した無邪気な子供のようにキラキラと輝かす。
頭を悩ませ苦労して出した答えが、湊斗の導き出した数字と同じか知りたくて、何度か湊斗を呼ぶが返事がない。
頬杖をついてぼんやりとハリスを見つめる湊斗の視線に気がついた。
遅蒔きながら俺の完璧に整った美しい顔に見惚れてるのかしらん、とハリスは期待するがどうやらそうではないらしい。
湊斗の口元が歪んでいる。
それの表情はどう見ても惚れ惚れとハリスの美しさに心を奪われている人間の表情ではなかった。
舌を出し涎を垂らしながら尻尾を追いかける駄犬を『ははは、馬鹿だなぁ』と笑いながら見る飼い主のような、
(最初が駄目だった。やな奴の登場の出方だし。かんとくー、もう1回やり直させて)
思い出すと恥ずかしい。やり直せるなら、格好よく登場するのに。ヘアメイクとか、台詞も。
やり直しが出来なのが人生ってやつ、だと有名な人が言ってたような。本当にそうだ。
小学生を卒業して中学生になって約1ヶ月くらいで急成長している。
主に内面が、湊斗のお陰で自分が卑怯な嫌な奴だと、気付くことが出来て少しマシになれたと思う。
そのうち、体の方も前から数えた方が早いちんまりとした背もにょきにょきと育ち、軽く180㎝は越えるであろう。父方も母方の血筋も高身長な巨人族だ。
(……俺の唯一絶対の武器通用しないのって、湊斗だけなんだよな。こいつを振り向かせるの難しい…けど、いつか)
机の下でハリスは拳を作りぎゅっと握り締める。
心の中で5月に入ってから何度目かの『俺に全然興味ない湊斗を振り向かせる』決意を改めてすると取り合えず気が済んだ。それよりも、湊斗の目の下に隈が出来ているのが気になる。正しくは湊斗の目元に隈が以前からあるのに気が付いてはいたが話題に出すことはしなかった。
何となく心の深い部分にまだ触れることを躊躇われたからだ。
「大丈夫。昨日、ちょっと夜更ししちゃったから…本が面白くて」
ぼんやりとした瞳が、ハリスを認識する。湊斗と目が合った瞬間胸がどきん、と大きく脈打つ。動揺は表に出てないはずだ、たぶん。顔が赤くなっていない事を神に願う。今は役に入り込んでいないから、何にも感じていない演技なんて出来ない。
(……っ、やばい。目があっただけでどきん、とか。やっぱり俺…湊斗に惚れちゃたんだ)
やっぱり、が最近口癖のようになっている。
湊斗と接する度に自分が面白いほどに反応する。
同性のクラスメイトに恋しちゃったんだと確信する。そのピンク色の恋脳を今はまだ本人がいる前で活発化させるつもりはなかった。
(まだ、何も準備できてない)
獲物を撃ち取れない狩りには出掛けない主義だ。
人を警戒する野性のバンビのような湊斗をゆっくりと時間をかけて手で餌付けして安心させてから愛の銃弾で甘く脳と身体を痺れさせ『好きかも』と気持ちを傾かせてから仕留める。
信頼関係とか云々を築いて時間をかけて告白する。
まだ、13才。先は長いし、焦って迫ってどん引きされ湊斗がこちらを見向きもしなくなったら終わりだ。本当だ!初恋って実らないもんなんだね、なんていくらハリスでも笑えない。
ハリスの周りでは同性同士の恋愛は珍しくない。
しかし、それはハリスの周りだけの話で、世の中は同性愛を受け入れているとは言いがたい。
愛があれば問題ないさ!と同性同士だとそうシンプルに物事がすすまない。
まだ、出会ったばかり。湊斗と友達になる事がハリスの第1の『今やること』だ。
「本って、いつも読んでるメルヘン的な本?」
何となく湊斗の鞄に視線を向ける。黒い学生鞄にはカバーの装飾が手厚い本が入っているのを知っているからだ。
「うん。何度読んでも面白い。名作」
「同じやつ読んでて飽きないの?」
「僕は飽きる、って事はあまりないから。気に入ったらそれ一つあればいい。同じ題材の、モチーフにした作品とか確かに興味がある。だけど、僕が求めているものがあるとは限らないし、結末が知っている話を何度も楽しんだ方が安心するから」
「へえ、…ちなみに湊ちゃんは童話のなかで好きなのってなに?」
可愛いね、の言葉をごくんと一回飲み込んだ。それは同性に言われても異性に言われても、嬉しくない言葉だ。
からかっている、馬鹿にしている、自分を下に見ている等。誤解される可能性がある。慎重に言うタインミングをうかがわなくては。
「シンデレラかな。虐められっ子に夢と希望を与える。姉達ザマァ要素もあっていい気味になるし。王子に見初められ、お姫様になるって憧れる。身分違いの恋は物語の王道で……」
湊斗はまだシンデレラについて語りたそうだったが授業開始のベルが鳴り中断する。残念ながら湊斗とハリスの席は離れていた。少しの間借りている。ありがとう、とお礼を言ってハリスは自分の席に戻った。
(お姫様……俺の湊斗姫)
何処か影がある湊斗。最初のアプローチは大失敗だったが、話しかけるきっかけを探していたのはあった。入学式の時の挨拶をしている姿が、とても凛々しく目を奪われていた。
(絶対、湊斗の王子様になってやる)
窓の方に視線を向ける湊斗の横顔を遠くの席から見つめる。顎の線が細く、黒く短い長さで形がよい貝のような白い耳が見える。
睫毛は長く上向き、二重で切れ長で涼しげな目元。和風美人な分類だ。
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