生まれ変わっても、魂は安らげない。

黒木蓮

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第一章

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バイトの時間が終わる。夏輝は普段着は細身のダメージジーンズとTシャツというラフな服を好む。カッコつけたい年頃で色々小物や髪型にこだわってしまう。
帰宅の準備をして挨拶をすると職員駐車場に停めた車に乗る。誕生日に父親から買って貰った黒いスポーツカーで何度か遊びに行った千紗の家へと向かった。

(火曜日は午後のバイトは入れていないよな。家にいるはず)

すると、玄関に先客がいた。インターホンを押して反応を待っている。少し小太りであるがひとの良さそうな年輩の女性である。見覚えがある顔だが思い出せない。

「こんばんは、えーと。俺は千紗の彼氏ってやつですが、あなたはどちら様でしょーか?」

「ああ、何度か見たことある!夏輝君ね!わたしは千紗ちゃんと同じ職場なの。今日、出勤だったのに来なくて。なんの連絡もしないまま休むなんて今までしたことがないのに、家で倒れてないか心配してね、みんな。私が様子を見に来たのよ」

(千紗はおばちゃんに人気だなぁ)

夏輝はのんびりとそんな感想を持つ。
千紗は誰とでも同じような調子で話すが、母親世代と接するときは、礼儀を踏まえつつも人懐っこい印象をもった。
娘を持つ母心を擽るマダムキラー千紗。

夏輝は、体を触れながら男に媚びて鼻声で甘えてくる女の子は苦手だ。だが、千紗は異性に対してはうす塩対応で何故か時折、体育会系の軽いノリで話すので新鮮な感じがして面白かった。

(いやいや、故人を偲ぶ感想みたい、面白い、だろ)

夏輝は自分の心の声に苦笑する。

インターホンを鳴らしても反応がない。
合鍵をポケットから出した。
カチャッと音が鳴りドアノブを掴んで玄関のドアを開けた。靴を脱ぐと部屋の中に向かう。

「千紗、いる?」

部屋の中に聞こえるように大きな声を上げる。
ひんやりとした冷気と共に胸がスーッとする匂いがした。それは、はっかの飴を連想させる。
千紗はよくはっかの飴を舐めている。
だから、夏輝は部屋の匂いについては特に違和感を感じないがこの肌寒さは何だろうか、と自身の腕を抱いて小さく身震いした。

部屋は暗い。先程まで一緒に居たおばちゃんの声がしない。帰ってしまったのか、それとも部屋まで上がるのを躊躇い外で待っているのか。

くしゃ、と足で何かを踏んだ。床を見ると見たことがない白い花びらが散りばめられている。その花からはっかの飴に似た香りがした。

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