生まれ変わっても、魂は安らげない。

黒木蓮

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第一章

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視界を明るくするため壁にあるスイッチを手で探ると電気をつける。ぱっ、と一瞬で辺りが光のもとに晒されて部屋の中の状態が分かった。

千紗が床に倒れていた。色を失い魂が抜けているような、ぞっとする白い顔だ。慌てて夏輝は千紗のもとに駆け寄った。いくら能天気な夏輝でも緊急事態だと察した。
千紗の命が危ない。
今にもこの世から消えそうになっている。

「千紗、おいっ、しっかりしろよ!」

千紗を抱き起こして身体を揺さぶる。空気が緊迫して夏輝は焦っていた。混乱して冷静な思考力がないが、千紗の意識を呼び戻さないと、と何度も大きく声を掛けた。

「父上……落ち着いてください、まだ、母上は命の灯火を消してはおりません」

丁寧な落ち着いた若い男の声が聞こえた。一度抱き起こした千紗を床に寝かせる。
背後に感じる気配に千紗に悪さしたストーカか!と拳を握り締めて立ち上りその声の主を殴ってやろう、とした。
目の前にいるのは腰まで届く程の長さがある真っ白な髪をした青年だった。神秘的で不思議な色気を滲ませた涼しげな美貌を纏っている。
青年の物怖じない視線を受けると拳の勢いが削がれた。

「つか、父上って!俺は千紗に子供を孕ませた事実はまだない。お前みたいな大きな子供がいるわけないだろ」

自分より身長が高い息子など認めない、と夏輝は牙を剥いて子犬のように威嚇する。そんな様子を見て青年はゆっくりとその場に座り背筋を真っ直ぐにして正座をする。

「…私は貴方の何千回前の世の息子なのです。貴方は気が遠くなる程の前は、大蛇の妖怪の長でした」

「そ、そんなことがあるわけないだろ。妖怪とか見たことないし、前世とか…」

突然の事に目を丸くする。そして、力が抜けてその場に座り込んだ。目の前の青年を見ても正直懐かしさとか愛しさを感じない。

「貴方が見ようと思えば見えます。人間に生まれ変わっても魂は妖怪のまま…妖怪を見ることなど貴方にとって容易いことです」

「…見たくない。俺の前世とかどーでもいい!千紗、千紗…おい、千紗!返事しろよ」

頭の中が混乱する。しかし、今一番大事なのは千紗の無事を確かめることだ。再び千紗を抱き寄せて頬を軽く叩いて意識を呼び戻そうとする。
夏輝の声は必死だ。恋人との突然の別れの予感に怯える。怖くて堪らない。

「無駄です。今のままでは、母上の命は助かりません。己の罪を償うために死に向かうでしょう」
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