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第一章
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しおりを挟む「……死が償い、とか…千紗はそんな罪を作るような奴じゃない。絶対何かの間違いだ!」
平和な国で呑気に暮らしている夏輝に取って青年、寿就(じゅじゅ)が話す内容はとても信じられない。本当は怖いおとぎ話のようだ。
ぎり、と奥歯を噛み締めて低く吠える。
「もし万が一、千紗が罪人だっていうなら、俺なんか大悪党だ…何があったんだよ。お前、知っているんだろ?」
まだ千紗は19才だ。若くて美しい少女のまま時が永久に止まり、死ぬなんて哀れで悲しい。
千紗と一緒にゆっくりと時間をかけて年を取って、命の年輪を刻んだしわくちゃな手を繋いで、仲良く散歩したり縁側でお茶を啜りたい。
きっと千紗はおばあちゃんになっても可愛いだろう。
小さくていつも笑ってて町内のおばちゃんアイドルになるだろう、きっと。
簡単に想像できる。楽しい未来を想像だけで終わらせたくない。
ぽたり、と千紗の頬に滴が落ちる。
夏輝は顔を歪ませ泣いていた。
自分では泣いていることに気づいてはいない。
「……私が話すのを聞くより、実際に見た方が今の父上は納得出来るでしょう」
つう、と細く長い指で顎を持ち上げられる。顔が近づいて額が重なる。不思議な熱が帯びて一気に眠くなる。夏輝の体から力が抜けた。意識を過去へと飛ばしたのだ。
寿就はまだ幼さを残す面差しの目を閉ざす二人を見つめた。
「父上、貴方の帰りをお待ちしております。それから、…それからどうするか決めましょう」
意識を失っている夏輝に向かって手をついて深々と頭を下げた。顔を上げ憂いを帯びた表情を浮かべる。そして、儚い存在になりつつある千紗の頭を膝に乗せる。さらり、と寿就は千紗の髪を撫でて額に唇を押し当て目を閉ざした。命を繋ぎ止める霊力を注いだ。
漸く蛇神へと登り詰めることが出来た、母の願い通り立派になれたのだ。
(……でも、母上。私は幸せにはなれていません。貴方の死を見守っていました、ずっと)
千紗の体から霊力がつたい、床に散りばめた白い花がほんのりと青白く光る。
透き通った甘い香りが漂う。
寿就は千紗の頬を慈しむように優しく撫でた。
まだ、息がある千紗に触れたのは久しぶりである。
母親だった頃の面差しは残っていない。全くの別人で血の繋がりは感じない。だが、魂の形は昔と今も変わっていない。
とても、悲しく寂しい色を滲ませて弱々しく発光している。
寿就は胸が痛んだ。
そして、夏輝に視線を向けた。
すーすー、と規則正しく胸を上下に動かしている。
夢という形で過去を思い出すはずた。
寿就は夏輝が目を覚ますまで静かに見守っている。
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