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第一章
1 白蛇の一族
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「ねぇ、霧蛇(むじゃ)様。きいておりますの?」
上品な柔らかく伸びやかな若い娘の声が聞こえた。
最初のうちは膜の中から聞いているようなぼんやりとしていたが、途中から明瞭な声色になった。
霧蛇は眉間に皺を寄せて煩そうな顔をして声の主である、女に視線を向けた。
絹糸のような艶のある白い髪、少々気の強そうな顔立ちの女は霧蛇の母であり三久(みく)という。
もう千年以上生きているが若々しい外見をしていた。まだ、小娘に見える。
三久は頬杖をついて、一生懸命に話している自分に視線すら寄越せず何を考えているか分からない息子に非難の眼差しを向けた。
いつものことだが腹が立つ、と三久が怒っているのが視線の強さで分かった。
露骨な迷惑そうな顔をしていたが、そんな母親の様子を見てくすり、と笑みを洩らした。
「珍しい者が見えましたので、そちらに気を取られていました」
「……珍しいものとはなんですの?」
「人間のまだ幼さを残す雄、です」
霧蛇は口元を歪める。的確に目で捉えている。
夏輝はどきり、とした。ふわふわと二人を見下ろしている状態だ。霧蛇が視線で夏輝を追っているのに気付いて焦る。
(俺がいるって、バレてる?)
今、夏輝は自分が魂だけの存在なのか、何なのか分からない。
未だに信じられないが、息子であるという青年の言葉が正しいならこれは過去にあった事実だ。
それなのに、自分の存在に気づいている霧蛇はマンガやアニメに出てくるボス的な何かのようだと夏輝は思う。そんな、呑気な感想を持つ自分は、脇役でも愛嬌を持っていると応援してくれるファンが出来そうだ、とやはり呑気に思っていた。
「まあ、穢らわしい!あの下品な種族根絶やしになればよろしいのに」
三久は人間、と聞いて目を見開いて嫌悪感を露にした。妖怪が人間よりも上。人間は動物と同じ家畜。いや、妖怪の中でも由緒ある家の血筋がよい白蛇の一族である三久にとっては人間は家畜よりも価値がない。
「…根絶やしとは、恐ろしい事を口にしてはいけません。呪いの言葉はいつか己の身に跳ね返ってきますよ、三久」
白蛇族でも大蛇に身を転じる事が出来るのは、霧蛇が唯一の存在でどの蛇の妖怪よりも尊い。母親に様付けされ、霧蛇が親を呼び捨てにするのはこの一族では当たり前である。
「霧蛇様は人間ひいきですものね。あのまじり者を気に入っていらっしゃいますし」
上品な柔らかく伸びやかな若い娘の声が聞こえた。
最初のうちは膜の中から聞いているようなぼんやりとしていたが、途中から明瞭な声色になった。
霧蛇は眉間に皺を寄せて煩そうな顔をして声の主である、女に視線を向けた。
絹糸のような艶のある白い髪、少々気の強そうな顔立ちの女は霧蛇の母であり三久(みく)という。
もう千年以上生きているが若々しい外見をしていた。まだ、小娘に見える。
三久は頬杖をついて、一生懸命に話している自分に視線すら寄越せず何を考えているか分からない息子に非難の眼差しを向けた。
いつものことだが腹が立つ、と三久が怒っているのが視線の強さで分かった。
露骨な迷惑そうな顔をしていたが、そんな母親の様子を見てくすり、と笑みを洩らした。
「珍しい者が見えましたので、そちらに気を取られていました」
「……珍しいものとはなんですの?」
「人間のまだ幼さを残す雄、です」
霧蛇は口元を歪める。的確に目で捉えている。
夏輝はどきり、とした。ふわふわと二人を見下ろしている状態だ。霧蛇が視線で夏輝を追っているのに気付いて焦る。
(俺がいるって、バレてる?)
今、夏輝は自分が魂だけの存在なのか、何なのか分からない。
未だに信じられないが、息子であるという青年の言葉が正しいならこれは過去にあった事実だ。
それなのに、自分の存在に気づいている霧蛇はマンガやアニメに出てくるボス的な何かのようだと夏輝は思う。そんな、呑気な感想を持つ自分は、脇役でも愛嬌を持っていると応援してくれるファンが出来そうだ、とやはり呑気に思っていた。
「まあ、穢らわしい!あの下品な種族根絶やしになればよろしいのに」
三久は人間、と聞いて目を見開いて嫌悪感を露にした。妖怪が人間よりも上。人間は動物と同じ家畜。いや、妖怪の中でも由緒ある家の血筋がよい白蛇の一族である三久にとっては人間は家畜よりも価値がない。
「…根絶やしとは、恐ろしい事を口にしてはいけません。呪いの言葉はいつか己の身に跳ね返ってきますよ、三久」
白蛇族でも大蛇に身を転じる事が出来るのは、霧蛇が唯一の存在でどの蛇の妖怪よりも尊い。母親に様付けされ、霧蛇が親を呼び捨てにするのはこの一族では当たり前である。
「霧蛇様は人間ひいきですものね。あのまじり者を気に入っていらっしゃいますし」
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