悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

文字の大きさ
300 / 314
第四章 悪役令嬢は王女と共に戦場を駆ける

301.悪役令嬢は舌鼓を打つ

しおりを挟む
「これは――マジヤバ!」

 と、ウィンディが素というか、ちょっとあり得ないほどツインテールをピコピコさせながらそう言ったわけだけど、流石に貴族令嬢だということは忘れないで欲しいところ。まぁ、周囲の誰も彼女が病弱設定で学園も休みがちだったのは冒険者として魔導洞窟ダンジョンへ潜っていることも知っているから苦笑くらいで済んでいる。

「えっと、ウィンディ様。マジヤバとはどういう意味なのでしょう?」

 結構、真面目なジェニーは不思議そうに彼女に聞いた瞬間、私に助けを求めるような視線を送るのはやめなさい。マジで。

「本当に凄い――的な意味合いだと思っておけばいいわ。ハッキリ言って、貴族令嬢が使うような言葉では無い――と、いうのは言うまでも無く、ウィンディも理解しているでしょ。まぁ、ウィンディの貴族令嬢としての矜持さえどこかに吹き飛ばしてしまうくらいの味だというのは皆も理解したわよね。エルーサとウィラも、そろそろ解体の方は切り上げなさい。ほら、このあたりの肉も美味しく焼けたわ」

 私はそう言いながら、何故か持っていたBBQセットを使って網焼きにしている焼けた薄切り肉を小皿に取り分けていく。そう、私は今、絶賛焼肉将軍だ。

「エステリア嬢。確かにこの肉は凄まじく旨いが、私としては君に肉を焼かせ続けていることが気がかりなのだが、やはり、私が変わりに――」
「いいえ、この肉は私が責任もって皆に振る舞うのです。たとえ閣下と言えど口出し無用にお願いします」
「しかし――」
「クーベルト辺境伯様。お嬢様のこういう時は誰も止めれぬのです。唯一止める事が出来るとすれば、奥様――ハーブスト公爵夫人くらいでしょう。皆もそれを分かっているので、苦笑はすれど、素直にお嬢様がなさる様を受け入れているのです。かくいう私も気持ちは同じですからね」

 と、傍に戻ってきたエルーサはそう言いながら席に着き、私が肉を取り分けた小皿を受け取り、塩を振ってから箸を使って肉を口に運び、驚きの表情を浮かべる。

「これは驚きですね。我らがハーブストの食肉産業も驚くほどの出来と言わざるを得ません」
「そうね。しかも、現状はこの魔導洞窟ダンジョンでしか食べれないのよね。恐ろしいわ賢人サルバトーレ」

 私の言葉に皆がそう頷きながら、私が焼き配った肉を口に運ぶのであった。うん、やっぱりこのクオリティは異常としか言えない――と、いうか生物的にはどうみても豚なのにその肉の味は牛って、いったいどうやって魔物なんか作ったのかしら。そもそも、魔導洞窟ダンジョンで生み出される魔物というモノが外の世界に存在する魔物や魔獣とは別の存在だと言わんばかりの事実に私は賢人サルバトーレの魔法技術というモノが少し恐ろしく思ったりもするのであった。

 と、いうかA5ランクの牛肉を再現したいと思うあたり、その味を知っているってことよね。うーん、彼の思考というか、人物像が凄くちぐはぐな気がしてならないけど――ま、情報が無さすぎるし、考えても仕方ないところよね。ある程度、考え方や性格が見えてくると彼の考える魔法術式というモノがもっと理解出来るのだけど、正直、難しそうだわ。

「エステリア様、本当に焼いてばかりで大丈夫でしょうか?」
「全くもって問題無いわよ。それに私だって、焼きながらちょくちょく食べているから、思っているより食べ過ぎているくらいよ。まぁ、そろそろ皆も食べるのは控えた方が良いかもしれないわね」

 そう、この手の油は後からズンとくることがあるし――と、思ったけれど日本人とは違うし、大丈夫なのかもしれない。その辺りは考えたことが無かったけど、どうなのかしらね。

「――確かに油分が多いことを考えると、後々体調を崩しかねないな。しかし、これほどの味だと食べ過ぎてしまうのも仕方ない気もするよ」
「まさか、そういう罠では無いですよねお嬢様?」
「流石にそんなわけないでしょ。それに賢人サルバトーレもこの味の肉が食べたくて、この魔導洞窟ダンジョンを作ったのだから」
「しかし、不思議なモノだな。この肉、若干だが魔力が回復するような効果があるようだ」

 と、閣下は肉を頬張りつつそう言った。特に魔法を使って焼いているわけじゃ無いのに魔力に影響を与える肉というのは少し考えどころね。

「そう考えると、むやみに食べるのも止めた方がいいかもしれませんね。もう少し、キチンと効能などを調べたいところですが――」
「エステリア様。この肉って空間収納アイテムボックスに入れて持ち出せない?」

 ウィンディがそう言うと皆の視線が私に集まる。まぁ、そう言われても私だって分からない――実験するしかないわね。

「とりあえず、時間的な余裕はないけれど、色々と実験するしかないわね」

 と、私はニコリと微笑むと何故か皆が微妙な顔をするのであった。なんとも失礼な――まったく。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!

くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました! イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。 あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!? 長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!? 二人共あの小説のキャラクターじゃん! そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!! へっぽこじゃん!?! しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!? 悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!! とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。 ※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。 それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください! ※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい ※不定期更新なります! 現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

処理中です...