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第一章 悪役令嬢は動き出す

44.悪役令嬢はトンデモ兵器を開発する

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 ここ数日は平和なモノでアリエルも大人しくしているようで、私の研究が加速度的に進んだ。

 銃に関しては設計図を作って、ダリルに指示を出した。因みに術式は記載していないので、私の手元に来てからの実験になる。理論構築だけは以前から実は考えていたのだ。

 銃の設計自体は単純なモノでトリガーを引けば銃弾のリム部分をハンマーがノックして弾を射出する。弾丸は鉛玉でも実包でも無く専用の被覆鋼弾フルメタルジャケットだ。

 カートリッジ式に弾倉など細い仕組みは分かっていないけれど、機能として必要な部分は魔術回路と特殊な素材で補った。通常の火薬を使った弾丸でも使用出来るとは思うけど、私が目指すのは火薬を使わない弾丸を予定している。

 ハンマーの先端には回路を繋ぐため、魔力伝導率の高い銀魔鉱を使い、トリガーを引くことで銃内部の回路が通り、機能として銃弾を射出するわけだけど、最も重要なのは弾丸の方だ。

 弾丸の雷管部分は爆発術式等を組み込んだモノにして、魔力が通った瞬間に薬莢内に小さな爆発が起き弾丸が射出される仕組みだ。でも、弾丸の真の力は別にある。弾芯には鉛と極小の魔石を銅などの金属で覆ったモノを使用する。

 コスト的に魔石のランクで値段と使用可能な術式が出るとは思うけど、戦況や状況に応じて弾丸の種類、使用する魔術を変えれる。

 先に術式を刻印しておいた魔石を使った弾丸を配備させることで、魔力がある程度は少なくても魔術を使えるように出来れば、魔法や魔術、魔力に自信のある者はより活躍出来ると思うんだよね。

 貴族や王族にとって魔力があり、魔法や魔術が使えるというのは非常に大事で平民達が銃によってその既得権を脅かす可能性があるというのは承知しているし、私自身み既得権側の人間だ。

 しかし、我が家がこの銃を持つことで当然リスクはあるけど、メリットも大きい。普通の銃の価値を下げ、国や他領に恩を売ることも可能だし、何より我が領の軍が強い事に意味が出てくる。

 色々と矛盾は抱えているけれど、楽しい研究開発なので後悔はたぶん――するかもしれないけど自重はしない。

 あと、研究といえば、先日お母様から多層術式の研究資料を見せて貰ったんだけど、お母様マジで凄いわ。

 多重術式と多重術式を繋いでさらに一つの術式へ昇華させる事で、今まであった複雑な術式をさらに複雑化しつつ、魔力量抑えつつ詠唱速度を速める事も出来る。多層術式を使う事で魔法でしかなしえなかったような、大魔術も作れる――と、いうか既に資料にはヤバイ術式が記載されている。

 ただ、これ書き写して使えるようになる為には術式全部いちどは書いて覚えないといけないのは結構ヤバそう。

 魔法を覚える為には基礎となる魔法陣を記憶した上で魔法を使う事で脳内にインプットされ、繰り返すことで瞬時に発動する事が出来るようになる。ただ、理論的な部分よりイメージが優先されるので、細かな魔法陣を覚えなくても同じように効果を発現させることが出来る。

 この辺りはとってもセンスが重要になってくるし、保有魔力量の多さが決め手になったりするのがネックだ。

 魔術を覚える方法は基本は魔法と同じで術式構築された魔法陣を書いて覚える。因みに魔法だとある程度合っていれば発動出来るけど、魔術の場合は魔法陣にミスがあれば発動しない。なので反復的に魔法陣を書いて覚える。もう一つ方法があるんだけど、これは結構な方法なので推奨しないけど、脳内に直接魔法陣を書き込むという方法。しかも、これは一人では出来ず、高度な技量が必要とされる方法だけど、心無い人間は自身の子供に魔術を覚えさせるのに脳内に書き込むという危険な方法で覚えさせる者のいるらしい。

 お母様にも出来るか聞いたところ、絶対にやらないけど、やれば出来る。と、断言していた。ちなみに脳内に書き込む魔術式があるらしいけど、どこの国でも禁呪として禁止されている。

 下手すると障害が出たり、廃人になってしまう可能性もあるので、まぁ、やらない方がいいでしょ。

 なお、今回お母様が資料に載せていた魔術は魔術では実現不可能と言われていた超高温爆破魔術フレアバーストという最上級難度の大規模魔法を術式化して、尚且つ超超超高速詠唱術式トリプルハイスピードスペルが組み込まれたモノだ。

 しかも、詳細に術式分解と多層術式の解説まで記載されている。と、いうかお母様。これは世に出してはいけないような気がしなくもないんだけど……と、思いつつもちゃんと真面目に覚えますよ。
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