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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る
199.悪役令嬢の母親の弟子は魔法技術大会で活躍する その2
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ディラン様が出て行ってからほんの数秒の話だけれど、私は完全に固まっていた。キュリアが心配するように声を掛けて来て私はハッとして、急いで控室から出る。
と、とりあえず落ち着かないと――焦りながら廊下を進み、出場者用の入出場口から外に出ると日差しの眩しさに目を細める。そして、観客の歓声が聞こえその大きさに驚きを覚えるけれど、正直、私の心はそれどころでは無かったわけだけど、意外とこの状況に飲まれるような雰囲気はなかったのをもしかして、ディラン様は狙っていたのでしょうか。
なんとも、ハーブスト公爵家の方々はどの人も食えない人が多い。それはエステリア様にしても、お師匠様もそうだ。
私は大きく息を吐いて、前日に説明を受けた通りに所定の位置に立つ。見える的は約十個。後から登場する的が五つ。大丈夫、位置もタイミングも前日の説明会で知っている。
「開始してください」
と、審査を行う教員とみられる人物の声に私は即座に魔法を発動させ、それを一気に放つ。衝撃の風を同時に十放ち、私が放った魔法は即座に的の中央を貫き、新たな的が立ち上がった瞬間、再び魔法を展開して放つ。
そして、瞬時に全ての的を破壊したわけだけど、会場は何が起こったのかと静まりかえり、しばしの沈黙が流れる。
『こ、これは凄い! 一瞬の出来事に会場が静まり返ってしまいましたが、これは凄い事が起こりました!』
と、拡声の魔道具を使って司会進行を行っている生徒が声を上げ、会場に響き渡る。そして、その後、一瞬遅れて大歓声が聞こえ、私はその音の衝撃に思わずビックリしてしまい、足早に会場を去ろうとしたけれど、審査を行っている教員にどこへ行くのか? と、言われてしまい、焦りながらその場に留まった。
「アーマリア侯爵令嬢。ひとつ聞きたいのだが、先程の魔法は広域展開の魔法では無いのか?」
「いいえ、単発の魔法を複数同時に展開したに過ぎませんので、違反には当たらないと思いますが?」
私がそう言うと、その人は凄い驚きの表情を浮かべて「同時展開?」と、不可思議そうに呟いた。魔法の同時展開に関してはアリエル殿下や他の方も普通に出来るので、一般的な方法だと私は認識していたのですが、どうもそれは違うようです。
「一つの魔法では無い? しかし、同時に大量の魔法を放つ――それはどういうことだ?」
と、その人は考え込むようにブツブツと言ったわけですが、そこまで難しい話では無いと思うのですけど、それも違うのでしょうか。
「私はこういった魔法を並列展開出来る人を幾人も知っていますが、一般的な方法では無いのでしょうか?」
そう言うとその人は「は?」と、不思議そうな顔をする。因みにウィンディとかも普通に出来るのは普段の話からも想像出来るし、エステリア様やお師匠様も普通に魔法を並列展開出来るのは実際に見ているので知っている。
「全く、何を揉めているのかね?」
と、私達のクラスの担任であるビバル先生が面倒臭そうにやって来て、また面倒臭そうにそう言った。この競技の審査を担当している人はビバル先生に対して事情を説明すると、先生はまた面倒臭そうに溜息を吐く。
「考え方の問題だな。アーマリア侯爵令嬢リンリィ、同時展開する魔法は単一の魔法を複数発動させるわけだが、彼の認識では複数同時に発動させる魔法自体が一つの範囲魔法と定義するものだと思っている」
「えっと、それは明確に違うのでは無いでしょうか?」
私がそう言うと、ビバル先生も「明確に違うな」と、私の言葉を肯定する。けれども、審査の担当の人は不思議そうな顔をする。
「複数の魔法を発動させる魔法ではないですか? 普通に考えて、同時に多数の魔法を発動するという考えが私には分からないのですが、ビバル様、説明願えませんか?」
「――ったく、面倒ですね。そもそも、単一の魔法を同時に複数展開する魔法というモノも無くは無いが、それはまた考え方が違うのだよ。彼女がやって見せたのは単一の魔法を同時に大量に展開する方法論だ。魔法は発動前であれば、複数の魔法を同時に放つ事が出来る。これは一つの魔法では無く、複数の魔法を行使しているわけだ。ただし、その速度と同時展開に必要な魔力量が必要な為に、普通は高速詠唱の魔法から入るわけだが、アーマリア侯爵令嬢が行った方法は不必要な魔力を如何に使わずに高速で展開出来るか――を突き詰めた魔法だった。どちらかと言えば魔術のような魔法であった」
と、ビバル先生はどこか興味深そうな瞳を向けながらそう言った後に会場の方をチラリと見て「ああ、そういうことか……」と、呟くのでした。
「そんな事が可能なのですか?」
「ああ、例えばこうだ――」
そう言ってビバル先生は瞬時に五つの灯火を展開させて火を点けた。
「単純な術式だからこそ、簡単に出来るが、複雑な魔法となると中々に難しくなるだろうね。ま、私に出来なくは無いが、それでも展開する為に必要な魔力量が増えるし、正直言ってあまり実戦向きとは言えないかもしれないが――いや、これに関しては女王陛下などは超上級魔法を同時に発動など、簡単にやってしまうのだろうなぁ」
と、楽し気にニヤリと笑いながら、彼は眼鏡をクイッと上げた。な、なんだか、少し怖いですね。この人。
と、とりあえず落ち着かないと――焦りながら廊下を進み、出場者用の入出場口から外に出ると日差しの眩しさに目を細める。そして、観客の歓声が聞こえその大きさに驚きを覚えるけれど、正直、私の心はそれどころでは無かったわけだけど、意外とこの状況に飲まれるような雰囲気はなかったのをもしかして、ディラン様は狙っていたのでしょうか。
なんとも、ハーブスト公爵家の方々はどの人も食えない人が多い。それはエステリア様にしても、お師匠様もそうだ。
私は大きく息を吐いて、前日に説明を受けた通りに所定の位置に立つ。見える的は約十個。後から登場する的が五つ。大丈夫、位置もタイミングも前日の説明会で知っている。
「開始してください」
と、審査を行う教員とみられる人物の声に私は即座に魔法を発動させ、それを一気に放つ。衝撃の風を同時に十放ち、私が放った魔法は即座に的の中央を貫き、新たな的が立ち上がった瞬間、再び魔法を展開して放つ。
そして、瞬時に全ての的を破壊したわけだけど、会場は何が起こったのかと静まりかえり、しばしの沈黙が流れる。
『こ、これは凄い! 一瞬の出来事に会場が静まり返ってしまいましたが、これは凄い事が起こりました!』
と、拡声の魔道具を使って司会進行を行っている生徒が声を上げ、会場に響き渡る。そして、その後、一瞬遅れて大歓声が聞こえ、私はその音の衝撃に思わずビックリしてしまい、足早に会場を去ろうとしたけれど、審査を行っている教員にどこへ行くのか? と、言われてしまい、焦りながらその場に留まった。
「アーマリア侯爵令嬢。ひとつ聞きたいのだが、先程の魔法は広域展開の魔法では無いのか?」
「いいえ、単発の魔法を複数同時に展開したに過ぎませんので、違反には当たらないと思いますが?」
私がそう言うと、その人は凄い驚きの表情を浮かべて「同時展開?」と、不可思議そうに呟いた。魔法の同時展開に関してはアリエル殿下や他の方も普通に出来るので、一般的な方法だと私は認識していたのですが、どうもそれは違うようです。
「一つの魔法では無い? しかし、同時に大量の魔法を放つ――それはどういうことだ?」
と、その人は考え込むようにブツブツと言ったわけですが、そこまで難しい話では無いと思うのですけど、それも違うのでしょうか。
「私はこういった魔法を並列展開出来る人を幾人も知っていますが、一般的な方法では無いのでしょうか?」
そう言うとその人は「は?」と、不思議そうな顔をする。因みにウィンディとかも普通に出来るのは普段の話からも想像出来るし、エステリア様やお師匠様も普通に魔法を並列展開出来るのは実際に見ているので知っている。
「全く、何を揉めているのかね?」
と、私達のクラスの担任であるビバル先生が面倒臭そうにやって来て、また面倒臭そうにそう言った。この競技の審査を担当している人はビバル先生に対して事情を説明すると、先生はまた面倒臭そうに溜息を吐く。
「考え方の問題だな。アーマリア侯爵令嬢リンリィ、同時展開する魔法は単一の魔法を複数発動させるわけだが、彼の認識では複数同時に発動させる魔法自体が一つの範囲魔法と定義するものだと思っている」
「えっと、それは明確に違うのでは無いでしょうか?」
私がそう言うと、ビバル先生も「明確に違うな」と、私の言葉を肯定する。けれども、審査の担当の人は不思議そうな顔をする。
「複数の魔法を発動させる魔法ではないですか? 普通に考えて、同時に多数の魔法を発動するという考えが私には分からないのですが、ビバル様、説明願えませんか?」
「――ったく、面倒ですね。そもそも、単一の魔法を同時に複数展開する魔法というモノも無くは無いが、それはまた考え方が違うのだよ。彼女がやって見せたのは単一の魔法を同時に大量に展開する方法論だ。魔法は発動前であれば、複数の魔法を同時に放つ事が出来る。これは一つの魔法では無く、複数の魔法を行使しているわけだ。ただし、その速度と同時展開に必要な魔力量が必要な為に、普通は高速詠唱の魔法から入るわけだが、アーマリア侯爵令嬢が行った方法は不必要な魔力を如何に使わずに高速で展開出来るか――を突き詰めた魔法だった。どちらかと言えば魔術のような魔法であった」
と、ビバル先生はどこか興味深そうな瞳を向けながらそう言った後に会場の方をチラリと見て「ああ、そういうことか……」と、呟くのでした。
「そんな事が可能なのですか?」
「ああ、例えばこうだ――」
そう言ってビバル先生は瞬時に五つの灯火を展開させて火を点けた。
「単純な術式だからこそ、簡単に出来るが、複雑な魔法となると中々に難しくなるだろうね。ま、私に出来なくは無いが、それでも展開する為に必要な魔力量が増えるし、正直言ってあまり実戦向きとは言えないかもしれないが――いや、これに関しては女王陛下などは超上級魔法を同時に発動など、簡単にやってしまうのだろうなぁ」
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