悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第四章 悪役令嬢は王女と共に戦場を駆ける

269.悪役令嬢の護衛騎士見習いは不可思議な魔道具を見る

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 馬車と言う名の全く別の何かの中で作戦会議が行われ、その日は早々に休むことになり、翌日のまだ夜が明ける前に指示通りに私の隊とミルレーンの隊は出発した――と、言っても馬車で目的地付近へ向かうわけだが、その中にある広い空間でそれぞれが緊張した面持ちで到着するのを待っていた。

 なお、御者の役目をしているのはダンディバル卿で、彼はクーベルト辺境伯の騎士団でもかなりの上位に位置する騎士であり、国内でも有名な騎士の一人なのだが、まさかミルレーンの副官として今回の部隊運営に関わっているとは誰も思わないだろう。

 それにしても、アリエル王女殿下とエステリア様は色々な意味で突出しているというか、この一年でエステリア様がアリエル王女殿下を支える為という意味合いの言葉をよく口にしていた意味を理解出来る。あの方はこのミストリアにおける英雄であり、他国における恐怖の象徴であるキャロライン女王陛下によく似ているお方だ。

 エステリア様とのやり取りを見ていると本当の姉妹かと思うくらいで、エステリア様が砕けた感じのやり取りをしているのを見ていると本当に勘違いしてしまいそうになる。時折、少女らしい雰囲気を見せるアリエル王女殿下が可愛らしいと思ってしまうのも仕方ない。

 そんな事を考えている間に目的地に着いたのか、馬車の入り口からダンディバル卿が現れて緊張した雰囲気は全くなく「皆、そろそろ遠足の時間だぞ」と、軽く言うのであった。

「ダンディバル様、遠足に行くのではありませんよ? 彼女達がポカンとしてしまっているではありませんか」

 と、そう言ったのは私の隊にダンディバル卿と同じように副官としてクーベルト辺境伯の騎士団から派遣されているファウィラ様だ。彼女は大人っぽく優しく柔らかい雰囲気の女性だけれど、パルパスフィ騎士爵と言えば血塗られた騎士と言われるくらいの武闘派で、彼女が回復魔法を得意としていると聞いて思わず首を傾げてしまいそうになったくらいに想像できなかった。

「まぁまぁ、そう口うるさくするんじゃないよ。さて、ミルレーン嬢、さっさと仕事を終わらせてしまいましょう」
「は、はいっ!」
「全く――ルアーナ様。我々も出ましょう」

 ファウィラにそう言われて、私は「ああ」と、短く答えて自部隊の面々に聞こえるように出発を告げ、馬車を出る。因みに、不思議な話ではあるがリンリィ嬢曰く「馬車に誰も居なくなると自閉状態になります」だ、そうだ。全くもって意味がよく分からないが、そう言う事が出来ると彼女やエステリア様が言うのだから、そうなのだろう。

 あの方々の技術力は私達の想像を遥かに超える。こういう部分でも自ら考える事が大事だとは思うが、分からない物を考えて致し方あるまい。と、私は思っている。

「では、この場の周囲を警戒お願いします。我々は一番機から五番機までを飛ばします」

 と、ミルレーン嬢は箱の中から、不思議な魔道具らしき物を取り出し、何やら変形させていく。

「一体、これは?」
「これは我々部隊のみが所持を許可されている『遠隔操作型小型偵察機―トオミ―』です。どういう原理で出来ているかについては詳しい事は理解出来ていませんが、本体に付いている四つの回転する翼で自在に空を飛ぶことが出来ます。また、おおよそ10大ルーン程度の魔力探知と術者との視界共有が出来ます」
「な、なんとも、凄いね……」
「ですよね! さすがエステリア様です!」

 彼女は興奮気味にそう言いながら、トオミなる物を飛ばす準備に取り掛かる。

「ルアーナ様、我々も周囲に向かわねば」
「あ、ああ、そうだった。では、ミルレーン嬢、頼んだ」
「はい、ルアーナ様もお願い致します」

 と、私達は周囲の森を警戒しつつ、ミルレーン嬢達が見える位置で移動を開始するが、すぐに奇妙で大きな音に驚かされる。煩い羽虫をもっと豪快にしたような音を鳴らしながらトオミが五体空へ物凄い速度で飛んでいく。

「まだ、薄暗い中で見えるのだろうか?」
「さぁ、分かりかねます。しかし、目立つ音に何者かが反応するやもしれませんね」

 ファウィラの言う通り、結構な音が現在も聴こえている事を考えると人がいた場合、気になって近づいて来る可能性はある。

「それにしても、視界共有というのは噂には聞くが存在しているのか?」
「ええ、斥候を得意とする者の中にはそういった魔法を扱える者がおります。エステリア様曰く『使える人の魔法を術式として読み取って、新しく作った』そうですから、魔法の素養があれば誰でも扱えるのかもしれませんね」

 なんとも――な話だ。さすがエステリア様と言いたい。高度な魔法を魔術には扱えない。と、いうのが常識だった世界を完全にぶち壊し、魔法と同じレベルで魔術を構築出来る技術力と発想力を持つあの方は色々な意味で突出している。ただ、恐ろしいと私が思っていることはアリエル王女殿下、アンネマリー嬢、リンリィ嬢、ウィンディ嬢含め、あまり驚かれないことだ。なんとも当たり前のような雰囲気が凄いのだ。

 私がエステリア様に出会う前からあの方達は王城にてアリエル王女殿下の茶会に招待されていたらしいし、何か特別な繋がりがあるのだろう。少し羨ましいところなのだけど、私達とは違うナニかがそこに存在するような雰囲気がある。敢えては言わないけれど、少し嫉妬心が湧くくらいだ――だけど、私だってもっとアリエル王女殿下やエステリア様に信頼されて、もっと褒めて頂きたい。まぁ、そこは頑張るしかないか。

 そんな事を考えている時、ファウィラが「ルアーナ様、少々問題が起こりそうです」と、私に近づいて耳元でそう言うのだった。
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