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勝ち目しかない勝負
①
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一念発起したものの、俺はすぐに挫折しかけていた。
――だってこの上司、一切隙がない!!!
まず、とりあえず仕事は完璧だ。これは観察するまでもなく、分かっていた。
自分の仕事をこなすだけでなく、新入社員の俺や、グループの人の業務も把握して、適切な指導をしてくれる。
おかげでうちのグループは少人数ながらも成績が良く、俺自身も初めての人事評価で、同期の中で上位であった。
見た目と言った先天的なものは、もはやどうしようもない。高身長かつ俳優のような男前。
俺だって悪くはないと思うが、オーラから違う。
そうなると、プライベート部分に何か弱点があるのではないか。
だがこの男、プライベートを一切見せない。
社内での交友関係は満遍なくあるものの、誰かと深く付き合っているという様子はない。
結婚もしていなさそうだし、恋人とかの話も聞かない。
探れば何か出てくるのかも知れないが、そもそも探るのが難しい。
――手詰まりだ。
「お前最近頑張ってるじゃん、どしたの?」
この日は新山からこの前のことを謝りたいと話が入り、昼飯を奢ってもらっていた。
松田は今大型プロジェクトが入り忙しいらしく、2人だ。
「お前に怒られた時に色々考えたんだよ。」
そういうと、新山は罰が悪そうな顔をした。
「……本当にその時のことはごめんって。俺、どんなこと言ったの?」
「かっこいいこと言っていたから気にすんなって。水かけられたのはムカついたけど。」
そういうと、新山はさらに苦虫を噛み潰したような顔をした。
もう何度も謝られているので、話題を変えよう。
「そうだ。どうすれば司馬さんの弱点ってなんだと思う?」
「司馬さん?どうして急に。」
「お前に言われてさ、何か司馬さんに勝ってやろうって思ったわけ。」
そういうと、新山はびっくりしたような、そして今の俺の頑張りの理由が分かり納得したような表情をした。
「……お前、凄いな。へぇ、αの司馬さんに勝とうと……」
新山が嬉しそうにニヤニヤするから、恥ずかしくなってきた。
「やめろよ、そんな茶化すなって。」
「ごめん、茶化すつもりじゃなくて嬉しかったんだ。
お前みたいな人もいるんだなって。」
新山の言葉に少し引っかかりを覚えたものの、新山が話を進めたので深掘りすることはなかった。
「そうだな、聞く限り仕事は完璧だし……。
弱点があるとすれば、もうあとはプライベートぐらいじゃない?」
「だよなぁ、と言ってもあの人、恋人の影もないんだよな。結婚してる雰囲気もないし。」
そういうと、新山がニヤッとした表情を見せた。
「恋人の影もないことが大きな弱点なんじゃないか?知ってるか?α社会ってさ、30過ぎてパートナーいないと、“運命の番を拗らせてる”とか“性格に問題あるんじゃ”って言われがちなんだぜ。」
「マジ?なんでなの?」
「うん、ロマンチスト扱いでちょっと引かれるらしい。モテて当然って風潮があるから、浮いた話がないことが逆に“弱み”なのかも。」
俺は驚いた。αの人間関係って、そういう圧もあるのか……。
というか、αとΩは運命の番に出逢いたがってるものだと思っていたが、それすら歳をとると馬鹿にされるのか。
確かに世界は広いから、運命の番に出会えるαとΩの方が珍しいらしい。
「……なんかαも生きづらそうだな。」
「そうそう。それに司馬さんって元々αの多い大手企業から転職してきたんだろ?そういったα社会の空気が合わなかったとか?」
確かに、司馬さんが他のαとつるんでいるところを見たことがない。うちの会社にそこまでαがいないというのもあるが、基本的にαはαでつるむことが多い。
司馬さんの能力からαらしさを感じることがあっても、交友関係からαらしさを感じたことはなかった。
今度仕事でαの人と関わる機会があれば、司馬さんを観察してみよう。
――そしてその“観察のチャンス”は、俺が思っていたよりも早く、しかも“思いもよらない形”で訪れることになる。
――だってこの上司、一切隙がない!!!
まず、とりあえず仕事は完璧だ。これは観察するまでもなく、分かっていた。
自分の仕事をこなすだけでなく、新入社員の俺や、グループの人の業務も把握して、適切な指導をしてくれる。
おかげでうちのグループは少人数ながらも成績が良く、俺自身も初めての人事評価で、同期の中で上位であった。
見た目と言った先天的なものは、もはやどうしようもない。高身長かつ俳優のような男前。
俺だって悪くはないと思うが、オーラから違う。
そうなると、プライベート部分に何か弱点があるのではないか。
だがこの男、プライベートを一切見せない。
社内での交友関係は満遍なくあるものの、誰かと深く付き合っているという様子はない。
結婚もしていなさそうだし、恋人とかの話も聞かない。
探れば何か出てくるのかも知れないが、そもそも探るのが難しい。
――手詰まりだ。
「お前最近頑張ってるじゃん、どしたの?」
この日は新山からこの前のことを謝りたいと話が入り、昼飯を奢ってもらっていた。
松田は今大型プロジェクトが入り忙しいらしく、2人だ。
「お前に怒られた時に色々考えたんだよ。」
そういうと、新山は罰が悪そうな顔をした。
「……本当にその時のことはごめんって。俺、どんなこと言ったの?」
「かっこいいこと言っていたから気にすんなって。水かけられたのはムカついたけど。」
そういうと、新山はさらに苦虫を噛み潰したような顔をした。
もう何度も謝られているので、話題を変えよう。
「そうだ。どうすれば司馬さんの弱点ってなんだと思う?」
「司馬さん?どうして急に。」
「お前に言われてさ、何か司馬さんに勝ってやろうって思ったわけ。」
そういうと、新山はびっくりしたような、そして今の俺の頑張りの理由が分かり納得したような表情をした。
「……お前、凄いな。へぇ、αの司馬さんに勝とうと……」
新山が嬉しそうにニヤニヤするから、恥ずかしくなってきた。
「やめろよ、そんな茶化すなって。」
「ごめん、茶化すつもりじゃなくて嬉しかったんだ。
お前みたいな人もいるんだなって。」
新山の言葉に少し引っかかりを覚えたものの、新山が話を進めたので深掘りすることはなかった。
「そうだな、聞く限り仕事は完璧だし……。
弱点があるとすれば、もうあとはプライベートぐらいじゃない?」
「だよなぁ、と言ってもあの人、恋人の影もないんだよな。結婚してる雰囲気もないし。」
そういうと、新山がニヤッとした表情を見せた。
「恋人の影もないことが大きな弱点なんじゃないか?知ってるか?α社会ってさ、30過ぎてパートナーいないと、“運命の番を拗らせてる”とか“性格に問題あるんじゃ”って言われがちなんだぜ。」
「マジ?なんでなの?」
「うん、ロマンチスト扱いでちょっと引かれるらしい。モテて当然って風潮があるから、浮いた話がないことが逆に“弱み”なのかも。」
俺は驚いた。αの人間関係って、そういう圧もあるのか……。
というか、αとΩは運命の番に出逢いたがってるものだと思っていたが、それすら歳をとると馬鹿にされるのか。
確かに世界は広いから、運命の番に出会えるαとΩの方が珍しいらしい。
「……なんかαも生きづらそうだな。」
「そうそう。それに司馬さんって元々αの多い大手企業から転職してきたんだろ?そういったα社会の空気が合わなかったとか?」
確かに、司馬さんが他のαとつるんでいるところを見たことがない。うちの会社にそこまでαがいないというのもあるが、基本的にαはαでつるむことが多い。
司馬さんの能力からαらしさを感じることがあっても、交友関係からαらしさを感じたことはなかった。
今度仕事でαの人と関わる機会があれば、司馬さんを観察してみよう。
――そしてその“観察のチャンス”は、俺が思っていたよりも早く、しかも“思いもよらない形”で訪れることになる。
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