英雄の娘は死の運命を回避したい

まふ

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一章

奴隷都市

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「勝者、隻眼のポー!!」

 勝者の名前が高らかに円形闘技場に響き渡る。しかし、場内から湧き起こったのは、ブーイングだった。

「ふざけるな!」
「血を流せ!」
「俺たちが見てえのは、お前が無様に死ぬところなんだよ!」

 身勝手な非難を浴びながら、剣奴、隻眼のポーは退場していった。勝つことを望まれない試合。憔悴しきった表情の男は、とぼとぼと廊下を歩く。しかし、数歩もしないうちに、男は歩みを止めた。暗闇の中から現れた、白い影を目に留めたからだ。

「……おお、チビ。またおめえ、後片付けを言い渡されたのかァ」

 男は、闘技場に残してきた獣の死体を思い浮かべた。

「……人間じゃないだけ、マシ」

 白い影は、小柄な少女だった。
 痩せぎすの身体。ボロのような服。艶のない真っ白な髪。昏い…………なのにどこか、ギラギラと輝く翡翠色の瞳。

「そうかい、なんでご主人様はお前さんにだけ、こんなに厳しいのかねェ」
「どうでもいい。私はこんなところ、すぐに出てってやるんだから」

 隻眼の男は、憐んだ表情を少女に向けた。

「まだそんなこと言っているのか。俺たちは奴隷。生まれた時から誰かのもんだ。逃げるだなんて、馬鹿なことを考えるな」
「・・・ポー、次の試合も勝ってね」

 そう言うと、少女は男の横を通り過ぎていった。

「はは、なんだ?慰めてくれているのか?」
「私、アンタの死体、片付けたくないもの」

 あんまりな言葉に男はしばし動きを止めたが、すぐに苦笑して少女とは反対方向に歩き出す。それが素直じゃない少女なりの励ましだと、分かっていたからであった。

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