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一章
記憶
しおりを挟む「うわ、なんか目の下すげェぞ」
「…………眩しい」
結局、ほとんど眠れなかった。
夜に悩んでも良いことはない!という前世(と思うことにした)の価値観で早々にベッドに潜り込んだのだが、眠気が訪れることはなかったのである。
しかし、眩しいのはしぱしぱする目のせいだけではない。グレタは、ドアを開けた先に佇んでいるリカルドの顔を見上げた。
(……か、顔が……顔がいい……!!)
何も後ろにしていないのに、後光が溢れるような気さえする。「わたし」の意識が生まれるまで、そんなこと考えもしなかったのだが、リカルド・リンドハーゲンという少年は、健康的でちょっぴり野生的な雰囲気を持つ、魅力的な若者だった。
(ゲームでは、回想シーンにちょっとだけ出てくるリカルドの少年時代……なんというか、なんというか…………)
出来ることなら、このままもう一度ベッドにダイブして転げ回りたい。そんなことを考えている場合でもしている場合でもないのだが、全て忘れて叫びたい。「推しが!息を!している!!」と。
「朝飯、食えるか?疲れてるなら部屋まで持ってこようか?」
笑みは浮かべているが、目の奥は真剣だ。グレタのことを心配しているのが見て取れる。正直、ありがたい申し出だった。
「お、お願いして、いいです、か……?」
身長差で上目遣いになったグレタを見て、リカルドは固まった。
「……」
「あ、あの……」
何か、と言いかけた瞬間、グレタの視界に広がったのは、どアップのリカルドの顔だった。
「??、???????」
「うーん、熱はない、か?」
難しい顔をして、目を閉じている少年。
合わせられた手のひら。
何度も言うが、顔がいい……たとえるならまさに、そう、ハリウッド。しかし。
「ぎゃあああ!?な、何すんのよ!!」
大混乱に陥ったグレタは、思わずリカルドを突き飛ばしてしまう。
「おお……なんだ、はは、元気じゃねえか!」
全力だったのにも関わらず、全く動かない身体に驚きながら、グレタはじりじりと後退する。
「いや、なんか、らしくねえって思ってよ」
「な、何が」
「また、逃げねェって言って、部屋から出てくるかと思ってよ。ま、元気なら良かった。飯、持ってくる」
踵を返したリカルドを呆然と見送ったグレタは、はっと目を輝かせた。
「これだ……これだ!!」
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