【R18】引きこもりを夢見るオタクOLですが、ヤンデレ御曹司に婚姻届を突きつけられています

夕日(夕日凪)

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御曹司とオタクはお試し期間を送る1

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「透さん! ハウス! 外でのハグは禁則事項ですよ!」
「ご、ごめん。ひどいことを言われても、怒ろうともしない美也ちゃんが不憫で…」
「――不憫!?」

 不憫と言われる理由がわからず眉間に皺を寄せていると、体を離した透さんに悲しげな目で見つめられる。急にハグしてきたことを怒らねばと思っていたのに、そんな目で見られると怒るに怒れなくなってしまう。
 ……いや。どうしてそんな目で見られなければならないんだ。

「……美也ちゃん。ひどい言葉は、素直に受け入れなくていいんだよ」
「でも私、本当に怒ってませんし」
「それが問題なんだよなぁ」
「……?」

 透さんの言葉に首を傾げていると、よしよしと頭を撫でられる。そして額に、おやすみ前の子供にするようなキスを……しようとしてぐっと踏み留まったようだった。
 ……キスはまだしちゃダメですもんね。我慢ができてえらいと言ってあげるべきなんだろうか。

「それで、だ。……乃愛、蓮司」

 透さんは私の肩を庇うように抱き寄せながら、乃愛さんと佐々木君に向き直った。佐々木君の体はびくんと揺れたけれど、乃愛さんはこちらを鋭い眼光で睨みつけたままだ。通りすがる人たちにもちらちらと視線を送られるし、なんとも居心地が悪い。

「僕たち、引っ越すから。新居を調べて押しかけてきたりはしないでね。そんなことをしたら、警察を呼んでストーカーとして突き出すから」

 彼はにこりと温和な笑みを浮かべ――そんなとんでもないことを言った。

「……は? なに言ってんの?」

 掠れた声でそう言って、乃愛さんは大きな目をさらに大きくした。その隙のある表情は、大きな物音によって衝撃を受けた子猫のようだ。

「当たり前のことでしょう? 僕は美也ちゃんが一番大事なんだし。その平穏を守るのは夫である僕の義務」
「いち、ばん」
「うん、一番。他の誰よりも美也ちゃんが大事」

 恥ずかしいことを、堂々と言い切るものだ。
 透さんと乃愛さんの会話を聞いていると、勝手に頬が熱くなってくる。
 乃愛さんはすっかり萎れていて、見ていて気の毒になってしまう。だけど、私なんかに同情されるのは……きっと嫌なんだろうな。

「透さん」
「……美也ちゃん?」
「アイスが溶けちゃうの嫌なんで、一旦部屋に戻りません? よければ、そちらのお二人も一緒に」
「美也ちゃん、それは反対。僕はもう二人と縁を切るつもりだから、そんな親切はしなくていい」
「縁を切ると言っても、ご親戚なんですから難しいでしょう? 佐々木君には会社で会うし、乃愛さんにも冠婚葬祭で会うこともあるでしょうし……」
「会社を辞めて海外にでも行こうか。冠婚葬祭なんて行かなきゃいい」

 透さんはそう言うと、冷たい表情で鼻を鳴らした。これは相当お冠だな。……どうしたものだろう。
 佐々木君と乃愛さんからの、期待を込めた視線が背中に刺さっているのを感じる。
 ――佐々木君はともかく……
 この面倒事を持ち込んだのは、乃愛さんなんだけどなぁ。
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