もののけ執事の今日のお夜食

夕日(夕日凪)

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深夜、遭遇、もののけ執事5

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「これって、どうやって作ったんですか?」
「今日は時短のために、鶏肉と白米、そして調味料を炊飯器に入れて一緒に炊きました」
「へぇ! そんな作り方があるんですね。本当に、すごく美味しいです」

 炊飯器ってそんなこともできるんだなぁ。玉ねぎと一緒に口に入れた鶏肉は、ふわりとしてとても柔らかい。

「ん……最高です……!」
「それは良かったです。お話の続きは食べてからの方が良さそうですね」

 夜音さんの言葉に私はハッとなる。ご飯に夢中になりすぎて、話のことがどこかへ飛んでしまっていた。

「た、食べながらでも……」
「そんなに美味しそうに食べられたら、お邪魔はできませんよ。お茶を淹れてきますが……紅茶と緑茶どちらがいいですか?」
「あ、紅茶で」
「わかりました」

 夜音さんはそう言うと、一礼してからまた台所に向かう。
 なんというか……気働きがいい人だなぁ。
 美味しいご飯を作ってくれたし、実は親切な人だったするんだろうか。

 ……いや。私、ご飯で懐柔されすぎだな。

 そんなことを考えながらご飯をまた口にする。ん……本当に美味しい!
『重めに作った』と夜音さんは言っていたけれど、ぺろりと食べてしまいそうだ。

「お待たせしました」

 戻って来た夜音さんが私の前に紅茶を置く。その紅茶からは、淡いしょうがの香りが漂っていた。
 お礼を言って一口飲むと、ほのかな甘さが舌に伝わってくる。
 この甘さは……お砂糖じゃないような。

「夜は冷えますので。しょうがと蜂蜜を入れております。蜂蜜は百合様がこちらにいた頃からあるものですが、適切に保管をしていたので腐ってはおりません」

 私の疑問は夜音さんの言葉ですぐに氷解した。なるほど、蜂蜜か。棚に入っているのを見た気がする。

「蜂蜜って腐りにくいんですか?」
「天然の蜂蜜は細菌が繁殖しにくいのです。混ぜものがしてあるものは、その限りではありませんが」
「へぇ、そうなんですね」

 ご飯でお腹を満たしジンジャーティーを飲んでいると、胃がぽかぽかと温かくなる。
 私はふっと安堵混じりの吐息を吐いた。
 夜音さんに言われた通り、胃が満たされると心にも余裕が出るようだ。私は改めて、夜音さんのことを横目で観察した。
 本当に……綺麗な人だ。こんな美形はテレビの中でも見たことがない。
 頭の上で揺れる耳やわっさりと付いた六本の尻尾も、見慣れてみると可愛いかも。

「……落ち着きましたか?」

 夜音さんが急にこちらを見たので視線がばっちりと合ってしまう。
 私は少し焦りながら、コクコクと何度も首を縦に振った。

「百合様が神だということまでは、説明しましたよね」
「は、はい……」

 夜音さんが言うには。
 祖母は戯れに人間の世界に下りた時に、祖父と偶然出会ったらしい。
 そして……二人は恋に落ちてしまった。

「百合様はすっかり男にのぼせ上がり、駆け落ちをしたのです。探し回って我々が見つけた時には……百合様はすでに姫様を身籠っておられました」

 話の流れから言うと『姫様』はうちの母のことなんだろう。
 私も母も『姫』が付くような見た目じゃないんだけどなぁ。どちらも平凡な日本人女性の見た目なのだ。
 しかしなんというか……昔話みたいな話だなぁ。
 それが祖母と祖父の馴れ初めだと言うのだから、びっくりである。
 正直なところ……浮世離れしすぎた話すぎて、実感がなかなか追いつかないなぁ……
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