【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)

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アルフォンスは思い返す1(アルフォンス視点)

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 僕が八歳の時、母が亡くなった。

 母はとても美しく陽だまりのような雰囲気の人だった。
 そしてとても優しい手をしていた。その手に頭を撫でられるのが僕は好きで、よく撫でてもらいに行ったものだ。
 母の記憶が朧気になりつつある今でも、その手の優しさのことはよく覚えている。
 父には貴族家の嫡男が母にそんなに甘えて、みたいなことを言われていたけど。あれは多分ただの焼きもちだ。父は母のことをとても愛していたからね。
 母が亡くなった後……母に瓜二つの僕を見るのが辛かったのだろう。父の僕への態度がぎこちなくなった時期があった。
 目を合わせてもらえず、話しかけても辛そうな顔をする。
 幼い僕はそれが悲しくて、一人で部屋の隅で泣いていたら……もっと幼い妹に見つかってしまった。
 それが恥ずかしくて『ごめんねビアンカ。あちらに行っていて』って僕は言ったのだけれど、妹は少しつり上がった猫のような目をキラキラと輝かせながらこちらへと近づいてきた。

『お兄様、大丈夫? どこか痛い? ビアンカがいるから勿論平気でしょ?』

 落ち込んでいる僕に小さな手を差し伸べて少し高慢にビアンカは言ったんだ。
 慰めるというのは不遜すぎるその態度。だけどそれがとても可愛くて、愛おしくて。
 その日からビアンカは僕の天使になったんだ。

 数年後。
 僕と父が全力で甘やかしすぎたせいか、少しばかり我儘になってしまった妹を膝に乗せて僕は庭でお茶を楽しんでいた。
 すると膝の上の可愛い僕のビアンカが青い顔をしたり大量の汗をかき出したり……何か様子がおかしいんだ。

「ビアンカ、さっきからどうしたの。気分が悪そうだよ?」

 くるり、と妹の体をこちらに向ける。
 すると世界で一番可愛いお顔と向き合うことになった。
 ……いつ見ても可愛いなぁ。
 肌は雪のように真っ白で、湖面の色の大きな瞳は銀色の睫毛に縁取られてキラキラと輝いてる。唇は思わずキスをしてしまいそうな薄紅色で綺麗な形だ。
 銀色の髪は櫛を通さなくてもいいんじゃないかってくらいにサラサラと指通りがよい繊細な感触をしている。
 顔立ちは幼いのにすでに驚くほどに整っていて……うん。これは絶世の美少女だ。間違いない。うちのビアンカが世界で一番可愛い。
 どうしよう何度見てもビアンカが可愛くて、僕はどうしていいのかわからないよ。

「おっ……お兄様!!! 大切なお話がございます、人払いを、人払いをしてくださいませ!!」

 ビアンカは突然そんなことを言い出した。
 すごい、ビアンカは天才なの? まだ君は五歳だよ。『人払い』なんて難しい単語いつ覚えたの?
 僕の天使は可愛い上に天才なの? どうしよう、世界中に自慢してしまいたい。
 ああ、でもうちのビアンカが可愛すぎるのが世に知れるのは……僕だけが知っていればいい、なんてことも思ってしまうんだ。
 この矛盾はどう解消すればいいんだろうね。

「ふふっ、どうしたのビアンカ。人払い? 難しい言葉を知ってるんだね。賢いなぁ、さすが僕のビアンカ。本当にすごいよ! 可愛い上に賢いなんてまさに天使だね!」

 僕がそう言いながら頬ずりするとビアンカは少し嫌そうな顔をする。でも嫌がる顔も可愛いんだ。どうしよう、ビアンカの可愛くないところなんて存在しないんじゃないかな!

「お兄様。大好きなお兄様と二人っきりに、ビアンカはなりたいですわ」

 ……ビアンカ、それは可愛すぎる。ダメでしょう。
 どうして君は妹なのかな。僕は君がこんなに大好きなのに。
 こんな気持ちを持つのはダメだってわかっているのに……僕は女の子としての君が好きなんだ。
 そして人払いをした上でビアンカがしてくれた話は、到底信じられない話だった。
 ……他の人が、するのならね。僕はビアンカの言うことなら、全て信じたい。
 しかも可愛いビアンカの命に関わることなのだ。
 僕の全力をもって君の万難を排除するよ。

 ビアンカ六歳の冬が訪れようとしている頃。
 マクシミリアンという少年が屋敷へとやって来ると父が教えてくれた。
 ……本当にビアンカの言う通りになったね。
 父はマクシミリアンの魔法の才能を買ってビアンカの将来の護衛兼執事として彼を雇い入れたそうだ。
 僕は普段我儘を言わない子供であるとの自負はある。だけどこの時ばかりは我儘を言ってマクシミリアンを僕付きの従僕にしてもらった。
 彼が妹に危険を運ぶ人物なら……最初から近づけなければいいのだ。
 ……普段何かをねだったりしない僕に我儘を言われた父が少し嬉しそうな顔をしていたのが、ちょっとくすぐったかったな。
 そして冬のある日。マクシミリアンが屋敷へと訪れた。
 夜の色を纏った美しい少年を目にした時、ビアンカは怯えたように僕の後ろに隠れてしまったけれど。
 ビアンカの目に仄かに宿った彼への思慕のような色に、僕は気づいてしまった。
 ……ダメだよ、ビアンカ。君はあげない。
 そんな気持ちが湧いた瞬間、僕はビアンカに口づけていた。
 初めて触れたビアンカの唇はとても柔らかくて、そんなはずがないのに甘いような気がして。
 僕は舌を伸ばしてその口中まで味わってしまった。
 幼いからか体温が高いビアンカの口の中は、舐めるととても心地がいい。
 夢中になって舌を絡ませたっぷりと貪って口を離すと……ビアンカは真っ赤な顔で酷く動揺していた。
 その後もビアンカはマクシミリアンのことばかり目で追っていて。
 彼にビアンカが取られるんじゃないかって、僕は気が気でなかったんだ。
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