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エメラルドの輝きは誰にも負けない
ティモシーの誤算
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ティモシーはションバーグ公爵家の大きな馬車に乗り込み、王都郊外にあるターラント孤児院へ向かった。
ションバーグ公爵領は王都に近いので、ターラント孤児院にもすぐに行けるのである。
(シンシア……早く会いたい……)
馬車の中、ティモシーはアメジストのカフスボタンにそっと触れながらシンシアのことを想う。
(まだ僕はションバーグ公爵家から出ることは出来ないけれど……いつかきっと、無理矢理にでも独立して、その時には……)
ティモシーのエメラルドの目はしっかりと未来を見据えていた。
(それに、公爵閣下は身勝手に僕の実母に手を付けて、身勝手な理由で僕を引き取った。一応質の高い教育を受けさせてもらえた恩はあるけれど……公爵閣下、公爵夫人、義兄上……あんな冷たくて最悪な奴らだ。それなら恩を仇で返してやるさ)
ティモシーは今までションバーグ公爵家で受けて来た扱いを思い出し、内心毒突く。
そして自嘲気味にフッと口角を上げる。
(僕、前より性格悪くなってる。……こんな僕をシンシアはどう思うだろうか?)
エメラルドの目は、若干の悲しみが含まれていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
いつの間にか、馬車はのどかな自然の中を走っていた。王都郊外まで来ていたのだ。ターラント孤児院までもうすぐである。
馬車を引く馬は颯爽と走っている。そしてティモシーは馬車の中に入って来る爽やかな風を受け、少しだけ心が軽くなっていた。
(もうすぐだ……!)
エメラルドの目が輝く。
「久し振りだね、ティモシー。いや、ションバーグ卿と言った方が良いか」
ターラント孤児院の院長であるスコット・ターラント。ティモシーがいた時とあまり変わりはないようだ。
「お久し振りです、スコット院長。今まで通りティモシーで構いませんよ」
ティモシーは懐かしげにエメラルドの目を細めた。
そして寄付金を渡した後は、他の子供達の様子を見に行く。
「みんな、久し振りだね」
ティモシーは部屋の中にいた子供達に声を掛けた。
「お前……! まさかティモシーか!?」
大きく目を見開き驚愕しているのはカイル。ティモシーよりも二つ年上なのでもう十五歳である。
「うん、そうだよ、カイル。全然変わってなくて安心したよ」
ティモシーはホッとしたようにエメラルドの目を細めた。
「お前は変わったな! そんな良い服着やがってさー」
カイルはティモシーの服を物珍しそうに触っている。
他の子供達もティモシーに群がっていた。
「知ってるか? メイジーの奴、もう十七歳になったからって近くの花屋で働き始めたんだぜ。俺もそろそろ仕事探さねえとな。なあ、ティモシー、何か給金が高い仕事紹介してくんねえ? お前もうお貴族様だから良さそうな職場知ってそうだし」
ティモシーに詰め寄るカイル。
「あー……ごめん、カイル。社交界デビューがまだだから、あんまり知らないや」
少し困ったように微笑むティモシー。
他の子供達の相手をしながら、シンシアの姿を探す。しかし、シンシアの姿は見つからない。
(シンシア……もしかして今体調崩して医務室にいるのかな? 今までは先生達に見つからないように医務室にこっそり行ってたけれど、今は一応ションバーグ公爵家の後ろ盾がある。堂々と医務室に行ってみるか)
クスッと笑い、ティモシーは医務室に向かおうとした。
「おい、ティモシー、どこ行く気だ?」
しかし、カイルに呼び止められた。
「医務室だよ。シンシアがいないから、きっと体調を崩してるんだろうと思ってさ」
医務室の方を見ながら、愛おしそうにエメラルドの目を細めるティモシー。
しかし、このあとこの後ティモシーは予想だにしなかった話を聞くことになる。
「あー、シンシアならもういないぜ」
「え……? 何だって……?」
カイルの言葉に、ティモシーは耳を疑った。
「シンシアの奴、何かナルフェック王国のお貴族様に引き取られたみたいなんだ。二年前に。確かシンシアを引き取りに来たお貴族様、あいつの祖父だとか言ってたぞ」
カイルの話を聞いて、ティモシーは頭の中が真っ白になった。
(シンシアが……いない……。ナルフェック王国の貴族に引き取られた……。ナルフェック王国は海を挟んでいるじゃないか……!)
そしてティモシーは孤児院にいた頃を思い出す。
(シンシアの発音は確かに上流階級のものに近い。ただ、どの階級とも取れない妙な訛りもあった。あれは……ナルフェック語の訛りだったんだ……!)
ティモシーはションバーグ公爵家でナルフェック語を始めとする他国の言語の教育も受けていた。ティモシーもある程度話せるようにはなっている。
(それに、時々シンシアは綴りを間違えていたけれど、あれはナルフェック語の綴りだったんだ……!今までどうして気付かなかったんだ……!? 少し考えたらシンシアがナルフェック王国にルーツがあるかもしれないって分かったはずなのに……!)
悔しそうに表情を歪めるティモシー。
(まさかシンシアが海を隔てた隣国……ナルフェック王国の貴族に引き取られていて、完全に離れ離れになるなんて……。もしかして、ションバーグ公爵家に恩を仇で返そうとした罰なのか……?)
エメラルドの目は悲しさに染まる。
(いや、関係ない……! 迎えに行くって約束したんだ! シンシアがどこにいようと、絶対に会いに行く!)
ティモシーはアメジストのカフスボタンにそっと優しく触れる。
エメラルドの目は、強く真っ直ぐ希望を見据えていた。
ションバーグ公爵領は王都に近いので、ターラント孤児院にもすぐに行けるのである。
(シンシア……早く会いたい……)
馬車の中、ティモシーはアメジストのカフスボタンにそっと触れながらシンシアのことを想う。
(まだ僕はションバーグ公爵家から出ることは出来ないけれど……いつかきっと、無理矢理にでも独立して、その時には……)
ティモシーのエメラルドの目はしっかりと未来を見据えていた。
(それに、公爵閣下は身勝手に僕の実母に手を付けて、身勝手な理由で僕を引き取った。一応質の高い教育を受けさせてもらえた恩はあるけれど……公爵閣下、公爵夫人、義兄上……あんな冷たくて最悪な奴らだ。それなら恩を仇で返してやるさ)
ティモシーは今までションバーグ公爵家で受けて来た扱いを思い出し、内心毒突く。
そして自嘲気味にフッと口角を上げる。
(僕、前より性格悪くなってる。……こんな僕をシンシアはどう思うだろうか?)
エメラルドの目は、若干の悲しみが含まれていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
いつの間にか、馬車はのどかな自然の中を走っていた。王都郊外まで来ていたのだ。ターラント孤児院までもうすぐである。
馬車を引く馬は颯爽と走っている。そしてティモシーは馬車の中に入って来る爽やかな風を受け、少しだけ心が軽くなっていた。
(もうすぐだ……!)
エメラルドの目が輝く。
「久し振りだね、ティモシー。いや、ションバーグ卿と言った方が良いか」
ターラント孤児院の院長であるスコット・ターラント。ティモシーがいた時とあまり変わりはないようだ。
「お久し振りです、スコット院長。今まで通りティモシーで構いませんよ」
ティモシーは懐かしげにエメラルドの目を細めた。
そして寄付金を渡した後は、他の子供達の様子を見に行く。
「みんな、久し振りだね」
ティモシーは部屋の中にいた子供達に声を掛けた。
「お前……! まさかティモシーか!?」
大きく目を見開き驚愕しているのはカイル。ティモシーよりも二つ年上なのでもう十五歳である。
「うん、そうだよ、カイル。全然変わってなくて安心したよ」
ティモシーはホッとしたようにエメラルドの目を細めた。
「お前は変わったな! そんな良い服着やがってさー」
カイルはティモシーの服を物珍しそうに触っている。
他の子供達もティモシーに群がっていた。
「知ってるか? メイジーの奴、もう十七歳になったからって近くの花屋で働き始めたんだぜ。俺もそろそろ仕事探さねえとな。なあ、ティモシー、何か給金が高い仕事紹介してくんねえ? お前もうお貴族様だから良さそうな職場知ってそうだし」
ティモシーに詰め寄るカイル。
「あー……ごめん、カイル。社交界デビューがまだだから、あんまり知らないや」
少し困ったように微笑むティモシー。
他の子供達の相手をしながら、シンシアの姿を探す。しかし、シンシアの姿は見つからない。
(シンシア……もしかして今体調崩して医務室にいるのかな? 今までは先生達に見つからないように医務室にこっそり行ってたけれど、今は一応ションバーグ公爵家の後ろ盾がある。堂々と医務室に行ってみるか)
クスッと笑い、ティモシーは医務室に向かおうとした。
「おい、ティモシー、どこ行く気だ?」
しかし、カイルに呼び止められた。
「医務室だよ。シンシアがいないから、きっと体調を崩してるんだろうと思ってさ」
医務室の方を見ながら、愛おしそうにエメラルドの目を細めるティモシー。
しかし、このあとこの後ティモシーは予想だにしなかった話を聞くことになる。
「あー、シンシアならもういないぜ」
「え……? 何だって……?」
カイルの言葉に、ティモシーは耳を疑った。
「シンシアの奴、何かナルフェック王国のお貴族様に引き取られたみたいなんだ。二年前に。確かシンシアを引き取りに来たお貴族様、あいつの祖父だとか言ってたぞ」
カイルの話を聞いて、ティモシーは頭の中が真っ白になった。
(シンシアが……いない……。ナルフェック王国の貴族に引き取られた……。ナルフェック王国は海を挟んでいるじゃないか……!)
そしてティモシーは孤児院にいた頃を思い出す。
(シンシアの発音は確かに上流階級のものに近い。ただ、どの階級とも取れない妙な訛りもあった。あれは……ナルフェック語の訛りだったんだ……!)
ティモシーはションバーグ公爵家でナルフェック語を始めとする他国の言語の教育も受けていた。ティモシーもある程度話せるようにはなっている。
(それに、時々シンシアは綴りを間違えていたけれど、あれはナルフェック語の綴りだったんだ……!今までどうして気付かなかったんだ……!? 少し考えたらシンシアがナルフェック王国にルーツがあるかもしれないって分かったはずなのに……!)
悔しそうに表情を歪めるティモシー。
(まさかシンシアが海を隔てた隣国……ナルフェック王国の貴族に引き取られていて、完全に離れ離れになるなんて……。もしかして、ションバーグ公爵家に恩を仇で返そうとした罰なのか……?)
エメラルドの目は悲しさに染まる。
(いや、関係ない……! 迎えに行くって約束したんだ! シンシアがどこにいようと、絶対に会いに行く!)
ティモシーはアメジストのカフスボタンにそっと優しく触れる。
エメラルドの目は、強く真っ直ぐ希望を見据えていた。
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