28 / 94
三章・いきなりですが冒険編
NTR
しおりを挟む
前回のあらすじ。
怪しすぎる宰相さんは、大魔王軍の妖術将軍が入れ替わっていたという、ひねりのない展開だった。
「「「……」」」
わたしもみんなも無言だった。
しばらくして兵士さんたちがヒソヒソと、
「え? この妖術将軍、よりによって宰相と入れ替わったのか?」
「いくらなんでも怪しすぎるだろ。普通 怪しまれない人間を選ぶよな」
「って いうか、変身術を解いても たいして変わんないんだけど」
わたしも中隊長さんと童貞オタク兄貴とオッサンとで、
「大魔王軍って意外と頭悪いんでしょうか?」
「いや、こいつが例外ということかもしれん」
「拙者が戦った魔王は普通に頭が良かったでござるよ」
「というかですね、なぜにですね、この妖術将軍はですね、ペラペラと自分の策略を全部説明したんです?」
妖術将軍はこめかみに血管を浮き上がらせて、頭から蒸気を出しながら、
「貴様らぁ! さっきからバカにしておるが わしの策略を見抜けなかったではないか!」
その剣幕がちょっと怖かったけど、
「いや、だって いくらなんでも怪しすぎて あり得ないだろうという感じで。
って いうか、この場には勇者の他に、海軍の兵士さんたちもいて、全員で百人近くはいるんですが、貴方 一人で相手をするつもりなんですか?」
妖術将軍は不敵な笑みを浮かべ、
「ふん。それぐらい考えなかったと思っておるのか? 策くらい用意しておるわ。
出でよ! 炉歩徒!」
妖術将軍が腕を広げると、その足下に魔方陣が一瞬で描かれ、その魔方陣からなにかが召喚された。
そのなにかに妖術将軍は騎乗し、そして機械的な駆動音を上げる。
勇者の童貞オタク兄貴がそれを見て、
「なんですと!? 炉歩徒を修復したのでござるか!?」
わたしは驚きながら、
「炉歩徒って、どうみてもロボットじゃん!」
なんでファンタジーな世界でロボットなのよ。
まあテレビとか映画とか携帯電話とか平気であるけどさ。
「細かいことはわからぬでござるが、炉歩徒は魔王が拙者を倒すために造った物でござるよ。拙者、結構 苦戦したでござる」
「じゃ、やばいわけ!?」
「安心召されよ。炉歩徒は雷が弱点でござる!
受けよ! 雷光放電!」
魔法の雷がロボットに直撃したけど、外殻にはじかれた。
妖術将軍はいやらしい笑い声を上げる。
「イーヒッヒッヒッ! 修復しただけではない! 改良も施したのじゃ! この新型炉歩徒の外殻は絶縁体でできておる! 電撃は通じんわ!」
そして妖術将軍は炉歩徒の腕をわたしに向けた。
嫌な予感がしたわたしは、咄嗟に横へ飛んだけど、遅かった。
ロボットの指先から小さな針が発射して、わたしの腕に刺さった。
「イタッ」
チクッとした程度の痛み。
だけど、それが むしろ 嫌な予感を掻き立てた。
こういうしょぼい攻撃の場合、たいてい毒が塗ってある。
「イーヒッヒッヒッ! 刺さった! 刺さったな! 刺さりおった!
その表情からすると予想は付いておるようじゃな。その通りじゃ! その針には毒が塗ってある!
特別で強力な発情薬をな!」
「は、発情薬!?」
「その発情薬は特定の人物を対象に効果が発揮される。
特定の人物とは わしの事じゃ。
つまり、しばらくすれば 貴様はわしとしたくてたまらなくなるのじゃ!
勇者どもを始末した後、わしの性奴隷にして じっくり可愛がってやるぞえ!
イーヒッヒッヒッ!」
なによ そのNTRな薬は!
「解毒剤はどこにあるの?!」
「そんな物を持ってきておるわけなかろう! 迂闊に持ってきたりすれば、奪われて解毒されてしまうからのう。
しばらくすれば、貴様はわしの虜になるのじゃ!
ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
わたしは心底ヤバいと思った。
このままでは、前世で童貞オタク兄貴がやっていたNTRエロゲーの展開が、リアルに行われてしまう。
いったん、妖術将軍から距離を取らないと。
「み、みなさん! 妖術将軍の相手をお願いします! わたしは神殿に入って対策を考えますから!」
勇者の童貞オタク兄貴が、
「わかったでござる! ここは拙者たちに任せるでござるよ! 中隊長殿と宮廷魔術師殿はマイシスターに付き添ってくだされ! 迅速に解毒するでござる!」
勇者の指示に、中隊長さんとオッサンは、
「わかった!」
「わ、わかりましたです」
そして わたしたちは神殿の中へ撤退した。
このままNTR展開になってしまうのか!?
悪友はお茶をすすって一息ついた。
「ハフゥー」
「なによ? 話が盛り上がってるところなのに、なんでアンニュイな雰囲気を醸し出してるのよ」
「だって、あんた結局 犯されたわけじゃないんでしょ。処女じゃなくなったら聖女の資格を失って、聖女の力もなくなっちゃうわけじゃん。だったら大魔王討伐なんてできないじゃん」
「……反論の余地のない説明をありがとう」
「まあ、いいわ。話を聞きたいって言ったのは私だし、最後まで聞いてあげる」
「ムカつくわね。クッキー 没収するわよ」
わたしがクッキーの皿を取り上げると、悪友は身体を猫のようにくねらせて
「ああん、私とっても お話 聞きたーい。だからクッキーちょうだーい」
ったく、この女は。
結果がわかっている冒険って盛り上がらないね。
怪しすぎる宰相さんは、大魔王軍の妖術将軍が入れ替わっていたという、ひねりのない展開だった。
「「「……」」」
わたしもみんなも無言だった。
しばらくして兵士さんたちがヒソヒソと、
「え? この妖術将軍、よりによって宰相と入れ替わったのか?」
「いくらなんでも怪しすぎるだろ。普通 怪しまれない人間を選ぶよな」
「って いうか、変身術を解いても たいして変わんないんだけど」
わたしも中隊長さんと童貞オタク兄貴とオッサンとで、
「大魔王軍って意外と頭悪いんでしょうか?」
「いや、こいつが例外ということかもしれん」
「拙者が戦った魔王は普通に頭が良かったでござるよ」
「というかですね、なぜにですね、この妖術将軍はですね、ペラペラと自分の策略を全部説明したんです?」
妖術将軍はこめかみに血管を浮き上がらせて、頭から蒸気を出しながら、
「貴様らぁ! さっきからバカにしておるが わしの策略を見抜けなかったではないか!」
その剣幕がちょっと怖かったけど、
「いや、だって いくらなんでも怪しすぎて あり得ないだろうという感じで。
って いうか、この場には勇者の他に、海軍の兵士さんたちもいて、全員で百人近くはいるんですが、貴方 一人で相手をするつもりなんですか?」
妖術将軍は不敵な笑みを浮かべ、
「ふん。それぐらい考えなかったと思っておるのか? 策くらい用意しておるわ。
出でよ! 炉歩徒!」
妖術将軍が腕を広げると、その足下に魔方陣が一瞬で描かれ、その魔方陣からなにかが召喚された。
そのなにかに妖術将軍は騎乗し、そして機械的な駆動音を上げる。
勇者の童貞オタク兄貴がそれを見て、
「なんですと!? 炉歩徒を修復したのでござるか!?」
わたしは驚きながら、
「炉歩徒って、どうみてもロボットじゃん!」
なんでファンタジーな世界でロボットなのよ。
まあテレビとか映画とか携帯電話とか平気であるけどさ。
「細かいことはわからぬでござるが、炉歩徒は魔王が拙者を倒すために造った物でござるよ。拙者、結構 苦戦したでござる」
「じゃ、やばいわけ!?」
「安心召されよ。炉歩徒は雷が弱点でござる!
受けよ! 雷光放電!」
魔法の雷がロボットに直撃したけど、外殻にはじかれた。
妖術将軍はいやらしい笑い声を上げる。
「イーヒッヒッヒッ! 修復しただけではない! 改良も施したのじゃ! この新型炉歩徒の外殻は絶縁体でできておる! 電撃は通じんわ!」
そして妖術将軍は炉歩徒の腕をわたしに向けた。
嫌な予感がしたわたしは、咄嗟に横へ飛んだけど、遅かった。
ロボットの指先から小さな針が発射して、わたしの腕に刺さった。
「イタッ」
チクッとした程度の痛み。
だけど、それが むしろ 嫌な予感を掻き立てた。
こういうしょぼい攻撃の場合、たいてい毒が塗ってある。
「イーヒッヒッヒッ! 刺さった! 刺さったな! 刺さりおった!
その表情からすると予想は付いておるようじゃな。その通りじゃ! その針には毒が塗ってある!
特別で強力な発情薬をな!」
「は、発情薬!?」
「その発情薬は特定の人物を対象に効果が発揮される。
特定の人物とは わしの事じゃ。
つまり、しばらくすれば 貴様はわしとしたくてたまらなくなるのじゃ!
勇者どもを始末した後、わしの性奴隷にして じっくり可愛がってやるぞえ!
イーヒッヒッヒッ!」
なによ そのNTRな薬は!
「解毒剤はどこにあるの?!」
「そんな物を持ってきておるわけなかろう! 迂闊に持ってきたりすれば、奪われて解毒されてしまうからのう。
しばらくすれば、貴様はわしの虜になるのじゃ!
ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
わたしは心底ヤバいと思った。
このままでは、前世で童貞オタク兄貴がやっていたNTRエロゲーの展開が、リアルに行われてしまう。
いったん、妖術将軍から距離を取らないと。
「み、みなさん! 妖術将軍の相手をお願いします! わたしは神殿に入って対策を考えますから!」
勇者の童貞オタク兄貴が、
「わかったでござる! ここは拙者たちに任せるでござるよ! 中隊長殿と宮廷魔術師殿はマイシスターに付き添ってくだされ! 迅速に解毒するでござる!」
勇者の指示に、中隊長さんとオッサンは、
「わかった!」
「わ、わかりましたです」
そして わたしたちは神殿の中へ撤退した。
このままNTR展開になってしまうのか!?
悪友はお茶をすすって一息ついた。
「ハフゥー」
「なによ? 話が盛り上がってるところなのに、なんでアンニュイな雰囲気を醸し出してるのよ」
「だって、あんた結局 犯されたわけじゃないんでしょ。処女じゃなくなったら聖女の資格を失って、聖女の力もなくなっちゃうわけじゃん。だったら大魔王討伐なんてできないじゃん」
「……反論の余地のない説明をありがとう」
「まあ、いいわ。話を聞きたいって言ったのは私だし、最後まで聞いてあげる」
「ムカつくわね。クッキー 没収するわよ」
わたしがクッキーの皿を取り上げると、悪友は身体を猫のようにくねらせて
「ああん、私とっても お話 聞きたーい。だからクッキーちょうだーい」
ったく、この女は。
結果がわかっている冒険って盛り上がらないね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる