「夢」探し

人魚の話。

┗少女と。

少女は俺が話し終わるまで、目を逸らさなかった。
「その人魚さんの絵はどうなったの？」

目を輝かして聞いてきた。

「売れたよ。大金で」
「売っちゃったんだ……」

残念そうに目線を落とした。

「じゃあ、その工場の国は今もあるの？」
「さぁ。ここからはとてもとても遠～い所だから確かめられないよ」

　俺を伺うように見る。
「本当にあるの？」

「さぁね。ない方が幸せだよ」


俺ははぐらかした。
どうせ君は自分で答えを見つけるんだから。


「絵描きさんは人魚さんの為に、その蛇口を閉めに行こうとはしなかったの？」
「君なら行けるの？」

少女の質問に質問で返した。
俺が答えられる訳ないから、逃げるように。


少女は困ったように笑って言った。

「本当にあったらね。絵描きさんは嘘ついてるかもしれないし。
でも私が人魚さんの友達だったら、私は一人でも蛇口を閉めに行くよ」



強気に笑う彼女。
曇ることのないその笑顔は


どうかその笑顔が闇で消えないように。

笑うことに疲れないように。

平和な世界で幸せに包みこまれますように。「何をじっと見てるの？」


少女がまっすぐに見つめてくる。


それから逃げるかの如く
俺は目を伏せた。



「次はどんな物語がいいかな……」