「夢」探し

篠原愛紀

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奇跡の話。

┗少女と。

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むぅと唇を尖らした少女が俺を睨み付けた。
「絵描きさんったら、なんで最初から否定するの? 奇跡は絶対起こるものなんだよ!」

何を根拠にそんなに自信を持って少女が言うのか分からないけれど、
間違っているのは俺なのは誰もが認めるだろう。

「ちゃんとその男の子には謝った?」

「もう町の中に消えてたんだよ。会えるはずないさ」

「分かった! 絵描きさん奇跡がある事を否定したから、会うのが格好悪いって思ったんだ!」

キャッキャッと少女が無邪気に笑った。

それに何故かとても救われた。

少し肌寒い風が吹いて,墓に供えた花冠がゆれた。

「きっと二人は雪を見ているよ。ずっと」

「二人」で。

少女の思いが伝わってきた。

少女にも奇跡が降り注げば良いのに。

夕日の落ちる海を見つめて
俺は願わずにはいられなかった。

少女もきっと虹を迷わず追いかけるから。

そうしたら俺はまた傷つけるのかな?

これ以上ないと言うほど
―傷つけて……。
―失って……。

灰空の下、誓ったクセに。

「もう日が沈むかもしれないね。まだ帰らないの?」

墓の傍から離れない少女に問う。

「今日はお母さんがお父さんに手紙を出しに行ってて留守なの。だから一人なんだもん」

体操座りをして顔を埋めて、何かに怯えて。

「戦争なんて大っ嫌い」

怒りに震えて。

「もしかして友人も……?」

返答はなくても、それが肯定なのは分かった。

あぁ、見ず知らずのこの少女の大切な人も奪ってしまっていたなんて。
俺にそんな権利無いのに。
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