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神様の話。
神様の話。
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今も『時』の神は一人で、ずっと一人で、彼女の残した大地を守ってる。
狂った様に同じメロディで。
時の神――……。
この世界が生を受けた時と同じくして生まれた、気高くて純粋な魂。
その力でこの世界の『時』を守っていた。
しかし、その力は人々を引き裂く恐ろしい力。
皆に恐れられ、孤独と生きた神。
それが、俺が仕えている神だった。
幾千年、孤独と生きていくと思ってたんだ。
誰も、時の神であるこの人を愛してくれるとは思わなかった。
自分を操れる程の力を持つんだもんね。
支配されるんじゃないかと人々は恐れた。
尊厳的な存在であっても、敬愛的には見られなかったんだ。
そんな一人ぼっちの神の前に、また生をうけた神が現れる。
この星の大地の神である美しい女神。
この人に出会うまで、時の神はずっと一人で生きていくと思ってたんだ。
純粋で真っ直ぐに自分を見て、笑って、触れてくれて、同じ視線でいてくれて、時の神が、女神を愛さないわけはなかった。
孤独は人の弱みに漬け込んで、苦しませて、悲しませて、壊していくものだった。
『それでも、その孤独を打ち負かす力は誰にでもあるわ』
大地の神は優しく呟いた。
貴方が一人で無理なら私がいる、と。
時の神はそんな大地の神を愛した。
初めて分かってくれて、一緒に泣いてくれた。孤独を一緒に乗り越えてくれた。
君と出会えて本当に嬉しい。
時の神の本音がいつもそこにはあった。
あの、大地震が起こるその日まで。
神ってのは、俺らが後になってつけた総称だから。
大地の神だって、生を受けたばかりで力は赤子の様に不安定だったんだ。
彼女は、時の神を愛するあまり力を上手くコントロールできなかったんだ。
孤独を一人で生き抜く事を誰よりも恐れながら、誰よりも傷つきやすい彼を、彼女はいつも心配し傍にいて支えたいと考えてしまったから……
力とのバランスが狂ったんだね。
大地震で3日3晩世界は混沌した。
沢山の大地が痛々しい傷痕を残した。
大地の神は自分の弱い力を恥じ、泣いた。
そして、しばらくの間だけ、と時の神に別れを告げた。
自分の心の中が時の神だけになるのが恐かったから。
また、同じ過ちを犯さないためにも。
不器用ながらも、愛しながら守れる力を手にいれるために。
それでも起きてしまった代償はとても大きかったんだね。
時の神なんかに心を奪われた弱き神など、この星にいらない、
と彼女を亡き者にしようとした人間が現れたんだ。
その時はまだ神は、人間と同じ大地で生活していた。
人間はその大地を『楽園』と呼び、神聖な場所だと足を踏み入れたことはなかった。
だから時の神も、そんな事が起こるとは思わなかった。
異変に気づいて時の神が『楽園』に向かった時には、『楽園』は火の海だった。数十人の人間が、火をつけ燃やしながら大地の神の元に向かったのだ。
大地震で大切な人を失った代償を、大地の神に与えるために。
その人間は、笑っていた。
時の神の声など聞きもしなかった。
聞こえていなかった。
笑いながら……銀色の輝きを放ちながら、剣は大地の神の胸を貫いた。
世界の『時』は狂いだした。
朝かと思えば夜になり、雨かと思えば嵐になったり晴れになったり。
秋の次に春が来て夏がきてまた秋がきたり冬が続いたり
砂漠化が進む地域に雨が止まない地域。
何十年も早く年が経ってゆく町に時間が止まってしまった町。
一生夜のままな町。
統一性も決まったパターンも存在しない。
混沌とした世界。
それを、止めたのは混沌とした世界から生まれた神だった。
その神が何の神なのかは今は伏せておくね。
だって彼女は今はいないから。
誰にも会いたくないと、夜の十字架の神みたいに『時』に関与されない所に生きているから。
そんな彼女が言ったんだ。
『女神が守りたいと泣いている大地を、貴方が壊して何が意味があるの?
何が得られるの? ただ女神が傷つくだけなのに』
傷つけたのを赦さないと言いながら、誰よりも深く傷つけているのに、と。
我に還った時の神は、胸に抱いた大地の神を見つめた。
彼女の傷は癒えていたけれど
彼女は哀しそうな顔で時の神を見つめて
『やめて……』
と泣いた。時の神は、大地の神へ伝える言葉が見つからなかった。
言い訳をした所で、君との距離は縮まないから。
『もう傍に要られないのね……』
それでも、貴方が壊れるのは心配だわっと。
彼女は楽園に生えるただ一本の大木になった。
貴方がどこに居ても、見える場所で、
どこに居ても
分かる場所に。
傍に居られなくても、
心だけは貴方に預ける。
そこで、世界も貴方も見守る事にします。と
時の神が彼女を止める事は赦されなかったし、
止める術を持たなかった。
ただ彼女の愛に泣くだけしかできない、つまらない生き物だと。
だから、彼は誓った。
『では、私は大地の神とこの地を守る事にします。大地の神を傷つけないように。誰も傷かないように』
二人を見守っていた神は聞いた。
貴方はどこに行くのかと……。
『――…もう誰も、どんなものも来ない場所へ。
煩わしい世界とは関わらない遮断された場所へ』
もう彼女に触れる事ができないなら、
泣きつかれるまで泣いて、それでも彼女と愛した思い出を大切にするために。
この思い。
この痛み。
この大罪。
全て忘れないように繰り返し歌いながら、
君との思い出を永遠にできるその時まで。
涙につかるほどの苦しみと忘れるために。
ただ、
狂ったように
歌を歌い続ける……。
狂った様に同じメロディで。
時の神――……。
この世界が生を受けた時と同じくして生まれた、気高くて純粋な魂。
その力でこの世界の『時』を守っていた。
しかし、その力は人々を引き裂く恐ろしい力。
皆に恐れられ、孤独と生きた神。
それが、俺が仕えている神だった。
幾千年、孤独と生きていくと思ってたんだ。
誰も、時の神であるこの人を愛してくれるとは思わなかった。
自分を操れる程の力を持つんだもんね。
支配されるんじゃないかと人々は恐れた。
尊厳的な存在であっても、敬愛的には見られなかったんだ。
そんな一人ぼっちの神の前に、また生をうけた神が現れる。
この星の大地の神である美しい女神。
この人に出会うまで、時の神はずっと一人で生きていくと思ってたんだ。
純粋で真っ直ぐに自分を見て、笑って、触れてくれて、同じ視線でいてくれて、時の神が、女神を愛さないわけはなかった。
孤独は人の弱みに漬け込んで、苦しませて、悲しませて、壊していくものだった。
『それでも、その孤独を打ち負かす力は誰にでもあるわ』
大地の神は優しく呟いた。
貴方が一人で無理なら私がいる、と。
時の神はそんな大地の神を愛した。
初めて分かってくれて、一緒に泣いてくれた。孤独を一緒に乗り越えてくれた。
君と出会えて本当に嬉しい。
時の神の本音がいつもそこにはあった。
あの、大地震が起こるその日まで。
神ってのは、俺らが後になってつけた総称だから。
大地の神だって、生を受けたばかりで力は赤子の様に不安定だったんだ。
彼女は、時の神を愛するあまり力を上手くコントロールできなかったんだ。
孤独を一人で生き抜く事を誰よりも恐れながら、誰よりも傷つきやすい彼を、彼女はいつも心配し傍にいて支えたいと考えてしまったから……
力とのバランスが狂ったんだね。
大地震で3日3晩世界は混沌した。
沢山の大地が痛々しい傷痕を残した。
大地の神は自分の弱い力を恥じ、泣いた。
そして、しばらくの間だけ、と時の神に別れを告げた。
自分の心の中が時の神だけになるのが恐かったから。
また、同じ過ちを犯さないためにも。
不器用ながらも、愛しながら守れる力を手にいれるために。
それでも起きてしまった代償はとても大きかったんだね。
時の神なんかに心を奪われた弱き神など、この星にいらない、
と彼女を亡き者にしようとした人間が現れたんだ。
その時はまだ神は、人間と同じ大地で生活していた。
人間はその大地を『楽園』と呼び、神聖な場所だと足を踏み入れたことはなかった。
だから時の神も、そんな事が起こるとは思わなかった。
異変に気づいて時の神が『楽園』に向かった時には、『楽園』は火の海だった。数十人の人間が、火をつけ燃やしながら大地の神の元に向かったのだ。
大地震で大切な人を失った代償を、大地の神に与えるために。
その人間は、笑っていた。
時の神の声など聞きもしなかった。
聞こえていなかった。
笑いながら……銀色の輝きを放ちながら、剣は大地の神の胸を貫いた。
世界の『時』は狂いだした。
朝かと思えば夜になり、雨かと思えば嵐になったり晴れになったり。
秋の次に春が来て夏がきてまた秋がきたり冬が続いたり
砂漠化が進む地域に雨が止まない地域。
何十年も早く年が経ってゆく町に時間が止まってしまった町。
一生夜のままな町。
統一性も決まったパターンも存在しない。
混沌とした世界。
それを、止めたのは混沌とした世界から生まれた神だった。
その神が何の神なのかは今は伏せておくね。
だって彼女は今はいないから。
誰にも会いたくないと、夜の十字架の神みたいに『時』に関与されない所に生きているから。
そんな彼女が言ったんだ。
『女神が守りたいと泣いている大地を、貴方が壊して何が意味があるの?
何が得られるの? ただ女神が傷つくだけなのに』
傷つけたのを赦さないと言いながら、誰よりも深く傷つけているのに、と。
我に還った時の神は、胸に抱いた大地の神を見つめた。
彼女の傷は癒えていたけれど
彼女は哀しそうな顔で時の神を見つめて
『やめて……』
と泣いた。時の神は、大地の神へ伝える言葉が見つからなかった。
言い訳をした所で、君との距離は縮まないから。
『もう傍に要られないのね……』
それでも、貴方が壊れるのは心配だわっと。
彼女は楽園に生えるただ一本の大木になった。
貴方がどこに居ても、見える場所で、
どこに居ても
分かる場所に。
傍に居られなくても、
心だけは貴方に預ける。
そこで、世界も貴方も見守る事にします。と
時の神が彼女を止める事は赦されなかったし、
止める術を持たなかった。
ただ彼女の愛に泣くだけしかできない、つまらない生き物だと。
だから、彼は誓った。
『では、私は大地の神とこの地を守る事にします。大地の神を傷つけないように。誰も傷かないように』
二人を見守っていた神は聞いた。
貴方はどこに行くのかと……。
『――…もう誰も、どんなものも来ない場所へ。
煩わしい世界とは関わらない遮断された場所へ』
もう彼女に触れる事ができないなら、
泣きつかれるまで泣いて、それでも彼女と愛した思い出を大切にするために。
この思い。
この痛み。
この大罪。
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ただ、
狂ったように
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