「夢」探し

篠原愛紀

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　再会、したのにね。

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誰かが歌っている。

泣き声の様に悲しくて寂しげに。

壊れたｵﾙｺﾞｰﾙの様に同じメロディで。

「―――ぇ」

私は探さなきゃいけなくて。

「――ねぇ」

目を覚まさなきゃいけなくて。

「ねぇってば！」

私は静かに瞼を上げた。　　
「ここ、どこ？」
やっとその一言が口から出た。

ズキッと頭の奥が痛んだ気がした。

眠りから覚め、目を開いて

私はその場景に愕然とした。

「やっと起きたね」

目の前に男の人が立っていた。

顔は髪の毛に隠れていて、口元しか見えない。

その男の人はﾆﾔﾘと口元を動かした。

「ようこそ。迷子のお客さん」

その瞬間、視界がﾊｯと明るくなった気がした。

「時の果てに――」

両手を広げてクスクス笑う。

時の果て？

迷子―…？
私が呆然と立ちすくんでいると、
目の前の人はため息をついて言った。

「名前、覚えてる？」

当たり前でしょ。私の名前は――……。

「どうやってここに来たか思い出せる？」

目の前の人の質問に答えるとしたら

全て答えはノーだ。

どうして？
名前が思い出せないの？
何故、私はここにいるの？

頭が痛む。
落ち着いて考えようと思っても何も浮かばない。

「せっかく再会、したのにね」

目の前の男の人が寂しげに笑った。

「ここは―…どこですか？」

男の人は少し考えてから、また両手を広げた。

「ここは、俺が壊した『時』の果て。君は『時』を無くして、ここに迷いこんだ」

そう言ってそのボヤけた空間にその男の人は浮かんだ。

上も下も分からない空間に。

朝日が昇る前の薄暗い空の様な空間に。

私もその空間に漂っているのだと分かった。

この空間には壊れた建物が漂っていたり根本が見える木や
人が一人座れるぐらいの大きさの地面がポツポツと浮いている。

「君は早く自分の『時』を見つけなければいけない」

ゴゴゴォォォと深く響く音がする。

「時って？　どういう事？」

ゴゴゴォォォ

その音はどんどん近いてくる。

「君の生きている『時』間。君の存在を守っている『時』間だ」

更に深く響く音。

張り裂けそうな恐怖が胸を締め付ける。

「怖がらないで。また会えるから」

そっと優しく私の髪を撫でる。

「俺は『時』の番人。この壊れた『時』の果てを守る者」

名残惜しげに髪の毛から手を離す。

「だから急いで探して。君の『時』が果てに吸い込まれる前に」

髪に隠れて表情は見えないけど、その人は確かに心配そうに笑っていた。

そして私を深く響く音が捕らえる。

『時』の番人と名乗る人の顔が遠ざかる。昨日までの自分を思い出せない。

名前さえ忘れてしまった。

そんな私に一人で何ができると言うの?

時の果てって何？

何をすればいいの？

私の生きた時間は確かに存在するの？

何も聞けないまま、何も掴めないまま、私は一人でどこへ行くの……？

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