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「時」探し
既視感
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俺の目の前に立ちはだかる少女。
俺を守ろうと両手をいっぱい広げて。
あぁ―…
俺はこの場面を知っている。
再会、したかったんだ。
この日の君に。「どけよ。女!
殺されてぇ…」
最後まで言い終わる前に、男は止めた。
当たり前だ。
妹と同じ顔だからな。
妹が幼い時に戦争に出て、何十年も経った今なら驚いてもしょうがない。
「お前…」
「人殺しはお兄ちゃんも一緒じゃない」
今にも泣き出しそうな顔で、
震えを押さえて、大好きな兄に浴びせる残酷な言葉。
あぁ―…
俺は君だけには、君の純粋な魂だけには、
そんな辛い、心が痛む発言はさせたくない。
守られた、綺麗な世界で、汚れを知る事なく生きていってくれたなら……
「剣に血がついてるじゃない!
その血は私たちと同じ赤い血じゃないの?」
泣きそうにも、
怒っているようにも、
哀しんでいる様にも見える君の表情。
「番人さんは化物じゃないよ。
同じ赤い血が流れている同じ人間だよ」
そして、哀しげに瞳を揺らしながら。
「それに…番人さんは……
お兄ちゃんみたいに……」
傷ついた少女の心から、溢れてゆく涙。
「お兄ちゃんみたいに笑いながら…人を殺したいなんて言ってないよ?」
傷つきながらも、
そう言ってくれた。
あぁ……
なんで君はそんなに……
「誰よりも優しい人間、なんだから」
俺から言葉を奪う程に君は……君、に出会うまでの時間が全て無駄に感じてしまう程に……
色鮮やかじゃなければ、
決して面白くも楽しくもなかった。
後悔と苦しみの輪。
「う…そ……だろ?」
こんな、温かさ、
俺は知らない。
「やべ……」
俺………
「泣いてるんだけど」
冗談ぽく言わなければ叫びそうな程に。
だって
こんな温かい涙、俺は知らない。
こんなに優しい涙があるなんて、俺は知らない。
――知らなかったんだよ。
涙が地面に落ちる音が、一粒一粒、俺の脳に響くんだ。
ずっとずっとずっと言って欲しかった。
俺を助けてくれたお婆様では響かない。
俺が全て初めて話した幼い少女でも響かない。
同じ魂、でも響かない。
君じゃなければ響かない。
だって君が初めてなんだ。
東の国の王女と、その兵たちに囲まれて、
死にかけて、諦めて、
化物だった俺を
必死になって人を掻き分けて、
自分より強そうな兵たちを押し退けて、
やめて、と
助けてくれたのは。
化物だと、罵られた俺に、無償の優しさをくれたのは、
君が初めてだったから。
だから、君じゃなければいけなかった。
君に、人間である俺の『存在』を認めて欲しかったから。
俺は温かい涙をゆっくり手で拭った。
「俺は貴方に問いたい」
まだ頬の温もりを感じながら、俺は男を睨みつけた。
「戦争は楽しいものだったろうか?」
まだ、少女に言われた言葉にショックを隠しきれていない男は、言葉を発しなかった。
「貴方の妹は、ずっとずっと貴方の帰りを待ってたと思いますよ」
港に船が停まる度に、踊るようにはしゃぎながら、少女は待っていただろう。
「貴方が人を殺して笑って帰るより、貴方が早く帰ってきて横で笑ってくれた方がどんなに嬉しかったか…‥」
過ぎた『時』を俺が責めるのはおこがましいけど、でも、大好きなお兄ちゃんだと、少女は語ってくれたから。
だから伝えなければいけない。
「そんなに血走った目のままでその面であの少女の前に帰らないで下さい」
いつの間にか、少女は俺の横に立っていて、静かに泣いていた。
君にも大好きなお兄ちゃんでもあるからね。
哀しいんだね。
少女はどうしようもなく泣き続け、男は言葉を失い佇み、俺は地面に踞っていた。
俺を守ろうと両手をいっぱい広げて。
あぁ―…
俺はこの場面を知っている。
再会、したかったんだ。
この日の君に。「どけよ。女!
殺されてぇ…」
最後まで言い終わる前に、男は止めた。
当たり前だ。
妹と同じ顔だからな。
妹が幼い時に戦争に出て、何十年も経った今なら驚いてもしょうがない。
「お前…」
「人殺しはお兄ちゃんも一緒じゃない」
今にも泣き出しそうな顔で、
震えを押さえて、大好きな兄に浴びせる残酷な言葉。
あぁ―…
俺は君だけには、君の純粋な魂だけには、
そんな辛い、心が痛む発言はさせたくない。
守られた、綺麗な世界で、汚れを知る事なく生きていってくれたなら……
「剣に血がついてるじゃない!
その血は私たちと同じ赤い血じゃないの?」
泣きそうにも、
怒っているようにも、
哀しんでいる様にも見える君の表情。
「番人さんは化物じゃないよ。
同じ赤い血が流れている同じ人間だよ」
そして、哀しげに瞳を揺らしながら。
「それに…番人さんは……
お兄ちゃんみたいに……」
傷ついた少女の心から、溢れてゆく涙。
「お兄ちゃんみたいに笑いながら…人を殺したいなんて言ってないよ?」
傷つきながらも、
そう言ってくれた。
あぁ……
なんで君はそんなに……
「誰よりも優しい人間、なんだから」
俺から言葉を奪う程に君は……君、に出会うまでの時間が全て無駄に感じてしまう程に……
色鮮やかじゃなければ、
決して面白くも楽しくもなかった。
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「う…そ……だろ?」
こんな、温かさ、
俺は知らない。
「やべ……」
俺………
「泣いてるんだけど」
冗談ぽく言わなければ叫びそうな程に。
だって
こんな温かい涙、俺は知らない。
こんなに優しい涙があるなんて、俺は知らない。
――知らなかったんだよ。
涙が地面に落ちる音が、一粒一粒、俺の脳に響くんだ。
ずっとずっとずっと言って欲しかった。
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同じ魂、でも響かない。
君じゃなければ響かない。
だって君が初めてなんだ。
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死にかけて、諦めて、
化物だった俺を
必死になって人を掻き分けて、
自分より強そうな兵たちを押し退けて、
やめて、と
助けてくれたのは。
化物だと、罵られた俺に、無償の優しさをくれたのは、
君が初めてだったから。
だから、君じゃなければいけなかった。
君に、人間である俺の『存在』を認めて欲しかったから。
俺は温かい涙をゆっくり手で拭った。
「俺は貴方に問いたい」
まだ頬の温もりを感じながら、俺は男を睨みつけた。
「戦争は楽しいものだったろうか?」
まだ、少女に言われた言葉にショックを隠しきれていない男は、言葉を発しなかった。
「貴方の妹は、ずっとずっと貴方の帰りを待ってたと思いますよ」
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「貴方が人を殺して笑って帰るより、貴方が早く帰ってきて横で笑ってくれた方がどんなに嬉しかったか…‥」
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だから伝えなければいけない。
「そんなに血走った目のままでその面であの少女の前に帰らないで下さい」
いつの間にか、少女は俺の横に立っていて、静かに泣いていた。
君にも大好きなお兄ちゃんでもあるからね。
哀しいんだね。
少女はどうしようもなく泣き続け、男は言葉を失い佇み、俺は地面に踞っていた。
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