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それからそれから。
それからそれから。五
しおりを挟むお礼の前に、ついつい毒づいてしまう。
私の反応にどきりとしたのか、笑顔が一瞬崩れ去る。これは、まさか。
「あれほど言ったのに、もしかしてまた玩具も買ってしまいました!?」
私が休みの日に、一緒に赤ちゃん用品を買いだししていたが最近はお腹が重くて長距離の車の乗車とかできなかった。
その間も、デイビーは仕事帰りや休日に赤ちゃんの玩具やベットやら自動ゆりかごやら買っていたようで。
久しぶりに行ったデイビーの家は、未開封の玩具や洋服、色んなインテリアで溢れかえっていたのに。
「違うよ、今日は寒くないように子供用のポンチョを」
「この子が生まれる時はもう春ですよ。寒くありません」
いくら家が広くても、赤ちゃん用の部屋の壁際には玩具入れ三つにぎゅうぎゅうに玩具が入っている。
しかも絶対良い玩具ばかりだし、このカシミアのストールだって絶対にブランド品だ。
「今度相談なしで買ったら、もうおやすみなさいのキスしませんから!」
「そんな」
蒼ざめるデイビーの背中を、人差し指で何度もツンツンつついて威嚇しておく。本気だぞ、と。
隙あらばいちゃいちゃしたがる彼にはこれが一番ダメージが大きいのはもう分かっている。
愛情表現豊かな彼には、これぐらいの戒めは必要なはずだ。
愛情表現も無駄使いも大胆で私一人があたふたで。
それでなくても、デイビーのお給料の明細とか見せられても、それが多いのか少ないのか良く分からないし、人に簡単に言える相談ごとではない。
前に一度幹太さんに相談したら、管理できないなら任せた方がいいとまで言われたけど。
「お母さん、デイビーったら」
居間へ早歩きで向かいながら、母に注意してもらおうと大声でそう言う。
デイビーは大きな身体を小さくして私の後ろを着いてきている。
「何です、はしたない。夕食なら、今、火を入れて頂いています」
背筋をぴんと伸ばし、首元を窮屈そうに閉めた着物を着て、冷たい言葉は相変わらずなのだけど。
母の前には、色鮮やかな反物が。
「お母さん、それは?」
母が着るには少し派手というか元気過ぎる色ばかりだけど。
「男の子だったら美一さんの着物から色々作ってあげられるけど、女の子のは貴方たち二人がもう着汚していますから」
「つまり、買ったんですね……」
ゴホンと咳払いし、母は落ち着かない様子で頷く。
この前も、生まれて一か月してお参りする時の着物だとかに、と私やデイビーの着物もオーダーメイド中なのに。
「お義母さんも、美麗のキスが貰えなくなりますね」
「デイビー!」
「お待たせいたしました」
ナイスタイミングで現れた神のような立花さんと美鈴が夕食を運んでくれた。今日のメニューは、いつものしっかりした和食ではないので美鈴作のようだ。
私とデイビーの前に、小さな土鍋がそれぞれに並ぶ。
「今日は、豚肉と白菜のミルフィーユだよ。私の自信作!」
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