とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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三、当日×材料

三、当日×材料⑥

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 定時に会社から出ると、空はすっかり真っ暗で星が輝いている。

 駅までの道のりも、枯れた木々はチカチカと様々な色の電球がつけられイルミネーションの一部になっている。
 吐く息が白くなると、途端に寒く感じるから単純な思考回路だと思う。

 クリスマスも定時で帰れるけど、喬一さんはどうだろう。

 正直に言うと、彼の手の込んだ御馳走は楽しみだ。
 絶対にチキンから手作りしそうだし。

 彼は和風の料理の方が得意らしいし、仕込みや前日から味付けできるからと好んでいる。

 カレールーだってルーを買わず手作りだし。
 でも絶対に、今の仕事の忙しさで毎日手の込んだ料理は、負担だと思うんだけどなあ。

 私が少し手伝えればいいけど、彼は一人で作りたいと言っていたので、いい案は浮かばない。

 せめて、朝ご飯は私が作るとか?
 色々と考えながら家の門を開けると、寝室に明かりがついているのが見える。
 今日は早い。嬉しくて私も急いで家の中に入った。
「喬一さん」
 二階へ上がるとき、リビングからいい匂いがしてきた。

 この匂いは肉じゃがだ。昨日、おばあちゃんが送ってきた土のついた野菜に感激していたから何を作ってくれるのかなってちょっと楽しみだったんだ。

「ああ、おかえり。インターホンを押したら迎えに行ったのに」
「ただいまです。いえ。灯りが寝室だけだったから」

 彼がベットサイドのテーブルに眼鏡を置くと、目じりを押さえた。
 テーブルには数冊の本。
 でも服は、いつも寝るときのラフな格好だ。

「眠ってたんですか?」

「誰かさんが俺の睡眠不足を心配してたんでね。ソファではなくちゃんと布団で寝たよ」

 彼が布団をめくって、自分の隣をポンポンと叩く。
 その仕草に胸が高鳴りつつも、帰って来たばかりの私は大きく首を振る。

「久しぶりに一緒に寝れそうだな、紗矢」
「やったぁっ」

 幸せすぎる。急いでドアを開けて寝室から出てしまった。

 お風呂に入ったのか、ふわんと漂ってくる喬一さんの匂いも心臓が止まりそうなほど甘くて、驚いた。
 一日中、彼の忙しさに悩んでいたのに、あんなふうに言われたら抱き着いてしまいそうで危なかった。


「紗矢―」
「あの……その」
 不思議そうな顔をして彼が出てきたので、私はバックで彼の甘い言葉や雰囲気をガードしつつ、尋ねた。
「今日は、沢山一緒に居られるでしょうか」
「まあ、そうだな。緊急オペや救急車が四台一斉に来たりはしなければ」

 つまり今は休みではなく、自宅待機日なんだ。
 でも、言わなければ。
 お弁当のこと?
 一緒に居たいこと?
 仕事が忙しいのに料理を無理してないかなってこと?

 聞きたいこと、言いたいことが沢山あるのに、彼の優しい笑顔を見たら上手く言えなくて慌ててしまう。

「その……私たち、新婚じゃないですか」
「そうだな」
「でも、喬一さん、ソファで寝るぐらい忙しいじゃないですか」
「学会前だったから。でも準備は終わったよ」
 近づいてくる彼が、ガードしていたカバンを強引に奪うと私の顔を見て、ククッと笑う。
「そんな顔しないで。我慢できなくなるだろ」
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