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三、当日×材料
三、当日×材料⑤
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ここまで生活リズムが合わないとは思わなかった。
全く片付かなかった段ボールの山に納得してしまう。
「そりゃああんな若いのに開業医なんてしてるんだから、忙しいでしょ。でも新婚の蜜月はもっと一緒に居たいよねえ」
うんうん、とカツ丼を食べている小春の逞しさを見習いたい。
あんなにハムスターみたいにカツ丼を頬張っている彼女は合コンでは『お酒弱くて……』とお洒落な酎ハイを飲む。私と二人の時は、生ジョッキのくせに。
「私からアドバイスするとしたら」
「うんうん」
「もっと甘えたらいいと思う」
「えー! それは無理だって。あんな忙しい人に甘えたら、余計疲れるでしょ」
睡眠不足にさせて体を壊したら申し訳ないし、邪魔したらいけない。
「全然。あんたは甘えるのが下手というか、男性に距離を置きすぎだったから遠慮しいとおもうのよね。甘えて、寂しいって言えば、絶対にもっとあんたとの時間を作ってもらえると思うよ」
う。
確かに、彼は私に甘い。私が甘えたら喜んでくれるとは思う。
でも無理をさせるという結果には変わらない。
「まあ、古舘さんみたいにクールでちょっと近づきがたい人に甘えるのは難しいよね」
「んん? クール?」
「クールって言うかちょっと冷たいイメージ。患者さんに説明するときも義務的っていうか無機質っていうか無表情? 仕事中は全然笑わないで、ピリピリしてるって友達が言ってたわ」
「うそ、それ誰?」
私の知ってる彼は、兄の勉強を教えている時も、私に話しかけてくれる時も柔らかい笑顔を浮かべてくれる人だ。
クールって言うより、目じりから優しさがにじみ出ているというか。
「うわ。あんたの前だけデレデレってこと? ストイックで神経質そうだけど、お嫁さんには溺愛ってか。うらやましい」
本気でうらやましいと、小春の顔が険しくなる。
えー。そんな、確かにストイックだけど、喬一さんは冷たくないというか、甘すぎると思うけどな。
上手く言えない分、頬が熱くなってしまったので、お茶を飲む。
「ふーん。まああんたには優しいってことは安心よね。思う存分甘やかされてこい」
「参考にならないけど、一応、落ち着いてきたら言ってみる。ありがとう」
せめて私のお弁当を止めたら、楽になるんじゃないかなって思う。
こんな温かいままお弁当を食べれるのは幸せだけど、負担にだけはなりたくない。
「そういえば、社長が私にもっと仕事を覚えてもらうかもしれないって言ってきたわ」
「え、なんでお兄ちゃん――じゃない社長が?」
「知らないけど、結婚したあんたが産休なり寿退職した後釜が欲しいんじゃない? 私だって玉の輿寿退社するのに! 酷いよね」
確かに。兄は、無理やり小春主宰の合コンに参加させられそうになって、小春の婚活パワーに圧倒されていたから、彼女の本気は知っているはず。
私ではなく、小春に事務の仕事を頼むということは、私はお兄ちゃんの秘書に戻るのか、はたまた新しい売買の仕事の方へ回るのか。
父は『さっさと退職しろ』と孫の名前は俺がつける、とか勝手なことを言っていた。
自分が手を広げたせいで私と兄がフォローしてるのに、と軽い殺意が湧いたけど、我慢したと言うのに。
親というものは勝手なものだ。
それに事務は、忙しいけど体制さえ整ってくれたら仕事も落ち着くし、今も定時に帰れるぐらいには良い部署だ。別に辞めるほどではない。
結婚しても当然、辞めるつもりはなかったけど、辞めてあの家を片づけるのに手を回したら彼の負担が減るのだろうか。
お弁当の中身は全て無くなったが、私の悩みは全く減ってはくれなかった。
全く片付かなかった段ボールの山に納得してしまう。
「そりゃああんな若いのに開業医なんてしてるんだから、忙しいでしょ。でも新婚の蜜月はもっと一緒に居たいよねえ」
うんうん、とカツ丼を食べている小春の逞しさを見習いたい。
あんなにハムスターみたいにカツ丼を頬張っている彼女は合コンでは『お酒弱くて……』とお洒落な酎ハイを飲む。私と二人の時は、生ジョッキのくせに。
「私からアドバイスするとしたら」
「うんうん」
「もっと甘えたらいいと思う」
「えー! それは無理だって。あんな忙しい人に甘えたら、余計疲れるでしょ」
睡眠不足にさせて体を壊したら申し訳ないし、邪魔したらいけない。
「全然。あんたは甘えるのが下手というか、男性に距離を置きすぎだったから遠慮しいとおもうのよね。甘えて、寂しいって言えば、絶対にもっとあんたとの時間を作ってもらえると思うよ」
う。
確かに、彼は私に甘い。私が甘えたら喜んでくれるとは思う。
でも無理をさせるという結果には変わらない。
「まあ、古舘さんみたいにクールでちょっと近づきがたい人に甘えるのは難しいよね」
「んん? クール?」
「クールって言うかちょっと冷たいイメージ。患者さんに説明するときも義務的っていうか無機質っていうか無表情? 仕事中は全然笑わないで、ピリピリしてるって友達が言ってたわ」
「うそ、それ誰?」
私の知ってる彼は、兄の勉強を教えている時も、私に話しかけてくれる時も柔らかい笑顔を浮かべてくれる人だ。
クールって言うより、目じりから優しさがにじみ出ているというか。
「うわ。あんたの前だけデレデレってこと? ストイックで神経質そうだけど、お嫁さんには溺愛ってか。うらやましい」
本気でうらやましいと、小春の顔が険しくなる。
えー。そんな、確かにストイックだけど、喬一さんは冷たくないというか、甘すぎると思うけどな。
上手く言えない分、頬が熱くなってしまったので、お茶を飲む。
「ふーん。まああんたには優しいってことは安心よね。思う存分甘やかされてこい」
「参考にならないけど、一応、落ち着いてきたら言ってみる。ありがとう」
せめて私のお弁当を止めたら、楽になるんじゃないかなって思う。
こんな温かいままお弁当を食べれるのは幸せだけど、負担にだけはなりたくない。
「そういえば、社長が私にもっと仕事を覚えてもらうかもしれないって言ってきたわ」
「え、なんでお兄ちゃん――じゃない社長が?」
「知らないけど、結婚したあんたが産休なり寿退職した後釜が欲しいんじゃない? 私だって玉の輿寿退社するのに! 酷いよね」
確かに。兄は、無理やり小春主宰の合コンに参加させられそうになって、小春の婚活パワーに圧倒されていたから、彼女の本気は知っているはず。
私ではなく、小春に事務の仕事を頼むということは、私はお兄ちゃんの秘書に戻るのか、はたまた新しい売買の仕事の方へ回るのか。
父は『さっさと退職しろ』と孫の名前は俺がつける、とか勝手なことを言っていた。
自分が手を広げたせいで私と兄がフォローしてるのに、と軽い殺意が湧いたけど、我慢したと言うのに。
親というものは勝手なものだ。
それに事務は、忙しいけど体制さえ整ってくれたら仕事も落ち着くし、今も定時に帰れるぐらいには良い部署だ。別に辞めるほどではない。
結婚しても当然、辞めるつもりはなかったけど、辞めてあの家を片づけるのに手を回したら彼の負担が減るのだろうか。
お弁当の中身は全て無くなったが、私の悩みは全く減ってはくれなかった。
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