とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

文字の大きさ
32 / 63
四、蜜月×調理

四、蜜月×調理⑤

しおりを挟む


 クリスマス前日。会社のロビーにも大きなクリスマスツリーが飾られ、次の日は社員全員に十二センチのミニ・ブッシュドノエルが配布される。去年、上に乗っている苺が酸っぱかったと兄に言ったら、今年はホワイトチョコレートの天使が三体乗っている。

 今日は、小春が定時で帰っていった。肉食系小動物美女の彼女は、見事に恋人をクリスマスまでにゲットしたらしい。小躍りしていた。

小春は仕事もできるし可愛いしで、社内の評判も悪くないのに、社内恋愛は面倒くさいと合コンばかりしていた。

 そのせいで、小春の恋人ゲットに泣く男性社員も少なくないとか。

「良かった。まだ残ってたか。内線しようか悩んだんだが」
「お兄ち――社長」

 兄が秘書を引きつれて、事務所に顔を出す。
 最上階で、新しい部署の書類作成に追われていた兄が、下界に何の用だろう。

「ちょっとこの書類なんだが」
「はい」
 まだ部署内には数人の人が残っていたので、隅の方へ連れていかれ、書類を覗き込む。
 けれど書類はさきほど会議で使われていたが、私とは全く関わりのない内容だった。
 お兄ちゃんは小声で、仕事の振りをしながら違う話題を振ってくる。

「お前、正月はうちに帰んの?」
「うん。喬一さんがうちに来るのは久しぶりだなって楽しみにしてたよ」
「お前なあ。うちなんて何時でも来れるだろ。喬一さんの家を優先しとけよ」
「お兄ちゃんは、喬一さんの家の事情を知らないの?」

 こそこそと小さな声で耳打ちすると、微妙な顔をした。
 知っているからこそ心配しているようだった。

「お前が行かないで、親戚たちからの心象が更に悪くならないか? 喬一さんはお前に隠して自分だけで対象しようとしてるように思えるけど」
「じゃあ元旦に挨拶だけ行けるか聞いてみるね」

 私も結婚して初めてのお正月は行かないのに少し戸惑いはあった。
 でも彼と彼のお姉さんのことを想うと強くも言えないし。
 一応確認だけしとこう。

「あともう一つ」
「まだあるの?」
「……喬一さん、クリスマスが誕生日だからな」
「え!」
「なんで嫁が知らないんだよ。馬鹿か」


 ファイルで頭を軽くたたかれた。でも寝耳に水だ。

 というか、私は普段から全く彼のことを知らなさすぎる。絶対に喬一さんは、教えていないけど私の誕生日とか把握してそう。下手したら、うちの家族全員の誕生日を把握してるかも。
 でもでも。だから、私にクリスマスにケーキをお願いしたのかもしれない。

「社長、ありがとうございます。急用を思い出したので帰ります」
「ああ。さっさと行け。給料日前に俺の家に入り浸ったり、課金額を監視されないように、旦那を大切にしろ」

 追い払うようにロッカールームに進行方向を決定された。本当にうちの兄は、気遣いもできて無駄に美形で、完璧だ。兄妹なのに私はどうしてこうも、いい加減で周りに気遣いもできない馬鹿なんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...