とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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五、溺愛×賞味

五、溺愛×賞味③

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――

 来年、もし秘書課に戻ったとしても妊娠したら産休に入る。私の穴を誰かが埋めなきゃいけなくなる。
 そもそもまだ妊娠してないのに、なにを考えてるのかと言われるが、やはり今、秘書課に戻るのは良くないわけで。

 かといってある程度、事務職も新卒の社員が育ったら私がいない方が自由にできると思う。
 まだ先の話だと思っていたから、小春の発言に頭を殴られた。
 他人事ではない。ほかの人にも迷惑をかけてしまう私自身の問題だと。

「で、色々考えてたら熱が出たの?」

 仕事で何時間も書類と向き合っていたら微熱が出た、ということにしてみた。

 家に帰ってからもちょっと怠くて、テーブルに突っ伏していたら、少しだけ熱が高かっただけなのだけど、帰宅した喬一さんの手際が流石だった。

「すいません。仕事でも家でも患者の相手させて」
「……紗矢は患者じゃないだろ。俺が服を脱がそうか?」

 ベットまで運ばれ、急いで逃げるようにパジャマに着替えた。

「でも何時間もパソコンで仕事したならしっかり休憩しろよ。今日は簡単におかゆにしようかな」
「……ちょっと嬉しそうですね」

シュルっとネクタイを解きながら、いそいそと着替えているように見える。

「出汁から作るおかゆで、看病してみたかったんだ。紗矢の様子だと風邪じゃなくて知恵熱だと思うけど、作らせて」

「うう。ベットで寝てたらいい匂いが下から漂ってくるのって拷問に近いです」
「でも少しは寝てな。寝たら下がるはずだから」

 ガシガシと頭を撫で、彼は飛ぶようにキッチンへ降りて行った。
 昆布かな。昆布と鶏肉、あと冷蔵庫に祖母が贈ってきた蜂蜜梅干しがあるから梅干しもつけてくれそう。

「……」

 少しだけ寝て、起きたら今後のことを勇気を出して聞いてみようかな。
 でも喬一さんの仕事に影響は全くないだろうから、相談するなら兄のほうか。

 でも私に甘い兄のことだから気にするなと言うに決まっている。
 目を閉じて、うとうとしたころ、白だしと鮭のいい匂いが下から漂ってきたのだった。




それから、具合は全く悪くないのだけど原因不明の微熱が続いた。

喬一さんが心配するので、実家に余計な心配をかけるわけもいけないと、初めての年越しは帰省せずに二人だけで家で過ごすことにした。

喬一さんが御節の準備をする中、私はリビングに出してもらった炬燵の中でぬくぬくと数の子の筋を取っていた。

「うーん」
「どうしました? 喬一さん」
「……多分なんだけど」
「はい」
「正月明けに病院に行ってみた方がいいかな」
「……えええ。そんなにこの微熱、悪いかんじですか
 ためらいがちに言ったから、驚く。そんなに悪いの?
「一応、だよ。正月は酒は控えた方がいい。生ものも一応避けとこうか」

 炬燵から飛び出して、御節を重箱に摘めていた喬一さんのところへ向かう。

「もしかして、私、何か病気ですか?」

「俺は外科医だから診断できないけど、この一か月、色々環境が変わって体が驚いてるだけだとおもうよ」

 口の中に栗きんとんを押し込められる。ほどよい甘さで、口の中に幸せが広がった。

「美味しい」
「だろ。年越しそばももう打ってあるし、お雑煮も網の上で焼いたのいれるよ。ゆっくり寛いで」

「喬一さん」

 抱き着こうとしたら、次は鳥ハムを口の中に押し込められたのだった。
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