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五、溺愛×賞味
五、溺愛×賞味⑤
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その残った年賀状を二人で確認するけど、お互いの仕事の取引先やお世話になった人たちだった。
問題は一切親戚付き合いしていない、彼の年賀状の方だ。
「こっちは見ていいですか?」
「いや、見なくていいよ。姉の従兄弟のそのまた従兄弟の奥さんの会社、とか果てしなく遠い人とか、自称親戚とか、気づいたら親戚だったとか、はたまた家系図を遡ったらたぶん親戚とか、きわめて関りがない人たちだし」
いやに饒舌に語る隙のなさ。本当に私に関わってほしくなさそうだ。
見たいけど、放っておくほうがいいのかと彼と年賀状を交互に見ると、深い嘆息が私の頭に降ってくる。
「本当に、関わらない方がいいよ。あいつらは親戚付き合いを続けたいんじゃなくて、うちの伝統や権利や今まで培ってきた取引先との関りを利用して甘い蜜を吸いたい奴らだ。紗矢が利用されたら、俺は何をするかわからない」
「そんな、大げさな」
「俺の料理の腕はすなわち、メス裁きのうまさを表す。この技術で何をしてしまうかわからないよ」
変にいつもより低い声で言うので、年賀状を落としてしまう。
「嘘だよ。俺が嫌なんだ。変な苦労をする必要はない」
な、と言われ、頷く。そこまで嫌なら私が余計な口を出す必要はないんじゃないか、と思う。
あの高い山のように積まれた年賀状は、彼の決意の表れでもあるのかもしれない。
「……本当に、きっと辛かったと思うんだ」
クリスマスツリーのプレゼントを一つ、取る。中には、ハンドクリームが入っていて花の甘い匂いがした。
それを塗り、少し取りすぎたので彼の手を握っていつも料理してくれている指先を撫でていた時だった。
零れるように、喬一さんは言った。
「祖母が用意した着物を着て、一生に一回しかない式で、姉は気丈な人だし俺にも愚痴らない人だけど、きっと辛かったと思うんだ。着飾って、お祝いを言われる場で、親戚の半分以上が欠席なんて」
「……」
「紗矢の花嫁姿はとても綺麗で、その姿を自慢したいと思ってしまったけど、反対に紗矢にはあんな辛い思いをさせたくないんだ」
握った手を奪われ、喬一さんの口まで持ち上げられると口づけを落とされた。
「ごめんな。面倒くさいだろうけど、もう離してあげられないから。だから我慢して」
「……我慢、とは思いません。そんなに辛いなら私が壁になればいいかなって思ったんです」
「それも俺が我慢できない。気にしなくていいよ。もしこの家に自称親戚が来たら、キッチンの下に塩の入った袋があるから袋ごと投げていいから」
「容赦ないですね」
クスクス笑いつつ、背伸びして喬一さんの髪を撫でた。
私のためにそう決断してくれたなら、私ももう気にしない。
完璧な人間なんていない。地位や財産を狙ってすり寄ってくる人なんて、私だって散々見てきた。私の家も会社も気にしないで、私だけを甘やかしてくれる喬一さんに、不満なんて何もないのだから。
「もう聞きません。何度も嫌なことを思い出させてしまってすいません」
「全然。俺の我儘だから、紗矢は気にしないで」
「よし。林檎飴と焼きそばとチョコバナナとカステラ焼きを食べに行きましょう」
「それ、夜ご飯は食べれるの?」
クスクスと笑われたので、私は必死に背伸びして彼の耳に手を当てて囁く。
デザートを食べるぐらいの余裕は残しますと。
彼はその意味に気づいて、蕩けんばかりに笑ってくれた。
問題は一切親戚付き合いしていない、彼の年賀状の方だ。
「こっちは見ていいですか?」
「いや、見なくていいよ。姉の従兄弟のそのまた従兄弟の奥さんの会社、とか果てしなく遠い人とか、自称親戚とか、気づいたら親戚だったとか、はたまた家系図を遡ったらたぶん親戚とか、きわめて関りがない人たちだし」
いやに饒舌に語る隙のなさ。本当に私に関わってほしくなさそうだ。
見たいけど、放っておくほうがいいのかと彼と年賀状を交互に見ると、深い嘆息が私の頭に降ってくる。
「本当に、関わらない方がいいよ。あいつらは親戚付き合いを続けたいんじゃなくて、うちの伝統や権利や今まで培ってきた取引先との関りを利用して甘い蜜を吸いたい奴らだ。紗矢が利用されたら、俺は何をするかわからない」
「そんな、大げさな」
「俺の料理の腕はすなわち、メス裁きのうまさを表す。この技術で何をしてしまうかわからないよ」
変にいつもより低い声で言うので、年賀状を落としてしまう。
「嘘だよ。俺が嫌なんだ。変な苦労をする必要はない」
な、と言われ、頷く。そこまで嫌なら私が余計な口を出す必要はないんじゃないか、と思う。
あの高い山のように積まれた年賀状は、彼の決意の表れでもあるのかもしれない。
「……本当に、きっと辛かったと思うんだ」
クリスマスツリーのプレゼントを一つ、取る。中には、ハンドクリームが入っていて花の甘い匂いがした。
それを塗り、少し取りすぎたので彼の手を握っていつも料理してくれている指先を撫でていた時だった。
零れるように、喬一さんは言った。
「祖母が用意した着物を着て、一生に一回しかない式で、姉は気丈な人だし俺にも愚痴らない人だけど、きっと辛かったと思うんだ。着飾って、お祝いを言われる場で、親戚の半分以上が欠席なんて」
「……」
「紗矢の花嫁姿はとても綺麗で、その姿を自慢したいと思ってしまったけど、反対に紗矢にはあんな辛い思いをさせたくないんだ」
握った手を奪われ、喬一さんの口まで持ち上げられると口づけを落とされた。
「ごめんな。面倒くさいだろうけど、もう離してあげられないから。だから我慢して」
「……我慢、とは思いません。そんなに辛いなら私が壁になればいいかなって思ったんです」
「それも俺が我慢できない。気にしなくていいよ。もしこの家に自称親戚が来たら、キッチンの下に塩の入った袋があるから袋ごと投げていいから」
「容赦ないですね」
クスクス笑いつつ、背伸びして喬一さんの髪を撫でた。
私のためにそう決断してくれたなら、私ももう気にしない。
完璧な人間なんていない。地位や財産を狙ってすり寄ってくる人なんて、私だって散々見てきた。私の家も会社も気にしないで、私だけを甘やかしてくれる喬一さんに、不満なんて何もないのだから。
「もう聞きません。何度も嫌なことを思い出させてしまってすいません」
「全然。俺の我儘だから、紗矢は気にしないで」
「よし。林檎飴と焼きそばとチョコバナナとカステラ焼きを食べに行きましょう」
「それ、夜ご飯は食べれるの?」
クスクスと笑われたので、私は必死に背伸びして彼の耳に手を当てて囁く。
デザートを食べるぐらいの余裕は残しますと。
彼はその意味に気づいて、蕩けんばかりに笑ってくれた。
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