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五、溺愛×賞味
五、溺愛×賞味⑧
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運転したでしょと、上機嫌だ。一体、このお正月休みの間の彼のテンションはどうしたんだ。いや、イチャイチャできて私も嬉しいんだけど、でも何かちょっと変だ。
「喬一くん、紗矢さん」
関係者用の駐車場の奥の門が開く。着物姿で駆け寄ってくるのは、お姉さんの旦那さんの麗一さんだった。先日、うちの父に酔わされ、ほとんど会話ができなかったが、私のことを親し気に呼んでくださった。
「あけましておめでとうございます。先日は酷い醜態をさらしてしまいましたが、お詫びをする前に各地のセミナーに出張してて」
「あけましておめでとうございます。こちらこそ、父が本当に申し訳ありません」
中世的な、色気をまとっている人だ。着物から見える鎖骨のラインも綺麗だし、少し茶色い髪とサラサラの髪に、やや垂れ目がちの目。深い紫色の着物が彼の透き通る肌を印象付けている。お姉さんが豪快で大輪の花が似合うような元気な人に対し、柔らかいイメージの人だ。
「お招きありがとうございます。あのうちの祖母の野菜を持ってきたんですが」
「俺が持っていくよ。そのままキッチンに持っていく」
喬一さんが片手をあげ、すぐに車の後ろへ回る。
「ちょうど先ほど、鰻が届いたんです。寿司にしようと思ったんですがね、色々ありまして」
「そうなんですね。お姉さんは」
「家内は今、届いた鰻を配膳しております」
「じゃあ私もお手伝いを」
「いえいえ、紗矢さんたちはお客様ですので客間でお待ちください。さ、中へ」
旦那さんが中へ促してくれる。喬一さんの方へ振り返ると、ポケットに入れていた仕事用の携帯から着信が鳴り出した。
「……先に入ってて」
段ボールを車の上に置くと、距離を取って話し出した。仕事が入ったのか、喬一さんの顔が少し険しくなっている。
「案内しますね。野菜も僕が運びます」
「え、いえ、これぐらい、私が」
「いえいえ。僕だって男ですから。女性に持たせたら、家内に怒られます」
「では、ありがとうございます」
ちらりと喬一さんの方へ視線を向けると、申し訳なさそうに片手を上げていた。長引きそうなので、お言葉に甘えて、先に中へと入った。
いつもなら元旦から着物の着付けで社員が朝から忙しく働いているらしいけど、今年から着付け会場を何か所か場所を借りて、神社の近くや成人式会場の近くでしているらしい。
それでも壁の向こうのお店からは車が止まる音やドアの開閉の音が止むことはない。
呉服店の裏に竹の生えた小道と高い門で隠れるように建てられている本家に、長い廊下を伝って向かう。四季を感じられる庭は、解放されている呉服店の方の庭とは違い、額縁に飾られているような、こじんまりした中に決められた美しい構図でどこもかしこも息を飲むような美しさだ。
「わあ、美味しそうな大根ですね」
段ボールの上が少し開いていたので中身が見え、旦那さんが微笑む。
古舘 麗一さん。今年三十七歳の服飾デザイナー。今は着物のデザインの方に携わっていると喬一さんが言っていた。柔軟なゴムと例えられるように、違ったところのない優しそうな人だ。
「すいません。重いですよね」
「いえいえ。大根おろしで食べるぴりっとしたお餅が大好物なので、大歓迎です。おっと」
段ボールの蓋が完全に開いてしまって、視界を塞ぐので何個か野菜を出して蓋の上に置いた。少しでも軽くなるように大根を二本、手に持つ。
「喬一くん、紗矢さん」
関係者用の駐車場の奥の門が開く。着物姿で駆け寄ってくるのは、お姉さんの旦那さんの麗一さんだった。先日、うちの父に酔わされ、ほとんど会話ができなかったが、私のことを親し気に呼んでくださった。
「あけましておめでとうございます。先日は酷い醜態をさらしてしまいましたが、お詫びをする前に各地のセミナーに出張してて」
「あけましておめでとうございます。こちらこそ、父が本当に申し訳ありません」
中世的な、色気をまとっている人だ。着物から見える鎖骨のラインも綺麗だし、少し茶色い髪とサラサラの髪に、やや垂れ目がちの目。深い紫色の着物が彼の透き通る肌を印象付けている。お姉さんが豪快で大輪の花が似合うような元気な人に対し、柔らかいイメージの人だ。
「お招きありがとうございます。あのうちの祖母の野菜を持ってきたんですが」
「俺が持っていくよ。そのままキッチンに持っていく」
喬一さんが片手をあげ、すぐに車の後ろへ回る。
「ちょうど先ほど、鰻が届いたんです。寿司にしようと思ったんですがね、色々ありまして」
「そうなんですね。お姉さんは」
「家内は今、届いた鰻を配膳しております」
「じゃあ私もお手伝いを」
「いえいえ、紗矢さんたちはお客様ですので客間でお待ちください。さ、中へ」
旦那さんが中へ促してくれる。喬一さんの方へ振り返ると、ポケットに入れていた仕事用の携帯から着信が鳴り出した。
「……先に入ってて」
段ボールを車の上に置くと、距離を取って話し出した。仕事が入ったのか、喬一さんの顔が少し険しくなっている。
「案内しますね。野菜も僕が運びます」
「え、いえ、これぐらい、私が」
「いえいえ。僕だって男ですから。女性に持たせたら、家内に怒られます」
「では、ありがとうございます」
ちらりと喬一さんの方へ視線を向けると、申し訳なさそうに片手を上げていた。長引きそうなので、お言葉に甘えて、先に中へと入った。
いつもなら元旦から着物の着付けで社員が朝から忙しく働いているらしいけど、今年から着付け会場を何か所か場所を借りて、神社の近くや成人式会場の近くでしているらしい。
それでも壁の向こうのお店からは車が止まる音やドアの開閉の音が止むことはない。
呉服店の裏に竹の生えた小道と高い門で隠れるように建てられている本家に、長い廊下を伝って向かう。四季を感じられる庭は、解放されている呉服店の方の庭とは違い、額縁に飾られているような、こじんまりした中に決められた美しい構図でどこもかしこも息を飲むような美しさだ。
「わあ、美味しそうな大根ですね」
段ボールの上が少し開いていたので中身が見え、旦那さんが微笑む。
古舘 麗一さん。今年三十七歳の服飾デザイナー。今は着物のデザインの方に携わっていると喬一さんが言っていた。柔軟なゴムと例えられるように、違ったところのない優しそうな人だ。
「すいません。重いですよね」
「いえいえ。大根おろしで食べるぴりっとしたお餅が大好物なので、大歓迎です。おっと」
段ボールの蓋が完全に開いてしまって、視界を塞ぐので何個か野菜を出して蓋の上に置いた。少しでも軽くなるように大根を二本、手に持つ。
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