とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

文字の大きさ
60 / 63
エピローグ

エピローグ②

しおりを挟む
「しかも和菓子まで持って来てくれて、本当に嬉しいですね」
「そうだね。食べるならお茶入れようか?」
「一個だけ。でも、自分で淹れますよ」
「いいから、やっと落ち着けるんだから座って」

 クリスマスツリーの装飾品を床に置くと、すぐにお茶を用意してくれる。

 左京さんがくれた和菓子。本当に顔を見て、出産祝いと「授乳中は和菓子の方がいいって聞いたから」とお花の形の最中をもってきてくれた。


 最中は好き。和菓子も大好き。
 もちろん、喬一さんの料理も全部文句なしで好き。


 肉じゃが、生姜焼き、筑前煮、ほうれん草のお浸し、もつ煮、スペアリブ、ビーフストロガノフ、クリームパスタ、たけのこご飯。

 素朴で、出汁で味がついた和食が喬一さんは得意で、私もそれが好きだった。
 でも今は、今は違う。


 タルトタタン、ミルフィーユ、ティラミス、エクレア、クイニーアマン、アルカザール、シュークリーム、チーズケーキ、ソフトクリーム、プリン、チョコレート、ドーナツ、駅前のカフェで食べられるガトーショコラ、会社の近くで偶に売りに来る石焼き芋。ああ、甘いデザートが食べたい。


「甘いお菓子が沢山食べたい。バターが沢山入ったクッキーが食べたい」

「それは、俺不足だから甘いものが欲しいってことでいい?」
「うー。違うけど、違うくない。でも食べたい」

「我慢の方が体に悪いよ、ほら」
「ありがとうございます」

 お茶を受け取って、包みから薄桃色の花形の最中を取り出して口に放り込む。

 餡子が甘すぎず、上品で美味しい。
 美味しいのに物足りなさを感じて、悲しくてお茶を飲む。

 甘いものの食べ過ぎってわけではないけど、乳口炎になって発熱してしまったので、減らしてるんだけど、我慢できない。少しぐらいなら食べたいな、と思ってしまう。


 あんなに激痛だったのに、のど元過ぎれば熱さ忘れるってやつだ。

 妊娠に気づいてから、六か月の安定期に入った直後に、正式に会社に妊娠を報告した。

 小春に言っていたおかげで、報告前にほぼ社員は知っていたのはもういい。

 ただ急に悪阻が酷くなって、トイレとデスクを往復し、とうとう貧血で倒れてそのまま入院することになり、早めに産休にはいることになったのだけは申し訳なかった。

 仕事の方は小春に全て事前に説明してはいたし、もともと産休は早めにとるようになっていた。早めにとるしかなかったというか。

 小春も「いいよ! 私もすぐに紗矢の後を追って寿退職するから」と忙しくなることに対して何も不満はいわない。本当に最初から最後まで頼りになる。
 その昔、合コンで『南城コンシェルジュのお嬢様と知り合いよ』と合コンのエサにしたことぐらい可愛いものだと許せてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...