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二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。
二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。二
しおりを挟む「お前今、どこに住んでるんだ?」
鼻もちならない言いぐさで、かちんと来る。
こんな男だった。最低でいい加減で、嫌な奴なのに、顔のつくりだけは恵まれたせいで、勝ち組人生を送ってきたんだろう。女何人も同時に付き合ってても、悪いって思ってない。
「あんたに教えないけど、今よりも良い場所よ」
あんなボロアパートの私が選んだ安っぽい家具が陳腐に思えるような、タワーマンション。
勿論、同じレベルに落ちたくないので、何も教えてあげない。
「お前のことだから俺に懲りて真面目な奴を捕まえたと思ってたよ。相手は誰だ?」
「あんたに関係ない。今度から道で見つけても話しかけないで」
「今日は偶然じゃねえよ。お前を待ってたんだ」
本妻付きで待ってたと言われても嬉しくない。
たとえこんなイケメンに待たれていても今は殺意しか浮かばない。6年も付き合っているうちに擦り切れた情の前では、もはや顔の構造など意味がない。
「家賃払えないから、綾香の給料まだだし、先輩のお前が貸してくれね?」
呆れて顎が外れるかと思った。
馬鹿が二人集まると大馬鹿になるらしい。
「綾香、あんた派遣会社の方から解雇の連絡来てると思うけど」
「は? そんなの知らない」
「今までの働いたか働いてないか分からない態度の出勤日の給金は手続きしたら貰えると思う。けど、解雇されるアンタは私の後輩でもないし、もう二人とも御似合いのカップルなんだから私に近づかないでくれる?」
勿論、御似合いのカップルと言うのは嫌みのつもりだったのだけれど、綾香がまんざらでもない顔をしたので脱力した。
信じられない馬鹿だ。でももっと馬鹿は隆一の方だった。
「はあ? お前お金ないならまじ家から出ていけや。こいつと同じ会社ってことは同じだけ金あると思ったのに派遣?」
いきなり綾香を突き飛ばすと、苛々と煙草に火をつけ出す。
「そんな言い方ないじゃない。あんたら馬鹿は馬鹿同士仲良くしなきゃ生きていけないんだし」
「んだと」
隆一は私も思いっきり突き飛ばす。
こんな暴力的なやつだったっけ?
尻もちを付きそうだった私は、力強い腕に支えれてそのまま置き上がれた。
「大丈夫か?」
「え、あ、はい」
振りかえると、私の目線の先には肩。
目線を上げると、大柄で怖そうな男の人が立っていた。
短髪に鋭い目つき、がっしりした体つき。
隆一なんて一ひねりしてくれそうな、男の人。
「喧嘩? 喧嘩ならそこの交番についていくよ? 俺、刑事なんだ」
「そうですね。じゃあ暴行されたので」
開き直っていこうとすると、そのまま隆一は綾香を追いてさっさと逃げてしまった。
「ああん。待ってよう」
綾香が必死で隆一のあとを追うが、振りきらんばかりに走っていく。
本当に最低な奴だ。
「大丈夫か? 今の奴、元彼とかそんな感じ?」
「まあそんな感じですが女性に不自由しない奴なので大丈夫です。ありがとうございました」
深々と頭を下げてお礼をすると、自信に充ち溢れた瞳が優しく綻んだ。
「何かあればまたすぐに警察に行きなよ。ストーカー事件は甘く考えない方がいい」
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