艶夜に、ほのめく。

篠原愛紀

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二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。

二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。三

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「そうですね。今度からそうします」

 本当は隆一なんて行動力もないし、ストーカーできてもせいぜい駅で待ち伏せするぐらいだ。
 だから適当に笑ってごまかしたのに、その刑事は目を細めて私を見た。

「……嘘ついてる顔だ」
「はい?」
「俺の知ってる奴にそっくり。まあ、本当に気をつけろよ」

 吐き捨てるように、いや、自分に言い聞かせるように、が正しいかもしれない。
 私に言ったのか独り言だったのか分からないまま、彼はさっさと踵を返し駅の中へ入って行った。

「なによ」

 泉さんと間逆なのに、隆一と同じ野性的なはずが知能がある猛獣みたいな感じ。
 刑事って言われたら納得できる。
 嘘吐いている顔ってどんな顔かと苛々させられたが、泉さんから着信があったのでひとまず今日は勘弁してやることにした。




***

 隆一なんかに待ち伏せされて最低な一日の終わりになるはずだった。
 それなのに、急いで改札口から出てきて私を探す泉さんを見てしまったら、ちっさい男のことなんて全て消し飛んだ。

「まだ店は閉まらない時間だよね。行こうか」
「はい」

 物静かで、何を考えているのか分からないミステリアスな横顔。
 その横顔が、今は少しだけ期待に輝いているように見える。小物を選ぶのを実はとても楽しみにしていたようだった。

「結局カーテンはきまらなかったね」
「なんか、こう、もっと深い緑がいいなって」

 泉さんが買い物に意欲的で、そして驚くほどポンと大金を出すので驚いた。
 今まで金のない同棲生活をしていたせいか、箸とかコップとか百円ショップで済ませていた私からしたら、ティファニーの御揃いのワイングラスが五千円とか腰を抜かすのだけど。

「今まで適当に弟が買ってきたインテリアとかだったから自分で決めるのが楽しい。すごい使ったなー」

 カードを持って満足そうだから私は水を差さないように笑っておいた。
 ついでに指輪も見た。
 二人でシルバーの細くてスタイリッシュなデザインが気に入ったけど、これは今日の出費を考慮して諦めてもらった。
 とんとん拍子で進んでいく未来が怖いと、勇気が出なかったのも本当だ。


「思うんだけど、恋人に服を贈るのは脱がせたいからだよね。じゃあ。ネックレスってどんな意味だろうね」
「ネックレス?」


 渡されたのは白い箱に入れられた縦長の箱。
 開けてみてと言われたら、乙女のように胸が高鳴った。
 震える指先で開けたらさっきのティファニーで見たネックレスだった。


「どんな意味かも分からないけど、受け取って」
「……っ」

 一瞬、自分のブレーキが壊れたのかと思った。
 踏んばっても踏ん張ってもブレーキが壊れてしまってる。
 楽だからと選んだ相手だったのに、こんなに大切にされてると本気になってしまいそう。
 いや、本気になるのが怖いだけで本当は、泉さんがどれだけ大切な人か分かってる。
 でもちゃん自分でブレーキを踏んでいたいの。

「あ、ありがとう」

 彼はそんな私を知っている。
 私の性格が最低で、楽だから、面白そうだから、安定しているひとだから泉さんを選んだのも知っているはず。
 なのになんでこんなことをしてくれるんだろう。
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