10 / 36
二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。
二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。三
しおりを挟む「そうですね。今度からそうします」
本当は隆一なんて行動力もないし、ストーカーできてもせいぜい駅で待ち伏せするぐらいだ。
だから適当に笑ってごまかしたのに、その刑事は目を細めて私を見た。
「……嘘ついてる顔だ」
「はい?」
「俺の知ってる奴にそっくり。まあ、本当に気をつけろよ」
吐き捨てるように、いや、自分に言い聞かせるように、が正しいかもしれない。
私に言ったのか独り言だったのか分からないまま、彼はさっさと踵を返し駅の中へ入って行った。
「なによ」
泉さんと間逆なのに、隆一と同じ野性的なはずが知能がある猛獣みたいな感じ。
刑事って言われたら納得できる。
嘘吐いている顔ってどんな顔かと苛々させられたが、泉さんから着信があったのでひとまず今日は勘弁してやることにした。
***
隆一なんかに待ち伏せされて最低な一日の終わりになるはずだった。
それなのに、急いで改札口から出てきて私を探す泉さんを見てしまったら、ちっさい男のことなんて全て消し飛んだ。
「まだ店は閉まらない時間だよね。行こうか」
「はい」
物静かで、何を考えているのか分からないミステリアスな横顔。
その横顔が、今は少しだけ期待に輝いているように見える。小物を選ぶのを実はとても楽しみにしていたようだった。
「結局カーテンはきまらなかったね」
「なんか、こう、もっと深い緑がいいなって」
泉さんが買い物に意欲的で、そして驚くほどポンと大金を出すので驚いた。
今まで金のない同棲生活をしていたせいか、箸とかコップとか百円ショップで済ませていた私からしたら、ティファニーの御揃いのワイングラスが五千円とか腰を抜かすのだけど。
「今まで適当に弟が買ってきたインテリアとかだったから自分で決めるのが楽しい。すごい使ったなー」
カードを持って満足そうだから私は水を差さないように笑っておいた。
ついでに指輪も見た。
二人でシルバーの細くてスタイリッシュなデザインが気に入ったけど、これは今日の出費を考慮して諦めてもらった。
とんとん拍子で進んでいく未来が怖いと、勇気が出なかったのも本当だ。
「思うんだけど、恋人に服を贈るのは脱がせたいからだよね。じゃあ。ネックレスってどんな意味だろうね」
「ネックレス?」
渡されたのは白い箱に入れられた縦長の箱。
開けてみてと言われたら、乙女のように胸が高鳴った。
震える指先で開けたらさっきのティファニーで見たネックレスだった。
「どんな意味かも分からないけど、受け取って」
「……っ」
一瞬、自分のブレーキが壊れたのかと思った。
踏んばっても踏ん張ってもブレーキが壊れてしまってる。
楽だからと選んだ相手だったのに、こんなに大切にされてると本気になってしまいそう。
いや、本気になるのが怖いだけで本当は、泉さんがどれだけ大切な人か分かってる。
でもちゃん自分でブレーキを踏んでいたいの。
「あ、ありがとう」
彼はそんな私を知っている。
私の性格が最低で、楽だから、面白そうだから、安定しているひとだから泉さんを選んだのも知っているはず。
なのになんでこんなことをしてくれるんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
彼が指輪を嵌める理由
mahiro
恋愛
顔良し、頭良し、一人あたり良し。
仕事も出来てスポーツも出来ると社内で有名な重村湊士さんの左薬指に指輪が嵌められていると噂が流れた。
これはもう結婚秒読みの彼女がいるに違いないと聞きたくもない情報が流れてくる始末。
面識なし、接点なし、稀に社内ですれ違うだけで向こうは私のことなんて知るわけもなく。
もうこの恋は諦めなきゃいけないのかな…。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる