艶夜に、ほのめく。

篠原愛紀

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三夜、ウソツキと正直者

三夜、ウソツキと正直者 一

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 なかなか泉さんも、性格は黒い。


***


「信じらんねえ。普通弟が居る時にするか?」
「普通ならしないのかな」
「あ、お醤油とソースどっち?」
「マヨネーズにする」
「……」

 朝ご飯に、フランスパンとハムエッグ、サラダにヨーグルトという簡単なもののはすが、遊馬さんだけ自分でご飯とお味噌汁、魚も焼いて用意した。
 私のご飯が食べたくないのかと思ったが、私のも食べつつ自分のも食べるらしい。


「ソースは跳ねるのが嫌らしく、マヨネーズなんだって」
「意外と神経質なんですねえ」
「話を逸らすなよ。ベットがギシギシ五月蠅くてさ、声が聞こえないだけましだったけど、あれは流石に俺じゃなくても分かる」

 ブツブツと言いながらも、ご飯はぺろりと完食した。
 私たちの切っていないフランスパンに手を伸ばすと、焼きもせずに齧りだした。
 だからその筋肉なのか。


「ベットも大きいの買おうか?」
「大きくて丈夫なの買いましょう」
「うわあ。兄貴、まじもう……はあ」

 げんなりした顔のくせに食欲だけはある遊馬さん。
 彼は、私たちがわざとギシギシと音を立ててベッドで跳ねていたのを知るはずもない。
 そもそも、彼の独り言や鼾が五月蠅かったので泉さんが中止を訴え、ただのフリになっただけで、遊馬さんが静かなら最後までしてたのに。

「遊馬さんはどれぐらい此処に滞在するの?」
「んん。あんたが諦めて出て行くまでかな」
「お前が出ていけ」

 綺麗に平らげた泉さんは、わざと遊馬さんの足を踏んでからシンクへ食器を下げた。

「お風呂入ってくるから準備してて」
「はーい」

 私もご飯を掻きこむと、シンクへ洗いに行く。


「どっか行くの?」
「まあ」

 洗いながら適当に相槌を打つと、遊馬さんが黙り込んだ。


「そんな擦り合わせただけの関係を何十年も続けたら幸せになんてなれねーよ」
「幸せの基準なんて人それぞれでしょ? 貴方の幸せを押し付けないでくれる?」
「第三者の方が客観的に見れて良いと思うんだけど」
「ってか隣にいるならお皿ぐらい拭いて」

 全身から拒絶のオーラを出しているのに、どうしてこの人は空気を読まないふりして話しかけてくるのか謎だ。

「うーーん。結婚とか恋人とか、家族作るには兄貴は良い物件とは言えない。どっちかと言えば不良物件?」
「じゃあどんな物件が良いって言いたいの?」
「――俺なんてどう?」
「……無理」

 ドヤ顔で言われて、呆れてしまって一瞬返事が出来なかった。
 エンゲル数高いし、公務員だから転勤も多いし、危ない仕事だし、態度が偉そうだし、浮気しそうな軽い雰囲気だし。どれをとっても駄目だと思う。


「この世には、二種類の男がいると思うんだけど」
「うん」
「浮気をしない男と、浮気をする男。遊馬さんはどっち?」
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