54 / 62
六 別府⇔小倉
六 別府⇔小倉 六
しおりを挟む
「ありがとうございました。部長のおかげです。わ、私」
部長が好きです。
そう言うと、振り返って部長の頬に唇を寄せた。
甘く蕩ける部長に抱き締められて、
嬉しくて切なくて、胸が締め付けられて、
上手く息が吸えなかった。
カーテンも取り払われて、ベット以外は段ボールが壁に並べられている部屋。
真っ暗にしても、外からの明かりが入ってきて、淡く部長の体を浮き立たせる。
緊張して指が震えて上手く脱げない私の手を取り、一緒に脱ぐのを手伝ってくれた。
額から頬、頬から首筋、首筋から肩。
流れるように部長の唇が私の体に触れていく。
声を我慢しようと唇を噛むと、耳を舐められて邪魔された。
甘い陶酔が身体中を支配して、
思考や理性が奪われていく。
もう恋なんて……と諦めていたけれど、
やっぱり身体中を幸せにしてくれる、逃げ出したいような甘酸っぱい気持ちに満たされると、
部長を好きになれて本当に良かったって思う。
部長の声が好き。
意地悪な唇も好き。
大きな包み込んでくれる手が好き。
全部、全部、――好き。
部長だけは、どうか。
もう離れたくないって心から思った。
見上げた部長の顔を見たら狂おしくなる。
少し湿った腕にすがるように指を滑らせると優しく微笑んでくれる。
怖いなんて気持ちを、優しく包み込んでくれるように。
部長がベットサイドに腕を伸ばして、何かを口に咥える。
咥えたものを歯で挟み、器用に片手で破いていく。
それがゴムのパッケージだと分かった時、涙がぶわっと溢れだしてしまった。
「――怖い?」
部長に心配げに聞かれて、顔を覆って隠す。
「だっ……て、つけなっ……ても妊娠しなっ……」
そう泣き出すと、部長がクッと笑い、額に唇を寄せる。
「好きな女の身体を大切にすんのは、当たり前だろ――?」
好きな女……。
部長に大切に思われて嬉しい。
私の気持ちも伝わるだろうか。
泣きすぎてくしゃくしゃな可愛くない顔だけど、
恐る恐る伸ばした手で部長の頬に触れる。
「ありがとうございます」
そう笑ったら荒々しい唇で塞がれてしまった。
部長が好きです。
そう言うと、振り返って部長の頬に唇を寄せた。
甘く蕩ける部長に抱き締められて、
嬉しくて切なくて、胸が締め付けられて、
上手く息が吸えなかった。
カーテンも取り払われて、ベット以外は段ボールが壁に並べられている部屋。
真っ暗にしても、外からの明かりが入ってきて、淡く部長の体を浮き立たせる。
緊張して指が震えて上手く脱げない私の手を取り、一緒に脱ぐのを手伝ってくれた。
額から頬、頬から首筋、首筋から肩。
流れるように部長の唇が私の体に触れていく。
声を我慢しようと唇を噛むと、耳を舐められて邪魔された。
甘い陶酔が身体中を支配して、
思考や理性が奪われていく。
もう恋なんて……と諦めていたけれど、
やっぱり身体中を幸せにしてくれる、逃げ出したいような甘酸っぱい気持ちに満たされると、
部長を好きになれて本当に良かったって思う。
部長の声が好き。
意地悪な唇も好き。
大きな包み込んでくれる手が好き。
全部、全部、――好き。
部長だけは、どうか。
もう離れたくないって心から思った。
見上げた部長の顔を見たら狂おしくなる。
少し湿った腕にすがるように指を滑らせると優しく微笑んでくれる。
怖いなんて気持ちを、優しく包み込んでくれるように。
部長がベットサイドに腕を伸ばして、何かを口に咥える。
咥えたものを歯で挟み、器用に片手で破いていく。
それがゴムのパッケージだと分かった時、涙がぶわっと溢れだしてしまった。
「――怖い?」
部長に心配げに聞かれて、顔を覆って隠す。
「だっ……て、つけなっ……ても妊娠しなっ……」
そう泣き出すと、部長がクッと笑い、額に唇を寄せる。
「好きな女の身体を大切にすんのは、当たり前だろ――?」
好きな女……。
部長に大切に思われて嬉しい。
私の気持ちも伝わるだろうか。
泣きすぎてくしゃくしゃな可愛くない顔だけど、
恐る恐る伸ばした手で部長の頬に触れる。
「ありがとうございます」
そう笑ったら荒々しい唇で塞がれてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる