神様のうそ、食べた。

篠原愛紀

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五  届け

五  届け 十

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「分かりました……?」


優しくて落ち着いた声だったけど、なんかちょっと爆発しそうな静けさでもあった。

侑哉、バイトの事で何かトラブったのかな?


そんな呑気に考えながら、保育園に電話したら園長先生が落ち着いた声で電話に出た。




『悪いけど、主任と各クラスの先生たちには話を通したわ。貴方と明美先生は園に戻って待機してくれるかしら?』


「はい。構いませんよ。補助は無しで大丈夫なんですね?」


丁度バスは、水族館のうみたまごに到着した。

階段を上がる園児たちがちらほらと見えている。

待ち合わせ場所は中の年長はイルカプールだったり年少はレストラン前だったりと離れている為に入り口には園児の姿は見えない。


『真くんが迷子になったらしくて。急いで戻って来てくださいね』


「え?」


「おはようございます。皆様、急いで降りてください」

私が聞き返すのと同時に、明美先生がバスの扉を開いて笑顔で対応し始める。
真くんが迷子……?


明美先生がバスの皆を下ろしてくれた後、私の隣に座って両手を握ってくれた。



「保育園へ急いで戻りましょう? 話はそれから聞けば良いですっ」


私の携帯を奪うと代わりに明美先生が、園長先生と会話を始める。


……あ、


私、動揺しすぎてバスの見送りさえ出来ていなかったんだ。


気丈に対応してくれる明美先生が居なかったら大変な事になっていたかも。




「真くん、保育園に行きたいって朝から言ってたみたいなんです」

「保育園……に?」


「お父さんが車を洗車してる間に、お祖母さんの目を盗んで飛び出したんではって」


だったら遠くまでは行ってない……よね?


保育園バスではコースの一番最初になるぐらい真くんの家のホテルと保育園は近い。

4車線の道路を渡り、二回信号を真っ直ぐ行って右に行けば保育園。


大人なら10分も掛からない距離だ。



「迷子にはなりにくい距離だけど、真くん昨日は様子がおかしかったし」


「いや、急ごう。真くん、遠足楽しみにしてたから、遠足までには戻るつもりで抜け出したかもしれないし!」


不安で喉がカラカラに乾いてくる。




真くんに何もありませんようにー……。
「みなみっ!」

園に戻ると、汗だくの部長といつも通りのシスター姿の園長先生が立っていた。



「部長、園長先生っ。真くんは!?」

「――迷惑かけてすまない。さっきから家と保育園を何往復もしてるんだが見当たらないんだ」


「探す範囲を広げるしかありません。手伝って頂けますね?」

園長先生に言われ、部長が手に持っているこの近辺の地図を広げ始めた。


ジーンズに半袖姿の部長は、本当に着の身着のまま飛び出したような、いつもの余裕さが感じられない。

園長先生も重々しい空気を出している。



「あの、警察には……?」

明美先生がそう言うと、園長先生は頷く。


「この近辺をパトロールして探して頂いています」



警察も動いているのに、まだ見つからないなんて。


「私! 向こう探します! よくお散歩で行く公園があるんです!」


「俺はこっちを範囲広げてみます」


「じゃあ私はこっちのスーパーの中を」


手分けして分かれて探してみるが、真くんの姿を見つけられず気持ちだけが焦っていく。


あんなに遠足を楽しみにしてたのに。

今日でパパが帰るって言ってたのに。




――真くん!
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