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第三章
魔法使いと出会う
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宿屋から洋館までの道は覚えたので、迷うことなく歩くことができた。
すでに何度目かの来訪となる洋館が近づいている。
玄関に続く階段を上がり、扉を開いて中に入った。
広い廊下を通って団員が集まる部屋へと足を運ぶ。
「おう、カイト」
「おはよう」
室内に入ったところでウィニーが声をかけてきた。
彼以外にエリーと初めて見る女性がいる。
ルチアと内川はいないようでサリオンも同じく不在のようだ。
「そうだ。ミレーナとは初めて会うよな」
「あの人のこと? 初対面だよ」
「同じ団員だし、自己紹介をしておいた方がいいよな」
ウィニーは椅子に腰かけた女性の方を向いている。
彼女は傍らに杖を置き、ローブを身につけているのが目に入った。
見た目の雰囲気からして魔法使いなのだろうか。
「ミレーナ、ちょっといいか」
ウィニーが声をかけるとミレーナは手にした本を閉じて立ち上がった。
彼女は呼びかけに応じて歩いてくる。
「こいつは新入りのカイトだ。仲良くしてやってくれ」
「はじめまして、カイト。私はミレーナ」
「は、はじめまして」
ミレーナは俺よりも少し背が低く、年齢は同じぐらいに見えた。
肩の上辺りで切り揃えられた水色の髪と知性を感じさせる面立ち。
賢そうな雰囲気がある一方で、どちらかというと童顔に近い印象を受ける。
「ミレーナは口数が少ないが、おとなしいだけだ。依頼か何かで一緒になった時は仲良くしろよ」
「うん、分かった」
ウィニーの言うように積極的に話そうとする様子はなかった。
今は自己紹介のために付き合っているだけという雰囲気だ。
表情の変化が乏しく、何を考えているのか窺い知ることはできない。
「あの、ミレーナは魔法使いなの?」
これだけはたずねておきたいと思った。
彼女は真顔のままだったが、質問に答えようとしている。
「そう、私は魔法使い」
「へえ、すごい」
すごいというのは本心なのだが、それ以外の言葉が見つからない。
ミレーナは会話に関心がないようで、何だか息苦しくなってきた。
相手が乗り気でないと話しづらいものなんだと思う。
「読書中に悪かったな」
「ううん、大丈夫」
ウィニーが声をかけて、ミレーナは座っていた席に戻った。
悪い人ではないが、もの静かな性格なのだろう。
すぐに打ち解けるのは難しいと思った。
「ミレーナは魔法学院出身だから、なかなかの秀才なんだ。ここにいる理由は、ちょっとまあ事情があってな」
興味深い固有名詞が出てきた。
きっと内川がいたら、反応していたはずだ。
そんなことを思いながらウィニーにたずねる。
「魔法の学校みたいなのがあるの?」
「カイトは辺境から来たから知らないよな。ガスパール王国からは遠いんだが、魔法学院はエブデンという国にある」
ウィニーはそこまで話したところで、ミレーナの方をちらりと見る。
それから彼はちょいちょいと俺に近づくように手招きをした。
その仕草から言いにくいことを話そうとしているのは明らかだった。
「大きな声では言えないが、彼女は魔法学院でもダントツの首席だったんだ。ただ、魔法の威力が強すぎて、周囲から煙たがられたことで退学になったたらしい」
「それが本当ならすごい……ある意味」
ルチアは獣人系の亜人で抜けているところがあり、サリオンは大酒飲みのエルフ。
今度は訳ありの魔法使いときた。
深紅の旅団には色んな人が集まっているのだな。
「そういえば、ルチアと仁太は?」
「今日はまだ見てないな。どこかでしごかれてるんじゃないか」
「もしかしたら、そうかもね」
まだ顔を合わせるのは気まずいものの、いないならいないで気にかかる。
ルチアが一緒の可能性もあるし、そこまで心配しなくてもいいか。
「まあ座りな。朝食はもう片づけたが、お茶ぐらい出してやるよ」
「うん、ありがとう」
俺は空いた椅子に腰を下ろした。
エリーは窓際の定位置で、読書中のミレーナは少し離れた席にいる。
二人とも自分の世界に入っているようなので、邪魔しないようにした。
「ほらよ。熱いから気をつけな」
「うわっ、ホントに熱々だね」
ウィニーが真っ白なティーカップを差し出した。
中には紅茶が入っているようで、湯気と香りが漂ってくる。
猫舌というわけではないものの、少し冷ましてから飲むことにした。
間をおいて淹れたての紅茶をすすりつつ、部屋のシャンデリアを眺めていると部屋に誰かが入ってきた。
すぐに声が聞こえてきて、それがサリオンであると分かった。
よく通るいい声をしているので覚えやすかった。
「カイト、お茶を出したばかりで悪いが、サリオンと依頼に取りかかってくれ」
「お茶を飲み干す時間ぐらいはあります。私にも一杯ください」
サリオンはそう言って、俺の隣の席に腰かけた。
さわやかな笑みを浮かべて声をかけてくる。
この前は役に立てたので、少しは評価してくれたのだろうか。
「昨日は初日にしては十分でした。今日も頼みますね」
「よろしく。ちなみにどんな依頼?」
「王都の外れに古城があるのですが、そこの定期的な見回りです。地味な仕事だと冒険者が断りがちなので、私たちに回ってくるのですよ。――ウィニー、ありがとう」
サリオンはこちらの質問に答えた後、ティーカップを口につけた。
じっくり味わう様子からして、酒以外にも紅茶が好きなのだと思った。
依頼のことを詳しく知りたいところだが、飲み終わるまで待つことにする。
すでに何度目かの来訪となる洋館が近づいている。
玄関に続く階段を上がり、扉を開いて中に入った。
広い廊下を通って団員が集まる部屋へと足を運ぶ。
「おう、カイト」
「おはよう」
室内に入ったところでウィニーが声をかけてきた。
彼以外にエリーと初めて見る女性がいる。
ルチアと内川はいないようでサリオンも同じく不在のようだ。
「そうだ。ミレーナとは初めて会うよな」
「あの人のこと? 初対面だよ」
「同じ団員だし、自己紹介をしておいた方がいいよな」
ウィニーは椅子に腰かけた女性の方を向いている。
彼女は傍らに杖を置き、ローブを身につけているのが目に入った。
見た目の雰囲気からして魔法使いなのだろうか。
「ミレーナ、ちょっといいか」
ウィニーが声をかけるとミレーナは手にした本を閉じて立ち上がった。
彼女は呼びかけに応じて歩いてくる。
「こいつは新入りのカイトだ。仲良くしてやってくれ」
「はじめまして、カイト。私はミレーナ」
「は、はじめまして」
ミレーナは俺よりも少し背が低く、年齢は同じぐらいに見えた。
肩の上辺りで切り揃えられた水色の髪と知性を感じさせる面立ち。
賢そうな雰囲気がある一方で、どちらかというと童顔に近い印象を受ける。
「ミレーナは口数が少ないが、おとなしいだけだ。依頼か何かで一緒になった時は仲良くしろよ」
「うん、分かった」
ウィニーの言うように積極的に話そうとする様子はなかった。
今は自己紹介のために付き合っているだけという雰囲気だ。
表情の変化が乏しく、何を考えているのか窺い知ることはできない。
「あの、ミレーナは魔法使いなの?」
これだけはたずねておきたいと思った。
彼女は真顔のままだったが、質問に答えようとしている。
「そう、私は魔法使い」
「へえ、すごい」
すごいというのは本心なのだが、それ以外の言葉が見つからない。
ミレーナは会話に関心がないようで、何だか息苦しくなってきた。
相手が乗り気でないと話しづらいものなんだと思う。
「読書中に悪かったな」
「ううん、大丈夫」
ウィニーが声をかけて、ミレーナは座っていた席に戻った。
悪い人ではないが、もの静かな性格なのだろう。
すぐに打ち解けるのは難しいと思った。
「ミレーナは魔法学院出身だから、なかなかの秀才なんだ。ここにいる理由は、ちょっとまあ事情があってな」
興味深い固有名詞が出てきた。
きっと内川がいたら、反応していたはずだ。
そんなことを思いながらウィニーにたずねる。
「魔法の学校みたいなのがあるの?」
「カイトは辺境から来たから知らないよな。ガスパール王国からは遠いんだが、魔法学院はエブデンという国にある」
ウィニーはそこまで話したところで、ミレーナの方をちらりと見る。
それから彼はちょいちょいと俺に近づくように手招きをした。
その仕草から言いにくいことを話そうとしているのは明らかだった。
「大きな声では言えないが、彼女は魔法学院でもダントツの首席だったんだ。ただ、魔法の威力が強すぎて、周囲から煙たがられたことで退学になったたらしい」
「それが本当ならすごい……ある意味」
ルチアは獣人系の亜人で抜けているところがあり、サリオンは大酒飲みのエルフ。
今度は訳ありの魔法使いときた。
深紅の旅団には色んな人が集まっているのだな。
「そういえば、ルチアと仁太は?」
「今日はまだ見てないな。どこかでしごかれてるんじゃないか」
「もしかしたら、そうかもね」
まだ顔を合わせるのは気まずいものの、いないならいないで気にかかる。
ルチアが一緒の可能性もあるし、そこまで心配しなくてもいいか。
「まあ座りな。朝食はもう片づけたが、お茶ぐらい出してやるよ」
「うん、ありがとう」
俺は空いた椅子に腰を下ろした。
エリーは窓際の定位置で、読書中のミレーナは少し離れた席にいる。
二人とも自分の世界に入っているようなので、邪魔しないようにした。
「ほらよ。熱いから気をつけな」
「うわっ、ホントに熱々だね」
ウィニーが真っ白なティーカップを差し出した。
中には紅茶が入っているようで、湯気と香りが漂ってくる。
猫舌というわけではないものの、少し冷ましてから飲むことにした。
間をおいて淹れたての紅茶をすすりつつ、部屋のシャンデリアを眺めていると部屋に誰かが入ってきた。
すぐに声が聞こえてきて、それがサリオンであると分かった。
よく通るいい声をしているので覚えやすかった。
「カイト、お茶を出したばかりで悪いが、サリオンと依頼に取りかかってくれ」
「お茶を飲み干す時間ぐらいはあります。私にも一杯ください」
サリオンはそう言って、俺の隣の席に腰かけた。
さわやかな笑みを浮かべて声をかけてくる。
この前は役に立てたので、少しは評価してくれたのだろうか。
「昨日は初日にしては十分でした。今日も頼みますね」
「よろしく。ちなみにどんな依頼?」
「王都の外れに古城があるのですが、そこの定期的な見回りです。地味な仕事だと冒険者が断りがちなので、私たちに回ってくるのですよ。――ウィニー、ありがとう」
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