現実主義のライターは超常現象に直面する~検証チャンネルの配信者と協力して、不可思議な事件を調査します~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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調査隊との出会い

3.取材音声のノイズ

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 最初はただ聞き取りづらいだけだと思っていたが、何度か再生するうちにノイズが理由であることが分かった。
 使っているICレコーダーは国産メーカーのもので買ったのは約一年前だ。
 故障するには早い気がする。
 それに不具合があれば私が話した時にもノイズが入るはずだろう。

「もしかして、置いた位置が悪かったか?」

 録音中は取材相手の声が入るように自分から離した位置に置いた。
 机の上に異常があったようには思えず、はっきりした理由が思い当たらない。
 このまま記事を仕上げることもできるのだが、腑に落ちないことにモヤモヤした。 

 意味がないことを分かっていたが、ICレコーダーをもう一度再生した。
 音声は互いの自己紹介から始まり、続いて男子大学生が経験した出来事を話していく。
 試しに再生音量を少し大きくしてみるが、序盤はそこまでノイズがないようだ。

 録音した音声が後半になるにつれてノイズの存在が明確になる。
 端子の接触が悪いマイクのようにザザッと雑音が混ざっている。
 オカルトを信じない私でも、相手が話す時だけ音声に乱れが生じるのは不気味だった。
 やがてシーリングライトの点滅に男子大学生が怯えた場面になると、ノイズの粗さが際立って大きくなった。

「ふぅ……」

 私は停止ボタンを押してゆっくりと息を吐いた。
 こじつけで考えれば罰当たりな行為をした学生を介して、何か不思議な力が働いているという見方もできる――あくまでこじつければという話だが。
 あの新聞社からたくさん依頼を受けているわけではないので、応接室を使って取材をするのは今回が初めてだった。

「電磁波……電化製品に干渉する何か……」

 不具合が出たのがICレコーダーとシーリングライトであることを踏まえれば、この線が有効だと考えられる。
 この仮説を検証するには応接室で他の電化製品を使う、あるいは数値化できる計測器で調べれば根拠となる情報が見つかる可能性はある。
 ほんのわずかに――それでも分からなければ――という考えが脳裏をよぎるが、そもそも調べてみようとすること自体がどうかしていると気づく。

「意地になって調べることでもないか」

 追求したいという気持ちは冷静になることで薄らいでいた。
 そんなことよりも記事を仕上げておくことの方が重要なのだ。
 検証が容易でない以上、こだわるようなことではない点は明白だった。

 私は仕切り直して続きを書くべくタイピングを再開した。
 思考が明瞭になると次から次へと文章が浮かんでくる。
 男子大学生の話はオカルトを信じる層には刺さりそうな内容だが、聞いたままを書き写すだけでは物足りない部分もある。
 その足りない部分を話の原型が残る状態で、読む価値のあるものに昇華させるのが書き手の役目なのだ。

 そのまま集中して書き続けると気づけば日付が変わろうとしていた。
 超常現象の存在を信じるのなら、遅い時間にホラー色のある文章を書くのは恐ろしいことなのだろう。
 だが私は意に介さないため、特に怖いとは思っていない。
 締め切りに遅れることやクオリティ不足などの理由で仕事が回ってこなくなる方がよっぽど恐ろしい――私にとっての話だが――。

「おっと、メールチェックを忘れてた」

 業務上必要な連絡が来ていることもあるため、一日に何度か確認しなければならない。
 ノートパソコンで確認するといくつか新着メールが届いているが、件名を見た感じ急ぎの連絡はないようで安心した。
 今日の執筆を終えてこれ以上何かをする気はなく、簡単にメールの内容を眺めながら対応の優先度だけ決めておく。

 削除するかしないか、返信するかしないかを考えるのは過剰な労力なので、その判断は次の朝を迎えた自分に任せるつもりだ。
 するとそこで取引先からの連絡に混ざり、個人的な用件のメールが届いているのを見つけた。
 
「あれ? 珍しいな」
 
 送り主の名前を見て意外に感じた。
 私が勤め人だった時の同僚である落合さんからのメールだった。
 年に数回電話で話す程度でお互いにメールを送る機会は少ない。 
 届いた順番で表示されていて気づかなかったが、落合さんからのメールは複数届いていた。

 もしかしたら重要な用件かもしれないため、件名のないメールを急いで開く。
 用件は単純で「電話で話がしたい」ということだった。
 どのメールも同じ内容で一番最後のメールからは何か切迫したものを感じた。

「そんなことなら電話をかければいいのに――」

 自分の口からそんな言葉が出かかったところで、ハッとなってスマートフォンを手に取る。
 執筆に集中するために電源をオフにしていたのだ。
 私は慌てて電源を入れて、起動後に操作可能になるタイミングを待つ。
 スマートフォンが立ち上がったところで、登録してある落合さんの番号をタップして電話をかけた。
 
「――はい、もしもし……」

「遅くにすいません、小木です。ちょうど今、メールに気づきました」 

「あ、ありがとう。こちらこそ何度もすまない」

 私の知っている落合さんは快活で明るい話し方をする人だが、今の落合さんからは何かに怯えるような気配が感じられた。
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