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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―
魔術医クラウス
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翌日、目覚めの鐘が鳴る頃の時間、アリシアに指定された場所に向かった。
待ち合わせ場所に到着すると、すでに彼女は待っていた。
「おはよう、アリシア」
「あらっ、迷わず来れたのね」
彼女はいつもは下ろしている髪を一つにまとめて束ねていた。
耳には銀色に輝くイアリングのようなものを身につけている。
「さあ、行きましょう」
アリシアが歩き始めたのでそれについていった。
何となく近づきがたいオーラを感じるため、自然と緊張感が生まれやすい。
セレブに会う機会などなかったので正しい接し方が分からなかった。
「……よく分からないんだけど、魔術医って何をするんだい?」
「これから行くのはクラウス先生の診療所。魔術の使い始めは加減が分からなくてマナ焼けを起こすことがあるから、不調を覚えたら診察を受けた方がいいのよ」
アリシアの言葉は少しトゲのあるようなニュアンスが感じられた。
彼女のきつめの人柄には、まだ慣れていない。
「……ああっ、そういえば、マナ焼けに気をつけるように、入門コースで説明があったような気がするな、たしか」
「ちゃんと覚えておきなさいよね。重症になると大変なんだから」
厳しい口調ではあるが、心配しているように聞こえなくもない。
アリシアは大人と呼べるほど成熟していないように見受けられた。
そんな彼女の人柄を測りかねている。
「そうか、とにかく気をつけるよ」
「うん、分かればよし」
アリシアはそういってマイペースに先へと進んでいく。
遅れないように彼女についていった。
「さあ、着いたわよ」
「ほう、ここが……」
目的地は郊外の一角にあった。
小さな看板には魔術診療所と書かれており、紺色の屋根と白壁が朝日を浴びて輝いていた。
「……あっ、予約とかよかった?」
「予約、なにそれ?」
単語は間違っていないと思うが、アリシアは戸惑うような顔を見せた。
日本の病院ほど混雑するように思えず、予約など必要ないのかもしれない。
「カナタ、入るわよ」
「あ、ああっ」
アリシアが先導するかたちで扉を開いた。そそくさとその後に続く。
建物に入ると背中を向けていた人がこちらを振り返った。
「クラウス先生、おはようございます」
「おやおや、アリシアじゃないか。今日はどうしたのかな?」
そこにいたのは銀色の髪が肩まで伸び、中性的な顔立ちをした男性だった。
医者というわりには随分若く見える。俺よりも年下なのではないか。
「カナタ……彼が、魔術の修練でマナ焼けを起こしたかもしれなくて」
「はじめまして、カナタといいます」
「魔術医のクラウスです。遠いところからいらしたようで、ようこそウィリデに。以前はアリシアに魔術を教えていたんですが、失礼なことはしていませんか?」
クラウスは微笑みながらいった。
同性のはずなのにドキリとするような美しさを感じる。
「いえいえ、そんなことはないです」
「クラウス先生、やめてください!」
アリシアは照れ隠しをするように喚いた。
初めて見る彼女の様子だった。
「冗談はさておき、一度確認してみましょう。どうぞ、こちらに」
「お、お願いします……」
そうクラウスに促されて俺は木製の椅子に腰かけた。
彼の美貌のせいなのか、すぐ目の前で相対していると緊張するというか、全身が震えるような感覚がした。
「それでは、楽にしてください」
彼は聴診器を当てるようにこちらの身体に向けて左の掌をかざした。
「……うん」
クラウスは掌を動かしながら何度か頷いた。
「クラウス先生、大丈夫ですか?」
アリシアがやや不安げな様子でたずねた。
「マナ焼けということはなさそうですが、マナに反応しやすい体質かもしれません。今も私のマナに身体が反応してしまってますね」
「……どういうことですか?」
話がむずかしくてよく分からなかった。
話の腰をおるわけにもいかず、先を聞くことにした。
「とりあえず、すぐに治癒が必要というわけではないので、今日は特に何もしません。また同じようなことがあれば、こちらに来てください」
「はい、分かりました」
俺は深々と頷いた。
緊急性がないと聞いて安心する思いだった。
「ところで、二人はどんな関係なの?」
医者というよりも一人の好青年といった感じの表情に変わり、クラウスは親しげな態度で質問してきた。
「彼とは魔術の修練が一緒なだけです」
「基礎は一通り教えたと思うけど、どうしてまた習いに行き始めたんだい?」
「社会勉強に行ってこいと父が」
二人の会話についていけず、適当に相づちを打つしかなかった。
アリシアと気さくに話せるクラウスに感心していた。
「そうか、お父上もかわいい一人娘を一人前にしたいんだろうね」
「ええと、彼女はいいところのお嬢様なんですか?」
どちらにともなく、気になっていたことをたずねてみた。
「そうだね、この国で一番偉いのが王で二番目に偉いのが大臣。その大臣の娘がアリシアだよ」
「えっ、そんなに高い身分だったの……」
粗相をしたら始末されそうなレベルではないか。
ほんの少し肝が冷える思いがした。
「わたしは……わたしはそんなに気にしてないから、普通に接してよ」
アリシアは寂しげな表情をしていた。
「そういうことみたいだから優しくしてあげてほしいな。彼女は私の妹みたいなものでもあるから」
「は、はあっ」
簡単に口約束していいものか考えてしまった。
一体、どうすればいいのだろう。
「――すみません、クラウス先生いらっしゃるかしら」
扉が開いて誰かが入ってきた。
「そうそう、マナ焼けを起こさないように慣れるまでは魔術を使いすぎない。くれぐれもそこだけは気をつけて」
「はい、分かりました」
どうやら来訪者は彼に用事があるようなので、この場を出ることにした。
「クラウス先生、それではまた」
「ありがとうございました。失礼します」
俺はアリシアと診療所を後にした。
待ち合わせ場所に到着すると、すでに彼女は待っていた。
「おはよう、アリシア」
「あらっ、迷わず来れたのね」
彼女はいつもは下ろしている髪を一つにまとめて束ねていた。
耳には銀色に輝くイアリングのようなものを身につけている。
「さあ、行きましょう」
アリシアが歩き始めたのでそれについていった。
何となく近づきがたいオーラを感じるため、自然と緊張感が生まれやすい。
セレブに会う機会などなかったので正しい接し方が分からなかった。
「……よく分からないんだけど、魔術医って何をするんだい?」
「これから行くのはクラウス先生の診療所。魔術の使い始めは加減が分からなくてマナ焼けを起こすことがあるから、不調を覚えたら診察を受けた方がいいのよ」
アリシアの言葉は少しトゲのあるようなニュアンスが感じられた。
彼女のきつめの人柄には、まだ慣れていない。
「……ああっ、そういえば、マナ焼けに気をつけるように、入門コースで説明があったような気がするな、たしか」
「ちゃんと覚えておきなさいよね。重症になると大変なんだから」
厳しい口調ではあるが、心配しているように聞こえなくもない。
アリシアは大人と呼べるほど成熟していないように見受けられた。
そんな彼女の人柄を測りかねている。
「そうか、とにかく気をつけるよ」
「うん、分かればよし」
アリシアはそういってマイペースに先へと進んでいく。
遅れないように彼女についていった。
「さあ、着いたわよ」
「ほう、ここが……」
目的地は郊外の一角にあった。
小さな看板には魔術診療所と書かれており、紺色の屋根と白壁が朝日を浴びて輝いていた。
「……あっ、予約とかよかった?」
「予約、なにそれ?」
単語は間違っていないと思うが、アリシアは戸惑うような顔を見せた。
日本の病院ほど混雑するように思えず、予約など必要ないのかもしれない。
「カナタ、入るわよ」
「あ、ああっ」
アリシアが先導するかたちで扉を開いた。そそくさとその後に続く。
建物に入ると背中を向けていた人がこちらを振り返った。
「クラウス先生、おはようございます」
「おやおや、アリシアじゃないか。今日はどうしたのかな?」
そこにいたのは銀色の髪が肩まで伸び、中性的な顔立ちをした男性だった。
医者というわりには随分若く見える。俺よりも年下なのではないか。
「カナタ……彼が、魔術の修練でマナ焼けを起こしたかもしれなくて」
「はじめまして、カナタといいます」
「魔術医のクラウスです。遠いところからいらしたようで、ようこそウィリデに。以前はアリシアに魔術を教えていたんですが、失礼なことはしていませんか?」
クラウスは微笑みながらいった。
同性のはずなのにドキリとするような美しさを感じる。
「いえいえ、そんなことはないです」
「クラウス先生、やめてください!」
アリシアは照れ隠しをするように喚いた。
初めて見る彼女の様子だった。
「冗談はさておき、一度確認してみましょう。どうぞ、こちらに」
「お、お願いします……」
そうクラウスに促されて俺は木製の椅子に腰かけた。
彼の美貌のせいなのか、すぐ目の前で相対していると緊張するというか、全身が震えるような感覚がした。
「それでは、楽にしてください」
彼は聴診器を当てるようにこちらの身体に向けて左の掌をかざした。
「……うん」
クラウスは掌を動かしながら何度か頷いた。
「クラウス先生、大丈夫ですか?」
アリシアがやや不安げな様子でたずねた。
「マナ焼けということはなさそうですが、マナに反応しやすい体質かもしれません。今も私のマナに身体が反応してしまってますね」
「……どういうことですか?」
話がむずかしくてよく分からなかった。
話の腰をおるわけにもいかず、先を聞くことにした。
「とりあえず、すぐに治癒が必要というわけではないので、今日は特に何もしません。また同じようなことがあれば、こちらに来てください」
「はい、分かりました」
俺は深々と頷いた。
緊急性がないと聞いて安心する思いだった。
「ところで、二人はどんな関係なの?」
医者というよりも一人の好青年といった感じの表情に変わり、クラウスは親しげな態度で質問してきた。
「彼とは魔術の修練が一緒なだけです」
「基礎は一通り教えたと思うけど、どうしてまた習いに行き始めたんだい?」
「社会勉強に行ってこいと父が」
二人の会話についていけず、適当に相づちを打つしかなかった。
アリシアと気さくに話せるクラウスに感心していた。
「そうか、お父上もかわいい一人娘を一人前にしたいんだろうね」
「ええと、彼女はいいところのお嬢様なんですか?」
どちらにともなく、気になっていたことをたずねてみた。
「そうだね、この国で一番偉いのが王で二番目に偉いのが大臣。その大臣の娘がアリシアだよ」
「えっ、そんなに高い身分だったの……」
粗相をしたら始末されそうなレベルではないか。
ほんの少し肝が冷える思いがした。
「わたしは……わたしはそんなに気にしてないから、普通に接してよ」
アリシアは寂しげな表情をしていた。
「そういうことみたいだから優しくしてあげてほしいな。彼女は私の妹みたいなものでもあるから」
「は、はあっ」
簡単に口約束していいものか考えてしまった。
一体、どうすればいいのだろう。
「――すみません、クラウス先生いらっしゃるかしら」
扉が開いて誰かが入ってきた。
「そうそう、マナ焼けを起こさないように慣れるまでは魔術を使いすぎない。くれぐれもそこだけは気をつけて」
「はい、分かりました」
どうやら来訪者は彼に用事があるようなので、この場を出ることにした。
「クラウス先生、それではまた」
「ありがとうございました。失礼します」
俺はアリシアと診療所を後にした。
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