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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―

調査に向かう二人

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 建物から外に出ると、広がる雲の切れ目から日射しが降り注ぐような天気だった。
 歩き始めて少し経ったところで、エルネスが懐から一枚の紙を取りだした。

「これがウィリデ近郊の地図です。今から向かうのは東の方にある畑です」

 この世界に来て初めてまともな地図を目にした。他で見たものは縮尺がバラバラでどれが何を指すのか分からないので、読んでいるとイライラしてくる始末で理解できなかった。 
   
「歩いてそうかかる距離じゃありません」
「分かりました。そういえば、ミノルウサギも捕まえて売るんですか?」

 素朴な疑問だった。
 捕まえるだけでなく売れるのなら収入が増える。

「どちらかといえば捕まえた本人が食べることが多いでしょうね。目立たないところに穴を掘ることが多く、食肉としての希少価値だけでいえばデンスイノシシよりも高いと思います」
「それじゃあ、たくさん捕まえたら儲かりそうですね」

 何だかやる気が出てくるような話だった。
 
「今回は僕たちが引き受けましたが、安全な分だけこの手の依頼は人気があります。あとはそれなりの値がつくということは簡単に取れないとも言えるでしょうから。肉として売るのはおまけ程度に考えています」

 そう語るエルネスの顔はプロフェッショナルに見えた。

 彼の話を聞きながら、異世界的市場の原理があることを知り、この世界でも楽に儲けるのはむずかしいと痛感した。なかなか世知辛いものだ。

 会話している間は気が紛れたが、これからウサギ退治に行くことへのプレッシャーがじわりじわりとかかっていた。 
 
 街を通り過ぎて整備された歩道が砂利道に変わる頃、視線の先に畑が見えた。
 背丈の高い茎に葉がついていて、頭からは黄色い穂が伸びている。

「……へえ、とうもろこしか。この世界にもあるんだ」
「色々な用途があるので、育てている畑は多いですよ」
「ここまで聞いた通りなら、畑のどこかにウサギがいるってことですよね」
 
 遠目にはその兆候が確認できなかった。
 そう簡単に見つかるものでもないということか。

「穴に隠れていることが多いですから、隠れ家を探すことから始めましょう」
「はい、そうですね」

 畑の近くに来てみたが、それらしき穴はすぐに見つからなかった。
 エルネスは周囲の様子を入念に確認していた。
 
「手分けして穴を探しましょうか。それらしきものがあったら呼んでください」

 俺は左手、エルネスは右手に分かれて探し始めた。
 野生動物がそう易々と見つかるものかと思いつつ、地面の変化に注意を配った。

「……あ、あれっ!?」

 数十メートル進んだところで、明らかに不自然な穴を見つけた。 
 畑の脇の地面にぽっかりと空いて、直径は50センチ以上ある。

 畝から離れているからよいものの、こんな穴が空いてしまえば作物は育たないだろう。早急にと依頼がくるのも納得できた。

 俺は小走りでエルネスのところに向かった。

「――エルネス。向こうにあったんです、穴が」
「おっ、そうですか。それでは見てみましょう」
 
 俺とエルネスは足早にさっきの場所へ移動した。
 エルネスが穴らしき箇所を確認に向かう。

「たしかに、これはミノルウサギが掘った穴でしょう。あとは反対側の穴を見つける必要がありますね」

 エルネスはそういって歩き始めた。

「どうやって捕まえるというか、退治するんですか」
「二人いれば至って簡単な作業です。一人が穴から追い出し、もう一人が出てきたものを対処する」
 
 エルネスは穴をじっと見つめながらいった。
 仕事モードに入っているようで、表情が真剣な感じがする。

「やっぱり、俺が後者なんですよね」
「ははっ、御冗談を。早速やってみることにしましょう。畑を焼き払うのはまずいですが、少々の損害は目をつぶるとあったので、火でも水でも好きな魔術を試してください」
 
 彼はにこやかにそう言い残すと、反対の穴を探すべく離れていった。
 俺は心細い気持ちになりながら、魔術の準備をすることにした。
 
 たとえウサギとはいえ、未知なる生物というのは怖ろしい。
 駆除対象になるということは、それなりに脅威になりうるはずなのだ。

 俺の頭の中では想像上のミノルウサギが様々な姿で登場していた。
 怪獣並みに巨大なものから、かわいらしい定番の白いやつまで。

 ――どうか、危険でないことを祈る。
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