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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―
日本人との再会 その2
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「国内の調査は進んでいるのだが、エルフたちに協力してもらえるところまでは至らず、森の中や向こうまで進むことができない。国王とエルフの長が対等に近い関係にあるから、国王の鶴の一声というわけにはいかないみたいだ」
村川は悔しそうな表情をしていた。
それを見てどうにか力になれないかと思った。
「そうだな、せっかくなら他の国を調べたいよな。よかったらエルフに知り合いがいるから頼んでみようか。上手くいくか分からないけど」
俺はエレノア先生やエルネスのことを思い浮かべていた。
彼らなら協力してくれる可能性は高いだろう。
「それはありがたい。そうしてもらえるならすごく助かる。僕の狭い行動範囲ではエルフと知り合う機会はなかったから」
「とりあえず、森を通れるように許可がほしいんだな?」
「ああっ、そうだ。外に出てもっと新しいことを調べてみたい」
村川は食事の手を止めて強い眼差しを向けていた。
彼の目は今も変わらず、野心と熱意に満ちていた。
俺とは違ったかたちでこの世界に魅せられているのだろう。
地球の常識は通じず、謎を感じることが多々ある。
「――ところで、俺からも頼みがある」
「なんだ? やっぱり戻りたいとか?」
「……そのウサギ肉、ひとくち分けてもらえる?」
「そんなことか、好きにしてくれ」
村川は気の抜けたような顔をして笑みを浮かべた。
彼は優秀な研究者ではあるが、日常ならこんな顔もする。
「それじゃあ、ちょいと失礼」
彼が切ったのとは反対からナイフで切り分ける。
ナイフ自体の切れ味がよいのもあるが、簡単に刃が通った。
小さめに分けた肉をフォークに刺して口へと運んだ。
口に含んだ瞬間、香草の芳しい風味が広がる。
味付けは上品で好ましく、肝心のウサギ肉は鶏肉に近い味わいだ。
イノシシが大味だったので、こちらの方が高級料理という趣を感じる。
フランツが高い方の料理を村川に推したのは複雑な気分ではあるが、親しみをこめて俺にイノシシ料理を、客人として扱うために村川にウサギ料理をということなのだと思う。それに忙しい中で粗相のないようにという判断もあったはずだ。
「それじゃあ混み合ってるし、そろそろ出るか」
「――フランツ、会計を頼む」
注文のピークがすぎたようで、彼は他の客と談笑していた。
「おう、客人から金は取れねえって」
「今までの分もあるし、今日は払わせてくれ。いくらなんだい?」
俺はできる限り真摯な態度でいった。
タダ飯を続けるのは何だか申し訳ない。
「そうか分かった。イノシシのステーキは5ドロンだな」
俺は持っていた小袋から5枚の硬貨を取り出して手渡した。
何とも言えないすっきりするような気分だった。
「お客さん、あんたも同じだろ。だったら遠慮はいらねえ」
「いや、この国の人にも生活というものがあるだろう。国をあげて僕たちを厚遇してくれるのはありがたいが、こういうことはちゃんとしておきたい。それで今日の料理はいくらなんだ?」
村川は極めて真面目な表情だった。
これまで見てきた限りでは、彼が意思を曲げることは非常に少ない。
「そうか、ウサギ料理は少し高いから、初めからサービスするつもりだったんだけどな。まあ、払いたいっていうんなら払ってくれ。8ドロンだ」
それを聞いた村川はポケットから財布を取り出して、日本の小銭を使うような感じで8枚のドロン硬貨を手渡した。フランツは深く頷いてそのお金を受け取った。
「二人いて二人ともそうってことは義理堅い国で育ったんだな」
「いや、至って普通のことだ」
「たしかに特別なことではないかな」
二人とも日本語になっていたので、フランツは首を傾げた。
「定期的にイノシシやウサギ以外にも美味い食材が入ることがあるから、また二人で来てくれよ。それじゃあな」
「ありがとうフランツ、また来るよ」
「ごちそうさま」
俺と村川はフランツの店を後にした。
外に出るとすでに日が沈んでいた。魔力灯が街の中を明るく照らしている。
騒がしいのはフランツのところだけで、通りはずいぶん静かだった。
「知り合いのエルフに許可を取る件、忘れないでくれ」
「ああっ、分かった。あんまり当てにしないでほしいけどな」
「それもそうだな。日本ならこれから一杯と行きたいところだが、宿舎にBJを待機させてるからな。今日は真っすぐ帰るとしよう」
村川はポケットに手を入れて歩き始めた。
周囲の照明に照らされて、雰囲気のある後ろ姿に見える。
「それじゃあ、またな」
俺がそう言うと村川は手を振って去っていった。
別れ際にお前のおかげで異世界に来れてよかったと言おうと思ったが、さすがに照れくさいのでやめておくことにした。青春ごっこをするには俺たちは年をとりすぎている。
頭上に目をやると無数の星が瞬き、俺や村川、フランツたちを祝福しているように見えた。
地球ではないこの場所で同じように星が見えるのは不思議に思え、この頭では想像もつかない神秘が起きているのだと感動した。
村川は悔しそうな表情をしていた。
それを見てどうにか力になれないかと思った。
「そうだな、せっかくなら他の国を調べたいよな。よかったらエルフに知り合いがいるから頼んでみようか。上手くいくか分からないけど」
俺はエレノア先生やエルネスのことを思い浮かべていた。
彼らなら協力してくれる可能性は高いだろう。
「それはありがたい。そうしてもらえるならすごく助かる。僕の狭い行動範囲ではエルフと知り合う機会はなかったから」
「とりあえず、森を通れるように許可がほしいんだな?」
「ああっ、そうだ。外に出てもっと新しいことを調べてみたい」
村川は食事の手を止めて強い眼差しを向けていた。
彼の目は今も変わらず、野心と熱意に満ちていた。
俺とは違ったかたちでこの世界に魅せられているのだろう。
地球の常識は通じず、謎を感じることが多々ある。
「――ところで、俺からも頼みがある」
「なんだ? やっぱり戻りたいとか?」
「……そのウサギ肉、ひとくち分けてもらえる?」
「そんなことか、好きにしてくれ」
村川は気の抜けたような顔をして笑みを浮かべた。
彼は優秀な研究者ではあるが、日常ならこんな顔もする。
「それじゃあ、ちょいと失礼」
彼が切ったのとは反対からナイフで切り分ける。
ナイフ自体の切れ味がよいのもあるが、簡単に刃が通った。
小さめに分けた肉をフォークに刺して口へと運んだ。
口に含んだ瞬間、香草の芳しい風味が広がる。
味付けは上品で好ましく、肝心のウサギ肉は鶏肉に近い味わいだ。
イノシシが大味だったので、こちらの方が高級料理という趣を感じる。
フランツが高い方の料理を村川に推したのは複雑な気分ではあるが、親しみをこめて俺にイノシシ料理を、客人として扱うために村川にウサギ料理をということなのだと思う。それに忙しい中で粗相のないようにという判断もあったはずだ。
「それじゃあ混み合ってるし、そろそろ出るか」
「――フランツ、会計を頼む」
注文のピークがすぎたようで、彼は他の客と談笑していた。
「おう、客人から金は取れねえって」
「今までの分もあるし、今日は払わせてくれ。いくらなんだい?」
俺はできる限り真摯な態度でいった。
タダ飯を続けるのは何だか申し訳ない。
「そうか分かった。イノシシのステーキは5ドロンだな」
俺は持っていた小袋から5枚の硬貨を取り出して手渡した。
何とも言えないすっきりするような気分だった。
「お客さん、あんたも同じだろ。だったら遠慮はいらねえ」
「いや、この国の人にも生活というものがあるだろう。国をあげて僕たちを厚遇してくれるのはありがたいが、こういうことはちゃんとしておきたい。それで今日の料理はいくらなんだ?」
村川は極めて真面目な表情だった。
これまで見てきた限りでは、彼が意思を曲げることは非常に少ない。
「そうか、ウサギ料理は少し高いから、初めからサービスするつもりだったんだけどな。まあ、払いたいっていうんなら払ってくれ。8ドロンだ」
それを聞いた村川はポケットから財布を取り出して、日本の小銭を使うような感じで8枚のドロン硬貨を手渡した。フランツは深く頷いてそのお金を受け取った。
「二人いて二人ともそうってことは義理堅い国で育ったんだな」
「いや、至って普通のことだ」
「たしかに特別なことではないかな」
二人とも日本語になっていたので、フランツは首を傾げた。
「定期的にイノシシやウサギ以外にも美味い食材が入ることがあるから、また二人で来てくれよ。それじゃあな」
「ありがとうフランツ、また来るよ」
「ごちそうさま」
俺と村川はフランツの店を後にした。
外に出るとすでに日が沈んでいた。魔力灯が街の中を明るく照らしている。
騒がしいのはフランツのところだけで、通りはずいぶん静かだった。
「知り合いのエルフに許可を取る件、忘れないでくれ」
「ああっ、分かった。あんまり当てにしないでほしいけどな」
「それもそうだな。日本ならこれから一杯と行きたいところだが、宿舎にBJを待機させてるからな。今日は真っすぐ帰るとしよう」
村川はポケットに手を入れて歩き始めた。
周囲の照明に照らされて、雰囲気のある後ろ姿に見える。
「それじゃあ、またな」
俺がそう言うと村川は手を振って去っていった。
別れ際にお前のおかげで異世界に来れてよかったと言おうと思ったが、さすがに照れくさいのでやめておくことにした。青春ごっこをするには俺たちは年をとりすぎている。
頭上に目をやると無数の星が瞬き、俺や村川、フランツたちを祝福しているように見えた。
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