140 / 237
ありふれた異世界 ―エルフに頼まれてドラゴン退治―
しつこいエルフは粘着エルフに進化しました その1
しおりを挟む
カレンが去ってから、俺とクラウスでアエス銅山の使用許可を取りに行った。
シモンは彼女が再来した時のために、ウィリデに滞在することになった。
出世したというほどではないものの、カルマンとの戦いで活躍したおかげで話が通りやすいのは便利だった。
結論からいえば、アエス銅山は使う予定がないため、ドラゴンの住処にしてもよいという許可が出された。
それから、大臣公認の立ち会い人による確認後、銅山に巨体が収まりそうな横穴が見つかってそこを根城にすることになった。
カレンの捨て台詞を気にかけていたものの、何事もない日々が続いた。
ある日、空いた時間にエルネスを連れてドラゴンの様子を見に行くことにした。
アエス銅山までは使用許可の出ている乗り慣れた馬で向かった。
ちなみにクラウスは魔術医の仕事が多忙で来れそうになかった。
ウィリデの市街地から徒歩では時間がかかるが、今回のように馬が使えると楽に移動することができる。
運転免許を取り立てで車を使い始めた頃の感覚に似ている気がした。
「……愛馬に乗り慣れると歩いて移動するのが面倒になりそうだ」
思わずそんな言葉をこぼすほど、快適さに大きな差があった。
とはいっても、貴重品であることに変わりはないので、日常使いの許可が下りることはないだろう。
人の通ることが少ない、やや荒れ気味の道を抜けて銅山の麓についた。
「いつもなら案内してもらう側ですけど、今回は俺がつれてきます」
「ええ、お願いします。何だか不思議な感じがしますね」
エルネスはドラゴンがいる場所を知らない。
ここから彼を先導する必要がある。
緩やかな坂を上って、少しずつ高い方へと進んでいく。
ところどころ洞窟の入り口が見えているが、馬は暗がりを嫌うみたいで自然と距離をおいて歩いていた。
それから数百メートル進んだところで、俺たちの馬が鳴き声を上げた。
おそらく、ドラゴンが近くにいるのでこれ以上進みたくないという反応だろう。
「エルネス、もう少しでドラゴンのところに着きます」
「やはりそうですか。馬が拒否しているのでしょう」
彼は納得した様子で馬を下りた。
俺もそれに続いた。
「ここから歩いてすぐなので」
「それでは行きましょう」
念のため、俺たちは紐を使って馬が逃げないようにしておいた。
万が一、ドラゴンの気配に怯えて逃げてしまったら面目が立たない。
そこから歩を進めると、少しずつ霧が濃くなるのを感じた。
「今まではこんなことなかったんですけど」
「ミストですね。マナの密度が濃かったり、魔獣がいる場所に発生することがあります」
エルネスから説明があった。
魔獣=明らかにドラゴンだと思うが、初めてなので断定はできない。
視界に注意して進むと、霞んだ視界の向こうにドラゴンのいる横穴が見えた。
遠くからは見分けにくかったが、近づいたところですぐ分かった。
「おーい、元気にしてますか?」
「ごふっ、カナタじゃん。わし、取り込み中だからちょっと待って」
ドラゴンが何かにむせたように聞こえた。
そして、どこからか咀嚼音のようなものが響いている。
……もしや。
「あれ、取りこみ中って食事中なんですか?」
「うん、まあそんな感じ。人様に見せるもんじゃないでしょ」
たしかに真っ当な意見だった。
シモンは彼女が再来した時のために、ウィリデに滞在することになった。
出世したというほどではないものの、カルマンとの戦いで活躍したおかげで話が通りやすいのは便利だった。
結論からいえば、アエス銅山は使う予定がないため、ドラゴンの住処にしてもよいという許可が出された。
それから、大臣公認の立ち会い人による確認後、銅山に巨体が収まりそうな横穴が見つかってそこを根城にすることになった。
カレンの捨て台詞を気にかけていたものの、何事もない日々が続いた。
ある日、空いた時間にエルネスを連れてドラゴンの様子を見に行くことにした。
アエス銅山までは使用許可の出ている乗り慣れた馬で向かった。
ちなみにクラウスは魔術医の仕事が多忙で来れそうになかった。
ウィリデの市街地から徒歩では時間がかかるが、今回のように馬が使えると楽に移動することができる。
運転免許を取り立てで車を使い始めた頃の感覚に似ている気がした。
「……愛馬に乗り慣れると歩いて移動するのが面倒になりそうだ」
思わずそんな言葉をこぼすほど、快適さに大きな差があった。
とはいっても、貴重品であることに変わりはないので、日常使いの許可が下りることはないだろう。
人の通ることが少ない、やや荒れ気味の道を抜けて銅山の麓についた。
「いつもなら案内してもらう側ですけど、今回は俺がつれてきます」
「ええ、お願いします。何だか不思議な感じがしますね」
エルネスはドラゴンがいる場所を知らない。
ここから彼を先導する必要がある。
緩やかな坂を上って、少しずつ高い方へと進んでいく。
ところどころ洞窟の入り口が見えているが、馬は暗がりを嫌うみたいで自然と距離をおいて歩いていた。
それから数百メートル進んだところで、俺たちの馬が鳴き声を上げた。
おそらく、ドラゴンが近くにいるのでこれ以上進みたくないという反応だろう。
「エルネス、もう少しでドラゴンのところに着きます」
「やはりそうですか。馬が拒否しているのでしょう」
彼は納得した様子で馬を下りた。
俺もそれに続いた。
「ここから歩いてすぐなので」
「それでは行きましょう」
念のため、俺たちは紐を使って馬が逃げないようにしておいた。
万が一、ドラゴンの気配に怯えて逃げてしまったら面目が立たない。
そこから歩を進めると、少しずつ霧が濃くなるのを感じた。
「今まではこんなことなかったんですけど」
「ミストですね。マナの密度が濃かったり、魔獣がいる場所に発生することがあります」
エルネスから説明があった。
魔獣=明らかにドラゴンだと思うが、初めてなので断定はできない。
視界に注意して進むと、霞んだ視界の向こうにドラゴンのいる横穴が見えた。
遠くからは見分けにくかったが、近づいたところですぐ分かった。
「おーい、元気にしてますか?」
「ごふっ、カナタじゃん。わし、取り込み中だからちょっと待って」
ドラゴンが何かにむせたように聞こえた。
そして、どこからか咀嚼音のようなものが響いている。
……もしや。
「あれ、取りこみ中って食事中なんですか?」
「うん、まあそんな感じ。人様に見せるもんじゃないでしょ」
たしかに真っ当な意見だった。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる