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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

新しい目的地

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 俺とメリルはアルヒ村を出て移動を開始した。

 村の周辺は見晴らしのいい平野で、遠くの方まで見渡すことができる。
 風魔術を使えば移動時間を短縮できるのだが、奥の手を無闇に教えるわけにもいかず、メリルには話していなかった。

 というわけで、ここから徒歩で隣町に向かうことになっている。

「アルヒは小さな農村でしたが、目的地のメソンはもう少し栄えています」
「なるほどね。そういえば、メリルはこの近くの出身なの?」
「……わたしの住んでいた村はモンスターの襲撃を受けて壊滅しました」

 ――ああっ、まずい。地雷を踏んでしまった。

 声のトーンが下がった彼女を見て、触れられたくない話題だと判断した。
 
「何だか話しづらいことを……ごめん」
「いえ、気にしないでください。いずれ話すことになったかもしれませんから」
 
 メリルはこちらを気遣うように、かすかな微笑みを浮かべた。

「この辺りはまだいい方なんです。支配がひどいところは生きるか死ぬかで、最終手段として抗うしかなくなってしまった地域もあります」

 その中に彼女の故郷も含まれるのだと理解した。
 この話題は気が重くなりそうなので、ひとまず口を閉じておくことにした。

 
 ところどころ荒れていたり、草が伸びたりした街道を歩きづつけると、先の方に町らしきものが見えてきた。

「あそこがメソンです。中にはモンスターがいるので、できる限り目立たないようにお願いします」
「はい、了解」

 途中までは横並びに歩いていたが、町が近くになってからはメリルが先導するかたちで移動していた。

 オークを倒したばかりではあるものの、情報が伝わっていれば警戒されている可能性もある。
 まずは何事もなく町に入れたらと思うが。

 徐々に距離が狭まり、町の入口にたどり着いた。
 周囲を低い壁で囲まれており、仕切られた内側が町の区画のようだ。

 アルヒ村の民家は質素な外観だったが、この町の民家は少し立派な雰囲気だった。木造であることは共通している。

 徒歩で小一時間ほどの距離しか離れていないのに、アルヒとメソンに格差のようなものを感じて不思議に思った。

 産業の違いか、あるいは身分の違いなのか。
 どんな背景があるかを推し測るには情報が少なすぎた。

「メソンの人たちも強制労働に駆り出されているので、この時間は人通りが少ないですね。女性と子どもしかいないようです」

 メリルについて町に入ると、何ともいえない寂しげな空気を感じた。
 
 いくらか通行人がいるものの、ほとんどの人が元気がないように見えた。
 
「アルヒと同じか、それ以上にヤバい雰囲気だな」
「慣れないかもしれませんが、この周辺はどこも似たような様子です」 
   
 メリルは淡々とした口調で言った。
 彼女にとっては当たり前でも、俺からすれば気持ちのいいものではなかった。
 
 とりあえず、モンスターが見当たらないのはよかったが、これからどうするつもりなのかメリルに詳しく確認しなければ。

 俺が質問するとメリルが説明を始めた。

「ここはオークほど危険なモンスターはいないという情報で、わたしが一人で来る予定でした。しかし、カナタさんが力を貸してくれることになり、二人で到着したというわけです」

 そういえば、オーク以外にどんな種類のモンスターがいるのだろう。
 RPGの知識は多少あるものの、実際に存在する環境では想像もつかない。

「ちなみに、ここにはどんなモンスターが?」
「以前調べに来た時と変わりなければ、ゴブリンが数体のはずです」
「なるほど、ゴブリンか」

 オークに続いてゴブリンとは……まさにゲームの世界に迷いこんだような錯覚を抱かせる組み合わせじゃないか。

 現実問題として、二人で複数の敵を処理しなければいけないとなると、作戦を立てるべきなのか検討した方がいいだろう。

「そのうちにゴブリンが戻ってくるだろうから、先に作戦を立てておこう」
「はい、そうですね」

 俺たちは、町中の人目がつきにくそうな路地に移動を始めた。
 町の出入り口は二ヶ所あるため、そこから離れた場所を選ぶことにした。

 少し歩くうちに、ちょうどいい場所が見つかった。 
 民家の裏手に何本か木が生えており、その間に身を潜めるように腰を下ろした。 
 
「オークの時は楽にいったけど、あまり油断しない方がいい」
「カナタさんは実戦でも物怖じしなかったので、戦いに慣れていますね」
「うーん、そうかな。とにかく、敵の方が多い可能性もあるみたいだから、討ち漏らしたり、反撃にあったりしないようにした方がいい」

 この状況では一蓮托生に近いため、多少は手の内を明かすことに決めた。 
 
 俺が氷魔術で敵の動きを止めて、動けない敵をメリルが仕留めるというシンプルな作戦にしてもらうように説明した。

「氷の力で敵の動きを止められるなんてすごいですね」
「俺の周りの魔術師なら、そんなに難しいことではないよ」

 謙遜でも何でもなく、エルネスや他の魔術師なら十分可能な技法だ。
 
 今回の作戦は大まかな流れが決定した。
 ここのモンスターが戻ってくるまで、隠れたまま待機することにした。
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