154 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
メリルの組織 ―始まりの青―
しおりを挟む
ゴブリン退治を終えた俺たちに町の代表が宿を用意してくれた。
その言葉に甘えて一夜を明かした後、メソンの町を出発した。
昨日までは晴れていたが、今日の空は曇っていた。
雲の切れ間から太陽が見えているので、すぐに天気が崩れる心配はなさそうだ。
二人で歩きながら、話題は自然と行き先に関する内容になる。
「次の町はどんなところ?」
「次はタラサという町です。海に面していて、港があって漁業が盛んですね」
「なるほど、漁師町って感じのところか」
「当然ですが、そこでもモンスターが町の人を支配していて、漁師の人たちも強制的に働かされているようです」
彼女はアルヒに潜伏していたわけだが、わりと情報に精通している。
それが少し不思議に思えた。
「メリルの情報はどこから仕入れたんだい?」
「解放を目指す仲間からです」
「ふーん、そうか。それなりの組織みたいだけど、名前とかはないのかな?」
「……名前ですか?」
「うん、そう」
メリルは歩きながら難しい表情になった。
俺としては簡単な質問のつもりだったが、どうしてしまったのだろう。
「例えば、モンスターからの支配に対するレジスタンスとかありそうだけど」
「はい、レジスタンスですか……」
「今のは例えだけど、組織なら名前とかないと呼びにくい気がする」
「わたしは考えたこともありませんでした」
組織名=解放戦線などは適した言葉な気がしたが、適当な現地語が思い浮かばないので、提案は控えておくことにした。
マンガやゲームではそういった団体や組織は中二病っぽい名前がついていたりするものだが、メリルたちのように切迫した状況では考えている余裕などないのかもしれない。
「……すみません。わたし、嘘をつきました」
「嘘? ……ええと、どれについて?」
メリルが嘘をついたことに全く気づかなかった。
「組織の名前です」
「もしかして、名前があるの?」
「一応、カナタさんは部外者ではあるので教えてよいものか考えたのですが、ここまで手伝って頂いたのに隠すのは失礼かと……」
彼女は何やら口ごもっている。
何か言いづらいことでもあるのだろうか。
一度、話題を変えることにした。
旅の仲間のような彼女を悩ませるようなことは本意ではなかった。
「ところで、メリルは何歳?」
「わたしですか? 18歳です」
「えっ、そうなの」
「意外でしたか?」
「うん、もう少し年上かと」
細身で大人びた顔立ちをしているせいか、二十歳ぐらいにはなると思っていた。
それに加えて、時折見せる射抜くような眼差しは十代のものに見えない。
「カナタさんは何歳ですか?」
「俺は三十歳だよ」
「ずいぶん若く見えますね」
「そう、それはありがとう」
ウィリデにいる時に鏡を見て気づいた。
体内を流れるマナの量が増加したせいなのか、見た目年齢が若返っていた。
身体的な変化は実感していないものの、異世界の驚異を感じる出来事だった。
「――あの、組織の名前なのですが……」
「あっ、無理して話さなくてもいいよ。機密事項とかもあるだろうし」
「『始まりの青』という名前です……」
メリルはぼそぼそとした口調で教えてくれた。
始まりの青という名に、何か秘密が隠されているのだろうか。
「……少しキザではないですか?」
「そうかな? そんなに違和感ないと思うけど」
ようやく分かったことだが、彼女はカッコつけた名前だと感じているようだ。
「解放のための戦いが始まった場所は、青い花が咲き誇る美しい都市でした。今ではそこはモンスターに奪われてしまったのですが、始まりの地を忘れないようにその名前になったそうです」
メリルは真顔で経緯を説明してくれた。
「うん、普通にいい話だよ」
涙を流して感動するほどではないが、胸を打つ内容ではあると感じた。
しばらく歩き続けるうちに、周辺の傾向について気づく点があった。
メソンから次の町につながる道は窪みや小さな穴があり、雑草が伸び放題で落ち葉や小枝も落ち放題だった。
ウィリデ周辺の街道は行商人の行き来があり、現地民も日常的に通ることで自然と整備されるような印象だった。
しかし、この道は通行人が少ないことで、荒れ具合が時間と共にひどくなっているのではないだろうか。
馬を使うわけではないので、そこまで大きな問題ではない。
歩きにくいとか転びそうとか、些細といえば些細なことだった。
「青い花が咲き誇る場所か、一度行ってみたいな」
「モンスターたちにとって中核地点なので、解放の戦いを続けていく中で訪れることになるかもしれません」
「そうか、そこも解放できるといいよね」
「ええ、全ての地域を解放できることを願っています」
俺とメリルは会話をしながら、荒れた街道を歩いていった。
その言葉に甘えて一夜を明かした後、メソンの町を出発した。
昨日までは晴れていたが、今日の空は曇っていた。
雲の切れ間から太陽が見えているので、すぐに天気が崩れる心配はなさそうだ。
二人で歩きながら、話題は自然と行き先に関する内容になる。
「次の町はどんなところ?」
「次はタラサという町です。海に面していて、港があって漁業が盛んですね」
「なるほど、漁師町って感じのところか」
「当然ですが、そこでもモンスターが町の人を支配していて、漁師の人たちも強制的に働かされているようです」
彼女はアルヒに潜伏していたわけだが、わりと情報に精通している。
それが少し不思議に思えた。
「メリルの情報はどこから仕入れたんだい?」
「解放を目指す仲間からです」
「ふーん、そうか。それなりの組織みたいだけど、名前とかはないのかな?」
「……名前ですか?」
「うん、そう」
メリルは歩きながら難しい表情になった。
俺としては簡単な質問のつもりだったが、どうしてしまったのだろう。
「例えば、モンスターからの支配に対するレジスタンスとかありそうだけど」
「はい、レジスタンスですか……」
「今のは例えだけど、組織なら名前とかないと呼びにくい気がする」
「わたしは考えたこともありませんでした」
組織名=解放戦線などは適した言葉な気がしたが、適当な現地語が思い浮かばないので、提案は控えておくことにした。
マンガやゲームではそういった団体や組織は中二病っぽい名前がついていたりするものだが、メリルたちのように切迫した状況では考えている余裕などないのかもしれない。
「……すみません。わたし、嘘をつきました」
「嘘? ……ええと、どれについて?」
メリルが嘘をついたことに全く気づかなかった。
「組織の名前です」
「もしかして、名前があるの?」
「一応、カナタさんは部外者ではあるので教えてよいものか考えたのですが、ここまで手伝って頂いたのに隠すのは失礼かと……」
彼女は何やら口ごもっている。
何か言いづらいことでもあるのだろうか。
一度、話題を変えることにした。
旅の仲間のような彼女を悩ませるようなことは本意ではなかった。
「ところで、メリルは何歳?」
「わたしですか? 18歳です」
「えっ、そうなの」
「意外でしたか?」
「うん、もう少し年上かと」
細身で大人びた顔立ちをしているせいか、二十歳ぐらいにはなると思っていた。
それに加えて、時折見せる射抜くような眼差しは十代のものに見えない。
「カナタさんは何歳ですか?」
「俺は三十歳だよ」
「ずいぶん若く見えますね」
「そう、それはありがとう」
ウィリデにいる時に鏡を見て気づいた。
体内を流れるマナの量が増加したせいなのか、見た目年齢が若返っていた。
身体的な変化は実感していないものの、異世界の驚異を感じる出来事だった。
「――あの、組織の名前なのですが……」
「あっ、無理して話さなくてもいいよ。機密事項とかもあるだろうし」
「『始まりの青』という名前です……」
メリルはぼそぼそとした口調で教えてくれた。
始まりの青という名に、何か秘密が隠されているのだろうか。
「……少しキザではないですか?」
「そうかな? そんなに違和感ないと思うけど」
ようやく分かったことだが、彼女はカッコつけた名前だと感じているようだ。
「解放のための戦いが始まった場所は、青い花が咲き誇る美しい都市でした。今ではそこはモンスターに奪われてしまったのですが、始まりの地を忘れないようにその名前になったそうです」
メリルは真顔で経緯を説明してくれた。
「うん、普通にいい話だよ」
涙を流して感動するほどではないが、胸を打つ内容ではあると感じた。
しばらく歩き続けるうちに、周辺の傾向について気づく点があった。
メソンから次の町につながる道は窪みや小さな穴があり、雑草が伸び放題で落ち葉や小枝も落ち放題だった。
ウィリデ周辺の街道は行商人の行き来があり、現地民も日常的に通ることで自然と整備されるような印象だった。
しかし、この道は通行人が少ないことで、荒れ具合が時間と共にひどくなっているのではないだろうか。
馬を使うわけではないので、そこまで大きな問題ではない。
歩きにくいとか転びそうとか、些細といえば些細なことだった。
「青い花が咲き誇る場所か、一度行ってみたいな」
「モンスターたちにとって中核地点なので、解放の戦いを続けていく中で訪れることになるかもしれません」
「そうか、そこも解放できるといいよね」
「ええ、全ての地域を解放できることを願っています」
俺とメリルは会話をしながら、荒れた街道を歩いていった。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる