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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

メリルの組織 ―始まりの青―

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 ゴブリン退治を終えた俺たちに町の代表が宿を用意してくれた。
 その言葉に甘えて一夜を明かした後、メソンの町を出発した。

 昨日までは晴れていたが、今日の空は曇っていた。
 雲の切れ間から太陽が見えているので、すぐに天気が崩れる心配はなさそうだ。

 二人で歩きながら、話題は自然と行き先に関する内容になる。

「次の町はどんなところ?」
「次はタラサという町です。海に面していて、港があって漁業が盛んですね」
「なるほど、漁師町って感じのところか」
「当然ですが、そこでもモンスターが町の人を支配していて、漁師の人たちも強制的に働かされているようです」

 彼女はアルヒに潜伏していたわけだが、わりと情報に精通している。
 それが少し不思議に思えた。

「メリルの情報はどこから仕入れたんだい?」
「解放を目指す仲間からです」
「ふーん、そうか。それなりの組織みたいだけど、名前とかはないのかな?」
「……名前ですか?」
「うん、そう」

 メリルは歩きながら難しい表情になった。
 俺としては簡単な質問のつもりだったが、どうしてしまったのだろう。
 
「例えば、モンスターからの支配に対するレジスタンスとかありそうだけど」
「はい、レジスタンスですか……」
「今のは例えだけど、組織なら名前とかないと呼びにくい気がする」
「わたしは考えたこともありませんでした」

 組織名=解放戦線などは適した言葉な気がしたが、適当な現地語が思い浮かばないので、提案は控えておくことにした。

 マンガやゲームではそういった団体や組織は中二病っぽい名前がついていたりするものだが、メリルたちのように切迫した状況では考えている余裕などないのかもしれない。

「……すみません。わたし、嘘をつきました」
「嘘? ……ええと、どれについて?」

 メリルが嘘をついたことに全く気づかなかった。

「組織の名前です」
「もしかして、名前があるの?」
「一応、カナタさんは部外者ではあるので教えてよいものか考えたのですが、ここまで手伝って頂いたのに隠すのは失礼かと……」

 彼女は何やら口ごもっている。
 何か言いづらいことでもあるのだろうか。

 一度、話題を変えることにした。
 旅の仲間のような彼女を悩ませるようなことは本意ではなかった。

「ところで、メリルは何歳?」
「わたしですか? 18歳です」
「えっ、そうなの」
「意外でしたか?」
「うん、もう少し年上かと」

 細身で大人びた顔立ちをしているせいか、二十歳ぐらいにはなると思っていた。
 それに加えて、時折見せる射抜くような眼差しは十代のものに見えない。

「カナタさんは何歳ですか?」
「俺は三十歳だよ」
「ずいぶん若く見えますね」
「そう、それはありがとう」

 ウィリデにいる時に鏡を見て気づいた。
 体内を流れるマナの量が増加したせいなのか、見た目年齢が若返っていた。

 身体的な変化は実感していないものの、異世界の驚異を感じる出来事だった。

「――あの、組織の名前なのですが……」
「あっ、無理して話さなくてもいいよ。機密事項とかもあるだろうし」
「『始まりの青』という名前です……」

 メリルはぼそぼそとした口調で教えてくれた。
 始まりの青という名に、何か秘密が隠されているのだろうか。

「……少しキザではないですか?」
「そうかな? そんなに違和感ないと思うけど」

 ようやく分かったことだが、彼女はカッコつけた名前だと感じているようだ。

「解放のための戦いが始まった場所は、青い花が咲き誇る美しい都市でした。今ではそこはモンスターに奪われてしまったのですが、始まりの地を忘れないようにその名前になったそうです」

 メリルは真顔で経緯を説明してくれた。

「うん、普通にいい話だよ」

 涙を流して感動するほどではないが、胸を打つ内容ではあると感じた。


 しばらく歩き続けるうちに、周辺の傾向について気づく点があった。

 メソンから次の町につながる道は窪みや小さな穴があり、雑草が伸び放題で落ち葉や小枝も落ち放題だった。

 ウィリデ周辺の街道は行商人の行き来があり、現地民も日常的に通ることで自然と整備されるような印象だった。

 しかし、この道は通行人が少ないことで、荒れ具合が時間と共にひどくなっているのではないだろうか。

 馬を使うわけではないので、そこまで大きな問題ではない。
 歩きにくいとか転びそうとか、些細といえば些細なことだった。

「青い花が咲き誇る場所か、一度行ってみたいな」
「モンスターたちにとって中核地点なので、解放の戦いを続けていく中で訪れることになるかもしれません」
「そうか、そこも解放できるといいよね」
「ええ、全ての地域を解放できることを願っています」

 俺とメリルは会話をしながら、荒れた街道を歩いていった。
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