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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
静寂と勇気
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命を落とす可能性があるのに、心が落ち着いて不思議な気持ちだった。
恐れや葛藤に揺れ動いた感情に静けさが訪れている。
これまで戦うことへの迷いを拭えずにいた。
カルマンとの決戦では、死の不安に苛まれることも多かった。
ウィリデで魔術師として受け入れられても、どこか他人事のようだった。
――ただ、今は違う。
自分が戦わなければ、メリルや始まりの青の者たちに危険が及んでしまう。
ここにエルネスやシモンはいない。
――己の命を賭して戦うほかないのだ。
「あらあら、固まっちゃって。そんなに戦うことが怖いのかしら」
オークが薄気味悪い声を上げた。
通路に反響して離れていても声が届く。
「……覚悟しろ。ここは通さない」
「おやまあ、威勢がいいのね。そういうの嫌いじゃないわ」
オークが杖を振るうと、今度は迸る紫電が向かってきた。
咄嗟に氷魔術で盾を発動して防ぐ。
「ぐっ、防ぎきれないか」
距離が離れているおかげで余裕はあったはずだが、完全に防ぎきれなかった。
氷の盾ごしにしびれるような痛みを感じた。
「ふひょひょ、もっと楽しませてちょうだい」
杖の水晶からマナに似た強い力を感じる。
連続して魔術を行使されては分が悪い。
「……勝つためには、やるしかないんだ」
腰に携えた剣を横目で確認してから、その場から踏み出した。
走りながらではマナのコントロールが難しいので歩いて距離を詰める。
もしかしたら、オークは自滅覚悟で強力な魔術を放つかもしれない。
しかし、生身の人間である俺がそうするのは自殺行為につながる。
威力を抑えた魔術を放ちつつ距離を詰めてからドワーフ特製の剣で敵を斬る。
俺が考えたシンプルかつ生き延びるための、最善の作戦だった。
ゆっくりと近づいていくと、オークは少し警戒するような素振りを見せたが、同じ場所に留まったまま攻撃を仕掛けようとしている。
ここまで杖の水晶からマナに似た力を感じた後、例外なく魔術が放たれていた。
今も同じような状態だった。
水晶に変化が起きているので、数秒のうちに何らかの魔術を行使するはずだ。
いつでも防御できるように構えながら、少しずつオークへと近づく。
目の前に集中していると、杖の水晶から無数の氷柱(つらら)が放たれた。
すぐさま、氷魔術で盾を作って防御した。
着弾した時の衝撃はあるものの、大きなダメージを受けずに防ぐことができた。
攻撃が止んだのを確認した後、防御を解除して接近を再開する。
雷魔術を連続して出されたら体力を削られそうだが、その気配はなかった。
オークは魔術の種類を変えながら、こちらを痛めつけるのを楽しんでいるように思えた。
まだまだ余裕がありそうなので、厄介な存在であることに間違いはない。
「あらあら、無謀なことを企んでいるのかしら。近くにきたところで、貴方の攻撃ではあたくしを倒すことはできないって分からない?」
オークは見下すような口調で言った。
水晶に反応があるので、また攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。
牽制して魔術を放つことも可能だが、威力の低い魔術では傷を負わせることができない上に近づくのに時間がかかってしまう。
それに駆け寄ることも可能だが、防御が間に合わない時点で危険すぎる。
想像以上に神経をすり減らす作戦だった。
再び放たれた魔術を氷魔術で防ぐ。
今度は無数の火の玉だった。
接触するたびに氷の盾が溶かされていくが、何とか防ぎきった。
攻撃を受けながら進み続けると、敵との間合いがだいぶ近づいていた。
最初は余裕のあったオークだったが、警戒する様子が明確になっている。
「何を企んでるのか知らないけれど、あたくしを倒そうなんて無謀よ」
オークはそう言ってから、雷魔術を放ってきた。
距離が近いので、素早く防御用の魔術を発動しなければ防ぎきれない。
今度もほぼ無傷で守りきった。
いよいよこちらが攻撃を仕掛ける番だ。
――全身を流れるマナに意識を向ける。
走って近づいた後、近距離で魔術を発動して隙を作り、携えた剣で敵を討つ。
この作戦は練習などできない一発勝負だった。
俺は深く息を吸って呼吸を整えると、意を決して駆け出した。
恐れや葛藤に揺れ動いた感情に静けさが訪れている。
これまで戦うことへの迷いを拭えずにいた。
カルマンとの決戦では、死の不安に苛まれることも多かった。
ウィリデで魔術師として受け入れられても、どこか他人事のようだった。
――ただ、今は違う。
自分が戦わなければ、メリルや始まりの青の者たちに危険が及んでしまう。
ここにエルネスやシモンはいない。
――己の命を賭して戦うほかないのだ。
「あらあら、固まっちゃって。そんなに戦うことが怖いのかしら」
オークが薄気味悪い声を上げた。
通路に反響して離れていても声が届く。
「……覚悟しろ。ここは通さない」
「おやまあ、威勢がいいのね。そういうの嫌いじゃないわ」
オークが杖を振るうと、今度は迸る紫電が向かってきた。
咄嗟に氷魔術で盾を発動して防ぐ。
「ぐっ、防ぎきれないか」
距離が離れているおかげで余裕はあったはずだが、完全に防ぎきれなかった。
氷の盾ごしにしびれるような痛みを感じた。
「ふひょひょ、もっと楽しませてちょうだい」
杖の水晶からマナに似た強い力を感じる。
連続して魔術を行使されては分が悪い。
「……勝つためには、やるしかないんだ」
腰に携えた剣を横目で確認してから、その場から踏み出した。
走りながらではマナのコントロールが難しいので歩いて距離を詰める。
もしかしたら、オークは自滅覚悟で強力な魔術を放つかもしれない。
しかし、生身の人間である俺がそうするのは自殺行為につながる。
威力を抑えた魔術を放ちつつ距離を詰めてからドワーフ特製の剣で敵を斬る。
俺が考えたシンプルかつ生き延びるための、最善の作戦だった。
ゆっくりと近づいていくと、オークは少し警戒するような素振りを見せたが、同じ場所に留まったまま攻撃を仕掛けようとしている。
ここまで杖の水晶からマナに似た力を感じた後、例外なく魔術が放たれていた。
今も同じような状態だった。
水晶に変化が起きているので、数秒のうちに何らかの魔術を行使するはずだ。
いつでも防御できるように構えながら、少しずつオークへと近づく。
目の前に集中していると、杖の水晶から無数の氷柱(つらら)が放たれた。
すぐさま、氷魔術で盾を作って防御した。
着弾した時の衝撃はあるものの、大きなダメージを受けずに防ぐことができた。
攻撃が止んだのを確認した後、防御を解除して接近を再開する。
雷魔術を連続して出されたら体力を削られそうだが、その気配はなかった。
オークは魔術の種類を変えながら、こちらを痛めつけるのを楽しんでいるように思えた。
まだまだ余裕がありそうなので、厄介な存在であることに間違いはない。
「あらあら、無謀なことを企んでいるのかしら。近くにきたところで、貴方の攻撃ではあたくしを倒すことはできないって分からない?」
オークは見下すような口調で言った。
水晶に反応があるので、また攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。
牽制して魔術を放つことも可能だが、威力の低い魔術では傷を負わせることができない上に近づくのに時間がかかってしまう。
それに駆け寄ることも可能だが、防御が間に合わない時点で危険すぎる。
想像以上に神経をすり減らす作戦だった。
再び放たれた魔術を氷魔術で防ぐ。
今度は無数の火の玉だった。
接触するたびに氷の盾が溶かされていくが、何とか防ぎきった。
攻撃を受けながら進み続けると、敵との間合いがだいぶ近づいていた。
最初は余裕のあったオークだったが、警戒する様子が明確になっている。
「何を企んでるのか知らないけれど、あたくしを倒そうなんて無謀よ」
オークはそう言ってから、雷魔術を放ってきた。
距離が近いので、素早く防御用の魔術を発動しなければ防ぎきれない。
今度もほぼ無傷で守りきった。
いよいよこちらが攻撃を仕掛ける番だ。
――全身を流れるマナに意識を向ける。
走って近づいた後、近距離で魔術を発動して隙を作り、携えた剣で敵を討つ。
この作戦は練習などできない一発勝負だった。
俺は深く息を吸って呼吸を整えると、意を決して駆け出した。
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