追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟

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ドラゴンハンターの街タラスケスでお買い物がてら街を救う

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 ギルド本部、ギルド長の執務室にて、



「登山口から出た途端、捕獲したドラゴンが目覚めただと?」



「はい。それまではいくら攻撃しても目覚めなかったのに」

「強力な麻酔弾を打ってすぐに眠らせましたが、あんなことは初めてです」



 ハンターたちの報告をあらかた聞き終えると、彼らを追い払うようにギルド長は手を振った。



「ご苦労様。お前たちは下がっていい。ウルスと二人きりで話がしたい」

「はっ」



 扉が閉まると同時に、「どう思う?」とギルド長は訊ねた。



「ウルス、お前の意見が聞きたい」

「聖女が祈りを捧げた場所は聖域と化す、と言われていますから」

「ヴァレ山一帯にまで及んでいると?」

「おそらく。少なくとも聖域にいる限りは、ドラゴンが目覚めることはありません」

「……凄まじい力だ。まさに聖女タラの再来だな」

「私も、この目で見るまでは信じられませんでした」

「これを機に、ヴァレ山のドラゴンを一掃できる」

「召集をかけますか?」

「ああ、登山に慣れたベテラン勢を揃えろ。指揮はお前に任せる」

「一人だけ新人を連れて行きたいのですが」

「お前が目にかけている少年か? かまわん、連れて行け」

「ありがとうございます」

「さてと……そろそろわしも出かけるとしようか」



 おもむろに立ち上がったギルド長に、ウルスは眉をひそめる。



「どちらへ?」

「なぁに、ちょっとした散歩だよ」









 ***











 タラスケスに滞在して早くも一週間が経った。



 そろそろ出来上がる頃かと思い、アミュレットを依頼した工房に立ち寄ると、



「魔石の加工が結構大変だったみたいで、あと数日はかかるって」

『それだけ丁寧に仕事してくれてるってことよ』

「そうだね、急ぐ旅でもないし」



 王都を出てから移動続きだったので、これほど長く留まったのは初めてのことだ。



「シアは最近、ギルドにばっか行ってるね」

『なぁに? もしかして寂しいの?』

「じゃなくて、忙しそうだなって思って」

『そりゃハンターになったからには依頼をこなさないと。税金を免除されてるわけだし?』

「シアって私の護衛じゃなかったっけ?」

『というよりはお世話係ね』



 あ、そうですか、とアネーシャはむくれる。

 何だかんだ言いつつも、タラスケスでの暮らしをアネーシャは楽しんでいた。 



 最初の三日間は市場に通いつめ、他の町では手に入らない、珍しい食材や便利道具を買い漁った。一日中外出していることもあれば、一日中部屋に閉じこもって荷物を整理したり、ごろごろしている日もあった。買い物で荷物が増えると、その度に不要な物を寄付したり売り払ったりした。



 それから再び工房へ行き、ハンターになったシアのために贈り物をいくつか買った。持ち込める素材がないのでもちろん既製品だ。その分割高だったけれど、悪い買い物ではなかった。早速夕食の席でプレゼントすると、彼は呆れたように言った。



「どんだけナイフを買ったんだよ」

「いらないなら返して」

「いや……もらえるもんはもらっとく」



『嬉しいくせに、素直じゃないんだから』



「討伐の仕事、大変?」

「仕事よりウルスさんの目がこえー」

「いつも一緒にいるの?」

「最初のほうだけ。新人が敵前逃亡しないか、監視も兼ねてるんだろ」

「じゃあ順調なんだね」



 たったの三口でドラゴンのステーキを食べ終えると、



「明日も仕事だ。ヴァレ山へ行くから。しばらくは戻れない」



 水を飲みながらシアは言った。



「いつまでかかりそう?」

「わかんねぇ」



『かまわないわよ、いざとなったら置いてくから』



「……コヤ様」

「ウルスさんの頼みで、断れないんだ。悪い」



『一度でも任務をバックレたらハンター資格を取り消されちゃうしね』



「そうなんだ」

「次の行き先は決まってるのか?」

「どうなの、コヤ様?」



『メテオロス』



「メテオロスって、コヤ教の修道院がたくさんあるところだよね」

「……ウルスさんの出身地でもある」

「そうなの? だったらあの人……」

「ああ、保守派の孤児院で育ったらしい」



 月の女神を唯一神とするコヤ教は、大きく分けて二つの宗派が存在する。



 一つは聖女を頂点とし、人との交わりや儀式を重んじる革新派。

 もう一つは、月の女神を頂点とし、俗世間との関わりを捨てて祈りと瞑想に生きる保守派。



 メテオロスは保守派の修道士、修道女たちによって建設された小さな村である。 



「それで、いつ出発するつもりだ?」

「もちろん、シアが戻ってくるまで待ってるよ」



 シアはほっとしたようにうなずく。



「俺がいない間に目立つことはするなよ。知らない奴に声をかけられても付いていくな」

「シアまで私を子ども扱いして……」



『だから言ったでしょ。お世話係だって』

「はいはい、わかりました」



「実際、変な奴に声かけられたりしてないだろうな?」



 そういえば、とアネーシャは手を叩く。



「この前、買い物中に優しそうなおじいさんに声かけられた。気が向いたらぜひギルドにお越し下さいって」

「おじいさん?」

『アネーシャったら、また名前を忘れたの? ギルド長のカークさんよ』

「そうそう、ギルド長のカークさん」



 ぶっと水を吹き出すシアに「ちょっと、こっちまで飛ばさないでよ」と慌てるアネーシャ。



「おいしいお菓子とお茶を用意して待ってるからって」

「……行くなよ。絶対ろくな目に遭わないから」



 実感のこもった、苦々しい声だった。

 よほど面談が大変だったに違いない。



『大丈夫、アネーシャには敬意を以て接してくれるから。誰かさんと違って』

「本当?」

『ヴァレ山の件で、とても感謝してるみたいよ』

「だったら行ったほうがいい?」



『好きにしなさい』

「やめとけって」



 双方の意見を聞いて、しばし考え込むアネーシャだった。





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