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「ナティア…あなたは本当に私の逆鱗に触れるのが好きみたいね。そんなに死にたいの?」
「死ぬ気は毛頭ないな。ただ、嘘をついてもお前の事だ。すぐに見破るだろう? なら、正直に言った方がいいと思っただけだ。別に逆鱗に触れたくて触れたわけじゃないぞ」
 シレっとそう言うナティアに、ロゼはつかつかとナティアに近づくと思い切り拳で頬を殴りつけた。
「…まずはその減らず口を閉ざすべきだったかしら? 舌を切って魚の餌にしてやろうか」
「グッ…カッ、ハッ……。怖い女だ」
 殴られた衝撃が傷に響いたのか思わず体を縮こまらせながら、それでも減らず口を叩くナティアに、ロゼはさらにもう一発ナティアの脇腹に強烈な蹴りを入れた。
「がっ! くはっ…はっ、あぁ…はっ、はっ…っ…くうぅ…」
「や、やめてください! ロゼさん、ごめんなさい。私、もうここに入りませんから…! ロゼさんを不安にさせる行動はしませんから! だから、もう…傷つけないで」
 追撃をしようとしたロゼをアリアナはロゼに抱き着いて止めさせ、ロゼの足元に縋り付いて頭を下げた。
「……アリアナ、あなたにもお仕置きを受けてもらうわ。一瞬でもこの男を頼ろうとした罪は重いわ。ねえ、なんでこの男を頼ろうと思ったの? 私はどんなものでも手にする海賊王よ? こんな海軍という組織に縛られたちっぽけな犬よりも私の方が圧倒的に強いわ。…でも、今回はお仕置きを受けたら許してあげる。だって、まだ一回目ですもの。一時の気の迷いとして納得してあげるわ」
 ロゼはグイッと腕を引いてアリアナを立ち上がらせると、怯えるアリアナに対して笑顔でそう言って頬を撫でた。
「さ、自分の部屋に戻りなさい。お仕置きが終わるまでは絶対に部屋から出ちゃ駄目よ?」
「私…ロゼさんに戦ってほしくなくて…」
「言い訳なんて今聞きたくないわ。早く戻りなさい。あぁ、でもここの鍵は預かるから渡して」
 震えながら言うアリアナに対して、ロゼは容赦なく突き放して鍵を渡すように手を出すと、アリアナはそれ以上何も言えなくなり、黙って鍵を渡して部屋を出て行った。
「……まだ、アイツを信じるのか?」
 アリアナが部屋から出ていくと、痛みに表情を歪めるナティアがかすれた声でロゼに問いかける。するとロゼはアリアナが出て行ったドアからナティアの方へ視線を戻し、さげすむ表情でナティアを見た。
「信じる? 愚問ね。アリアナは私の宝よ。上手にそそのかしてくれたようだけど、今後一切そんなことが無いようにこれから躾けるわ。自分の命が惜しければ、これからは言動に気を付けなさい」
「…はっ、アリアナが裏切れば絶望すると思ったのに…計算をミスったか…」
「クズみたいな思考をしてるのね。だから海軍は嫌いなのよ」
「お前も、変わらんだろ」
 互いに罵り合い、ロゼはもう一発、先ほど蹴った所と同じ所に蹴りを入れてから部屋を出て行った。

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