レイリア~桃色のタンポポを探して~

おおともらくと

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第三 海辺の町『トラート』

列車を降りてはみたものの

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 『トラート』駅は小さな駅で、造りもいたってシンプル。真ん中に二本の線路が通っていて、その両脇を、屋根付きのプラットホームが向かい合うように挟み込んでいた。
 そんなこぢんまりとした『トラート』駅で列車を降りたのは、僕だけではなかった。他にも数人の男女が列車を降り、それぞれホームの上を改札口に向かって歩いている。心なしか、大きな旅行バックを手にしている人が多い。老紳士が言ったとおり、『トラート』は人気の観光地のようだ。
 改札口は、それぞれのホームの先端にある。僕がいる側のホームの改札口には、駅員の制服を着た小太りのおじさんが立っていて、列車を降りた乗客から切符を受け取っていた。僕は周囲を見回したが、どうやら、駅から出るにはこの改札を抜けるしかなさそうだ。
 次々と小太りの駅員に切符を渡し、改札口を通り過ぎて行く乗客達。僕はその様子を見ながら、大きなため息を付いた。
 老夫婦も言っていたが、僕の持っている乗車券は、レイリア西部鉄道のものではない。果たして、僕の持っている乗車券で、あの駅員は改札を通してくれるのだろうか。もしかしたら、この乗車券を見せた途端に駅員の態度が急変し、捕まえられた挙げ句、警察に突き出されるかもしれない。
 だんだんと駅員に近付くに連れて、僕の胃はきりきりと痛み出した。緊張で体が硬直し、歩き方がぎこちなくなる。自分の意志に反して、右手と右足、左手と左足が、同時に前に出てしまう。
 そうこうしているうちに、遂に、僕は改札口の一歩手前まで来てしまった。
 平常心、平常心。
 僕は覚悟を決め、何食わぬ顔で小太りの駅員に乗車券を渡した。終始、絶対に駅員と目を合わせない。
 小太りの駅員は僕から受け取った乗車券に視線を落とすと、そのまま固まってしまった。食い入るように乗車券を見詰めたまま、まったく動こうとしない。
 僕は素知らぬ素振りで駅員の横を通り過ぎ、改札を抜けて駅の外に出ようとした…………が、その時、
「ちょっと、君!」
 背中越しに、駅員の甲高い声。
 同時に、体中に危険信号が点滅。
 やばい! 捕まる! どうしよう! 逃げよう! 逃げるしかない! こんな所で捕まるわけにはいかないのだ!
 僕は駅員の声を無視して、走り出した。
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